2017年02月25日

2017年3月号  ’大統領令’を通してみ見るトランプ政治のリアルと、日米関係 - 林川眞善

はじめに:American democracy

トランプ・ショックは留まる処を知りません。トランプ氏は大統領に就任するや矢継ぎ早に大統領令(注)を発動、以ってこれまでの米国、そして国際関係における秩序の一変を期さんとする彼の行動に世界は、連日のメデイア報道と共に一憂、一憂です。
実は、これまでも各大統領は、就任後にいくつもの大統領令を出しています。オバマ前大統領の場合、就任直後の3週間で29本の発動がありました。が、ほとんどメデイアでも取り上げられる事はなかったのです。しかしトランプ氏の場合、24本と5本も少ないにも拘わらず内外の関心は極めて高いものと云え、というのもその内容がアメリカ社会の生業を大きく変えていく可能性と同時に、それが外交関係に直結する、そのインパクトの大きさにあるというものです。

(注) 大統領令(Executive Order):米大統領が連邦政府や軍に出す行政命令。議会の承認を得
なくても即座に法的拘束力を持つ。通商政策、移民政策、規制の改廃、等幅広い分野に権限は及ぶ。

当のトランプ氏はAmerica first を旗印に選挙中行った公約を、その勝者として実行するだけと大統領令を連発していますが、そこに見る彼の言動はまさに傍若無人、自身に不都合な情報はfakeだとか、alternative factとして切り捨て、自身の思惑だけをむき出しにした、時には恫喝的な様相で、政治を押し進めんとしています。
例えば、雇用の創造をと叫んで大統領に就いた彼ですが、その‘創造’とは、例えばメキシコで事業拡大を目指す企業に対して口先介入という政治圧力をもって国内に呼び戻す、国内回帰を進め、これに応えない場合は高関税を課すと云った、まさに恫喝政策ですが、それで解決する話ではない筈です。因みに、オハイオ州立大学のエドワード・ヒル教授(注)は、雑誌Wedge2月号で、保護主義によって米国の製造業が大幅に雇用を回復させるのはほとんど不可能だと喝破しています。が、そもそも問題は米製造業への回帰という戦略が「昔の米国に戻る」以上の意味のない点にある事です。

(注)ヒル教授:米国は1979年から2015年までの間に製造業で約7000万人の雇用を失ったが、そのうち8割強はオートメーション化によるもので、国外に流れたのは十数パーセントにすぎないというのです。そして、トランプ氏は高校さえ卒業すれば誰でも仕事を手に得られるという古い常識に従った語り掛けをした。60年代の工場労働者の復活を夢見ているようだが、今の米国で、スキルのない労働者はだぶついている一方、スキルノのある労働力の不足に悩まされている。従ってトランプ氏の約束の実現は「ノー」だというのです。

就任演説では選挙の終わった今、合衆国はノー・サイド、国民は一丸となってと、叫んでいました。が、そうした彼の姿勢からは‘合衆国’の分断を深めることはあっても、解消するなど到底思えぬ状況にある処です。いや、今や彼はそこを狙い、その結果として、自身への権力の集中、絶対的掌握を狙っているのではと映る処です。これが世界にもたらす影響の重大さは云うべくもありません。

そうした様相を2月4日付The Economistはその巻頭言で`An insurgent in the White House’ (ホワイトハウスの中の暴徒)と題し、Washington is the grasp of revolution 、つまり、ワシントンは今、革命に見舞われているとするものでした。そして相次ぐ大統領令というMolotov cocktail (火炎瓶)を投げつけるなどの狼藉を働き、その勢いはおさまる様子はないというのです。ではどうすればいいのか。同誌は、過激な政策を進言する側近、上級顧問のステイーブン・バノン氏、大統領補佐官のステイーブ・ミラー氏をイメージしてのことでしょうが、側近を追放して方向転換をすべきであり、世界はそれを期待すべきとも云うのです。

一体、米国の民主主義政治はどうなってしまっているのか、と思わざるを得ません。尤も彼は民主主義のルールに則った選挙で勝利したという事ですが、かのヒットラーも、当時、世界で最も民主的とされたワイマール憲法の下での選挙で勝利し、その後の顛末は周知の処です。

・American Democracy
そこで思い起こさせるのが今から182年前、フランスの若き政治学者トクビル(1805~ 1859 )が、当時のアメリカ旅行での体験を下に、アメリカの政治について著した「アメリカの民主主義」(American Democracy,1835 by Alexis de Tocqueville )です。

彼はベルサイユで陪審判事を務めた後、1931~32年、仏政府の命を受け米国の行刑制度研究を主たる目的として米国を旅行していますが、当時のアメリカは世界の最先端を行く近代社会国家で、この機会に共和制の議会民主主義がなぜアメリカではうまくいっているかについて取り纏めたもので、今なお民主政治の入門書ともされるものです。そのポイントは、democracyが米国を支配する原理と指摘し、その中軸に「地位の平等」があって、多数者の幸福を目指すことにあるとするものです。が、同時に彼は、democracyには「多数者の専制」を生む可能性を指摘していたのですが、トランプ大統領を生んだポピュリズムこそはそれに通じる処です。そうした事態の解決のためにはいわゆる「知識人」の存在が重要と指摘しているのですが、さて、その知識人の声がトランプ大統領の登場以降、聞こえてこなくなっているのが気がかり云うものです。

そこで、トランプ後を見据える意味合いも含め、既に発動の大統領令うち世界的注目を呼んでいる3件をピックアップし、それらに透ける「トランプ政治のリアル」を検証することとし、併せて2月10日の日米首脳会談と日米関係の今後について、以下目次に沿い考察する事としたいと思います。 (2017・2・24)


                   目  次

1. 検証 トランプ政治のリアル
  
(1)大統領令を通して見るトランプ政治 ----- P.4

 [大統領令が語る経済政策のリアル]
 ・化石燃料へ逆流シフトを進めるエネルギー政策
 ・金融規制の緩和、税制の改革

 [移民管理政策と米経済の可能性]
 ・イスラム圏7か国市民の米入国一時禁止令

(2)トランプ通商政策の誤謬  ------- P.7

 [ 二国間貿易インバランス批判と、その論理]
 ・対米貿易インバランス批判の実状
 ・貿易インバランスは経済の構造問題

 [トランプ通商政策を総括する]
 ・R. Baldwin氏の指摘 

2.トランプ政権と日米関係
            
(1)日米首脳会談 ------P.10
 ・「新経済対話」枠組み

(2)日米関係の深化、そして進化を ------ P.11

おわりに:最後のアバンギャルド       ------P.11
         
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1.検証:トランプ政治のリアル

(1)大統領令を通して見るトランプ政治

大統領に就任したトランプ氏は前述のとおり大統領令を連発、選挙中の公約の実施を目指して
います。これら大統領令は「米国第一主義」の下に進められる点で、その多くは今日的経済の生
業を無視した独善的とも言える様相を呈しており、瞬時の効果はともかく、持続可能な経済運営
が可能なのか、その疑問は禁じ得ません。 
そこで、既に発動されている大統領令の内、経済政策(産業・金融・税制)、そして今、最も非
難の的とされている人種差別的な移民管理政策、つまり米国への入国規制措置にフォーカスし、
それらから透けるトランプ政治の姿を、実践的な視点から検証していく事とします。

[大統領令に映る経済政策のリアル]

・化石燃料へ逆流シフトを進めるエネルギー政策
中東に依存しないエネルギー供給体制の構築を旗印として、シェールガス開発を軸に米国内の原油増産を狙うこととし、1月24日、トランプ大統領は、環境保全の趣旨から、これまで抑えられていた「ダコタのキーストンパイプライン」、「キーストーンXLパイプライン」(カナダから米メキシコ湾)の建設を許可する大統領令に署名しました。米石油大手はトランプ大統領の政策を歓迎し、原油価格が持ち直すなか、今後投資の拡大が見込まれる処と云われています。

これまで世界的合意として、化石燃料が排出するCO2等、温暖化を制御し、クリーンな燃料に向かうこと、その為に自然エネルギーへのシフト、低炭素エネルギーの開発を各国とも進めてきています。2年前のCOP21で採択され、昨年、米国が中国と一緒に主導し、批准発効したパリ協定(注)はその象徴的な国際的合意行動です。

     (注)2015年12 月12日、パリで開催のCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国
会議)で合意(世界195か国)された2020年以降、全ての国が参加する枠組み.先進国
には数値目標の設定を義務付けるもの。(途上国はその義務なし)2016年11月 4日発効。

しかし、今回の大統領令は、こうした合意には構う事なく、まさに化石燃料への回帰を決定するもので、つまりは「環境よりは成長を」鮮明とするものです。因みに、彼は当該プロジェクトの推進で雇用の増大が期待でき、2万8千の雇用創出につながると説明しています。尤も、この数字の根拠など示されることはありません。元々トランプ氏はパリ協定には否定的で選挙中もそうした発言をしていました。つまりは産業政策として米国は化石燃料路線への復帰を図るという事で、America firstの下では環境問題は二の次という事なのです。新たに環境保護局長官に就任するスコット・プルイット氏はエネルギー産業の集積地、オクラホマ州の出身で温暖化懐疑派で、温暖化に関する前政権の規制を撤廃すると主張する仁です。更にエネルギー長官に指名されているリック・ペリー氏も温暖化懐疑派とされており、米国のパリ協定からの離脱が現実味を帯びてきたという事ですが、トランプ政権の一連の対応には聊かの懸念を禁じえない処です。

尚、ここで留意すべきは、現時点では前述の通り、企業は歓迎し積極投資に向かうものとされていますが、米大統領の任期は長くて8年、これに対して温暖化対策はけた違いに長期の取り組みになるものです。環境対策をおろそかにすれば、いずれしっぺ返しを受けかねないという点です。つまりトランプ流にのることは中長期的にはリスクの高いもの、という事で、さて当該産業の責任者はどう考え対応することになるのか、改めてその見識が問われるというものです。何れにせよ銘記されるべきは、持続可能な成長は環境対応があってのこと、そして各国との連携があって成り立つという事ですが、その限りにおいてAmerica firstでは通じなくなるという事なのです。

・金融規制の緩和・税制の改革
2月3日トランプ大統領は金融規制を抜本的に見直す大統領令に署名しました。オバマ政権が金融危機の再発を防ぐ目的で導入した「米金融規制改革法」(ドット・フランク法、2010)を主たる対象とするものです。これで厳格化の方向だった米国の金融規制が、成長促進に比重を置いたものへと変質していく事が想定される処です。リーマン後の金融行政については、過剰規制はお金の流れを鈍らせ成長を阻害しかねないとの主張が強く伝えられていましたし、その点ではドット・フランク法の見直しそのものに大きな違和感はない処です。ただ、見直しの如何は日本、欧州とも直接関係する処であり、その点では広い視野に立った見直しを願う処です。

当該大統領令では「米国民の資産形成を可能にする」、「金融機関の救済に公的資金を投じない」、「米企業の競争力を保つ」など、基本原則が記されており、それに照らして現行ルールが原則に沿ったものか財務長官が点検し、大統領に報告する(日経、2017/2/4)こととなっています。基本的には常識的な内容と思料されるのですが、「国際的な交渉や会合で米国の利益を追求す」と云った部分がある事は気になる処です。つまり、貿易交渉などと同様、新たな金融規制作りにおいても国際協調に消極的な大統領の姿勢を映す点で気がかりとする処です。つまり、America firstに基づく規制作りが孕む危険性です。そして伝えられる処、これまで非難してきたウオール街寄りとなることに、彼の政治姿勢の曖昧さを禁じえないというものです。

・国境調整税
もう一つ、ムニューチン氏の財務長官就任(2月13日)で一気に進むのではと予想されるのがトランプ政策目玉の税制改革ですが、焦点となるのが輸出課税を免除し、輸入は課税強化するという「法人税の国境調整」です。尚、これは昨年6月から下院共和党が検討してきたもので、トランプ氏が就任式で触れた「国境税」とは似て非なるものです。 
伝えられる処、輸出への課税がなくなれば米企業の国際競争力は高まり、工場を海外に移転する動機も薄れ、その点では国境調整は「米国に企業と雇用を取り戻す」とするトランプ主張に沿う処と云うものでしょう。が、これは対外的には影響は甚大です。中国や日本からの輸入品は大幅な値上がりを余儀なくされ、輸入品を売る米小売り業者の利益が圧縮されたり、価格転嫁で消費者の負担が急増する恐れがある事です。因みに、日本の場合、輸出の減少でGDPを0.6%押し下げるとの予想(SNBC日光証券)もある処です。
問題は税制を舞台にした貿易戦争に直結しかねない点です。加えて、WTOルールでは法人税のような直接税での国境調整は輸出補助金として禁じており、このルールに抵触する可能性ですが、仮に米国第一としてトランプ氏がこれを一蹴するようなことにでもなれば、まさにフェアートレードは消えてしまうことにもなりかねません。トランプ政権は未だ国境調整措置について明確な見解を示していませんが、仮に国内経済の活性化を目指すなら、他にある特異な税制の見直しを急ぐべきで、内外経済を揺るがす国境調整に拘るときではないのではと思料するのです。

[移民管理政策と米経済の可能性]

・イスラム圏7か国市民のアメリカ入国一時禁止令
世界が今最も注目しているのが1月27日、署名された「イスラム圏7か国」(イラク、イラン、リビア、ソマリア、イエメン、スーダン、シリア)市民の米入国の一時禁止令です。2月3日、ワシントン州連邦地裁は、この禁止令は「憲法違反」として差し止めの仮処分を決定。この決定に対し政権は不服として高裁に上告しましたが2月9日、連邦高裁がその上告を却下。トランプ氏は最高裁に持ち込むと息巻いていますが、法廷闘争となれば時間はかかりそうです。
    
トランプ大統領は、要は米国家のセキュリテイの為、「テロ懸念国」からの入国を一時禁止するものとしています。さて、問題はその対象国指定の論拠ですが、仮にNYの9・11事件の犯人の出身国はと云えばサウジでありエジプトですが、この対象国にはなく、7か国規定の根拠が不明ですが、何よりも国家権力が国籍を以って当該市民の全てを差別し、入国を禁ずることが許されるかという点です。まさに基本的な人権問題に抵触すると云うもので、この措置を巡り米国内はもとより世界各国でも重大な人権問題としてトランプ政権への批判が渦巻いています。

・米経済の可能性
周知のとおり、米国の国家としての生業は自由や平等の旗の下に様々な出自を持つ人々が結束する移民国家とするものです。つまり、自らの祖先が移民である事、多種多様な人々が人口増を支え成長エネルギーの供給源になってきたこと、そして豊富な物質やサービスやマネーが流入して繁栄したこと、を忘れて排他的になってきたと云うものですが、この保護主義への急傾斜は、米国経済の強さを支えてきた自己増殖システムを破壊させるリスクを高めることはあっても減じることはありません。
いまグーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、フェイースブック等、大統領令に反旗を翻す企業が相次いでいることが報じられていますが、これら企業は世界中から受け入れる多様な才能、これを土台として変革と飛躍を遂げ、米国経済の成長を支えてきただけに、極自然な動きと云うものです。そして、懸念されることはこの移民排斥によって「H1B」ビザを取って米国のハイテク企業や研究所に吸収されていたハイテク人材が中国に向かう事になるのではという事ですが、トランプ政権はどう考えているのでしょうか。
現時点では上述米入国禁止令の差し止めとなったため、通常の入国措置が取られていますが、最高裁での裁定如何では、再び入国制限が行われるとなると米国への世界の信頼は崩れ、トランプ大統領が目指す「偉大な米国」の復活どころではなくなっていくこと云うべくもありません。
因みに、FRBのイエレン議長は2月14日の上院銀行委員会で「移民の流入が減少すれば、米経済の成長も鈍化する」と指摘するのでした。

今回のワシントン州地裁による差し止め決定、その決定に対する大統領の抗告を棄却した控訴裁の決定は、米国の民主主義の健在を示すものと世論は評価する処ですが、トランプ氏が現職大統領として、当該訴訟判決を国家の治安を無視する行為として、行政と立法のチェック機能を果たす司法に対し批判・攻撃する姿は、三権分立の観点からその異例さに、もっと注目すべきと云うものです。それにしても、大統領令に司法が差し止め命令を出した事は、トランプ政権による「大統領令頼み」の政策遂行の危うさを浮き彫りにする処です。
因みに2月17日のギャラップ調査ではトランプ大統領支持率は就任直後の45%から40%と歴史的低支持率となっています。その要因は移民の入国規制令にあるとされているのです。

(2)トランプ通商政策の誤謬

[二国間貿易インバランス批判とその論理]

・対米貿易インバランス批判の実状
さて周知のとおりトランプ氏の対外姿勢は「米国第一」、そして外交交渉は二国間対応を生業とするのですが、その点でトランプ氏が執着するのが対米貿易インバランスの是正です。具体的には大幅の対米黒字を抱える中国そして日本、更にはドイツに対して、通貨操作による結果と再三主張してきています。彼のこの戦略圧力の前提には「一国の得は必ず相手国の損」と云う、二国間の貿易黒字を尺度にしたゼロサムの世界観がある由ですが問題は、この勘違いの下に、トランプ氏は対米貿易黒字国に対し根拠なき攻撃を続けているという事です。

勿論日本の場合は、国内経済浮揚のための金融政策として現状維持を続けているもので、通貨操作をしているものでもありませんし、現実に対米黒字は縮小にあります。(下記注)一方、中国については1月の始め、トランプ政権は中国の為替操作国指定を見合わせるともしてもいるのです。(前月号、弊論考)更に、国家通商会議のナヴァロ氏のドイツ批判も然りで、ドイツはユーロ安を誘導して貿易黒字を膨らませ、世界から需要を奪い、ユーロ圏他国の成長を阻害したと非難するものですが、このドイツ批判こそは明らかに間違っています。というのもドイツはユーロを管轄する立場にはなく、ユーロ圏各国政府も2000年以降はユーロへの介入は行っていません。強いて言えば、ドイツは長年、国内需要や賃金を抑制して国際競争力を強化し、ユーロ圏の中で貿易黒字を積み上げてきた経緯はありますが、これをあえて為替政策に結び付けるには無理があると云うものです。いずれにしても現実を無視した非論理的な批判という処です。

(注)2月7日、米商務省発表の2016年の米貿易統計(通関ベース)では、モノの貿易赤字は全体で7343億ドル、前年比1.5%減でしたが、米国の貿易赤字を最も計上しているのが中国で、3470億ドル、赤字全体の47%を占め、日本は2位で、689億ドル、3位はドイツ、4位がメキシコ。

・貿易インバランスは経済の構造問題
そもそも二国間の貿易赤字問題は基本的には当該国の経済構造に係る問題です。というのも国の経済活動(規模)を示すGDPは消費と投資、そして貿易バランスの和で表記され、以下(注)の恒等式から、対外バランスは国内の貯蓄と投資の関係で決まるという経済の構造上の問題であり、言い古されたI・S問題として理解されるべき問題です。つまり、制度的手法で貿易収支をコントロールするにしてもまず、この構造の実状理解が必須というものです。
米国の場合、米国内の貯蓄が投資に比べて少ないことが対外貿易赤字を結果しているということで、このインバランスをどのように解消していくべきかが一義的な問題となるのです。

(注)「貿易バランスは、国内の貯蓄(S)と投資(I)のバランスとして定義される」
国の経済は「生産=支出」の恒等式として表記され、生産は「国内生産(Y)と輸入(Im)」、 
支出は「消費(C)と投資(I)そして 輸出(Ex)」 Y+Im.= C+I+Ex.
S(貯蓄)=Y(所得)-C(消費), S-I=Ex-Im

ここで問題はトランプ大統領の思考様式です。彼はロス次期商務長官の考え方に負うものとされています。つまり一国のGDPは国内での経済活動プラス純輸出(貿易黒字)であり、貿易赤字は逆に純輸入なので、これを式に当てはめるとGDPを減らす要因になる、とするのですが、そこでは輸出入の増減要因に係る分析の言及がないままに、貿易インバランスの結果だけを取り上げ云々する論理が問題と云うものです。いずれにせよ彼はそうしたロス氏の論理に即す形で具体的には、輸入を制限し、国内産業振興や輸出促進で貿易収支の改善を図るというのですが、まさに18世紀の重商主義を彷彿とさせる処です。そしてその上で、事実誤認をベースに誤った為替操作の批判を繰り返してきているというのが実状というものです。

輸入を抑えることで貿易赤字が減り、黒字に転じれば目先、米国のGDPは増えるかもしれません。が、米国への輸入を制限していくとすると、米国が成長しても世界経済はこれまでのように成長しなくなるという事です。勿論、米国からの輸出も伸び悩むことになるのです。その点1930年に導入された保護関税法とされる米スムート・ホーリ法の経験が語る処です。
今、重商主義を支える感情が愛国心であり、ナショナリズムとされるのですが、こうした点に照らしてみるとき、なにか世界の分断統治を狙っているかのように見えてなりません。

そもそも一国の貿易収支の赤字を是正すべきとする経済理論は存在しません。又、貿易収支の均衡を政策目標に掲げている先進国もありません。トランプ氏は貿易赤字のことをインバランス(不均衡)ともデフィッシット(赤字)とも言わずロス(損失)と表現するのですが、あたかも企業を経営するような目で貿易を見るが如きで、貿易を商売の目で見るのは非常に危険と云うものです。超大国の指導者が誤った経済認識にある事は世界にとって大きな懸念要因と云うものです。

因みにFinancial TimesのColumnist、Martin Wolf氏は同紙1月25日付で、こうしたトランプ戦略について、国内の競争力のない一部の企業を保護するが、(消費者がその競争力のない商品を高く買わされることで)他の企業製品が売れなくなることを意味する。Trump proposals seem to aim at resurrection of the economically dead, つまりトランプ提案は、本来なら市場から退出すべきゾンビ企業の再生を目指しているように見え、到底まともな戦略とは思えない、と激しく批判するのです。

[トランプ通商政策を総括する]

・R. Baldwin氏の指摘
トランプ大統領は、グローバル化を批判し、閣僚に保護貿易主義を起用し、保護政策に転じ、労働者を保護すると云うが、21世紀の現在の問題を20世紀の方法で解決しようとしていることが問題と、ジュネーブ国際高等問題研究所教授のRichard Baldwin 氏は断じるのです。(日経2/20)例えば、関税を引き上げ、海外からの製品の輸入を抑え、米国内のジョッブを維持することは、それは結果として米製造業にとってコスト高を齎すことになり、勿論、企業が生産の一部を米国に戻すきっかけとなるかもしれないが、企業は外国企業と米国以外で競争できるように輸出を狙った海外生産の意欲を高めることになると云うのです。そしてトランプ氏は、21世紀のグローバル化は知識主導であって、貿易主導ではないという単純な点を見逃していると指摘するのですが、まさに正鵠を得る処です。

つまり、技術、マーケテイング、経営管理のノウハウの海外移転等、「知識のオフショア化」が米労働者の状況を根本から変えた事にあるとし、その点ではトランプ氏は個々の雇用ではなく、個々の労働者を守るべきと指摘するのです。そして具体的には労働者の再訓練、生涯教育、所得支援プログラムなど、労働者のための政策を取ることが米国を「再び偉大にする」機会を拡大することになる、というのです。けだし至言です。


2.トランプ政権と日米関係

(1)日米首脳会談

欧州ほか米同盟諸国がアラブ7か国からの入国制限措置を打ち出したことで一挙にトランプ嫌悪が深まる世界環境(How America’s allies see it. The Economist, Feb.4,2017)の中、2月10日、安倍首相とトランプ大統領との初の両国首脳会談がホワイトハウスで行われました。           

当初想定されていたトランプ大統領のこれまでの対日批判において、その最大の焦点と見られていた自動車貿易や為替問題についての注文や批判は表面化せず、それら経済問題については今回、安倍首相が持ち込んだ新たな日米対話の枠組み「新経済対話」の場で討議していく事で合意され、一方、安全保障でも米軍による沖縄県尖閣の防衛義務の確認や、在日米軍駐留経費の日本側負担増要求もなく、結果として安全保障でも強固な同盟関係が確認され、通商や為替で目立った摩擦を避けた無難な初会談だったとされるものでした。 これは日本政府が戦略的に封じ込めに動いた結果で、とにかく上手く乗り切ったと云え、その後はフロリダでのゴルフ外交と、「日米蜜月」を演出する事ができたというもので、結果だけを見れば日本にとって出来すぎの内容とされる処です。が、就任最初にピークを迎えてしまったとの感すらあり、今後の具体論に入るときに、今以上の良好な関係を演出する事はなかなか難しくなるかもと、思えるほどです。

・「新経済対話」
それは、具体的には今回新しい交渉の枠組みとなった「新経済対話」の場を如何に効果的に運営していけるかが問われていく事というものです。当該「対話」で話し合われる分野は三つ、つまり財政・金融のマクロ政策、経済協力、そして2国間の貿易体制について話し合われていく由ですが、so far 日本からは麻生副総理、米側からはペンス副大統領のナンバー2同志が仕切る以外は、詳細は不明です。勿論安倍首相はトランプ氏に、これまでの日米経済関係、そして米雇用への貢献の現状を説明し、彼の理解を促せたと伝えられていますから、そうした文脈からは経済協力は歩み寄り安いテーマという事でしょう。とすれば、問題は残りの二つです。

まず、財政金融政策については、日米がどのように協調することができるのか、です。その内容は日米二国間貿易のバランス問題に直結する、つまり、それらテーマは円・ドル問題と同一線上にあるだけにcomprehensive な協調関係を模索していくということになるのでしょうが、かなりの難題と思料します。加えて、fair trade 、公正な貿易推進で両者が合意したとされている点です。つまり、 安倍首相にとってはfaireとは、競争‘プロセス’における公正をイメージしているのでしょうが、トランプ氏は‘結果’の公正を目指すとしている点で、そのギャップを如何に詰めていけるかが、引き続く問題と思料するのです。

(2)日米関係の深化、そして進化を

もとより、日米同盟は共通の利益と民主主義の価値という二つの柱に支えられてきたとされるものですが、今次、首脳会談では少なくとも共通の利益に向かう事で再確認されたという点では更なる深化が期待できるという事でしょう。とすれば、次のステップは後者の部分をどのように固めていけるかですが、それは日米関係の進化に繋がる処と云うものです。ただその点では、必ずしもお構いのないトランプ氏の事でしょうから、そんな彼との道中は長いものになる事は間違いなく、相応の覚悟が必要ではと思料する処です。 そして、欧州との間にある不況和音もさることながら、トランプ政権にとって最大の懸案は中国です。それだけに、今回、確認できたという日米関係も、トランプ政権が対中関係を模索する過程で揺れ動く可能性も否定できません。その点、今回の日米首脳会談で手にした政治資源を今後の国際環境に反映できるよう日本として改めて世界における自らの役割の再定義とその戦略の再構築を図り、以って次機を期すべきと思料するのです。


おわりに:最後のアヴァンギャルド 

中央公論2月号に載った東大名誉教授、佐々木健一氏のトランプ大統領誕生に係る論考「最後のアヴァンギャルド、―トランプ大統領誕生の意味」は、なかなか興味深いものでした。

・最後のAvant-garde
まず佐々木氏は、トランプ政権誕生の予兆を2011年に起きた「ウオール街を占拠せよ」(OWS)の運動に見出すというのです。OWS運動は、リーマンショック後、3年目に起きたものですが、富める1%に対して残る99%の人々の怒りが動かしたもので、その際の「我々は99%だ」としたスローガンからはこの運動が国全体の富が上位1%に集中している事の告発であったとする一方、彼らが求めたのは、社会的な平等、経済的な正義で、理念的な主張であり、極論すれば、体制を顛倒させなければやまないような計画のものだったとするのです。そして、行政経験のないトランプ氏を大統領に選んだのは、その時、果されなかった革命の様に見えると指摘するのですが、興味深いことは、そこで、佐々木氏はトランプ政権の誕生を芸術運動であるアバンギャルド(前衛)と重ね合わせるのでした。

つまり、アバンギャルドとは、既存の何かに挑み、それを破壊しようとする戦闘的な精神が根底にあり、怒りの実験場とも言える運動だったが、トランプ政権はその怒りが、まるで直接現実の中に入り込む形で現れたと指摘するのです。尤も、彼自身が怒っていたようには思われない。億万長者であるこのひとに、真に怒るべきことなど、想像することは難しい。怒りは民衆の中に、鬱積した形で潜在し、トランプ氏はそれに火をつけるアジテーターだったと云い、怒りを演じることにおいてトランプ氏はアーテイストだと断じ、以って最後のアヴァンギャルドと見る所以とするのでした。そして最後に「トランプ大統領は近代にまつわるパンドラの箱を開けたことで哲学の季節が始まるほかはない」と結ぶのでしたが、要は、彼にはそれに備える思想的準備がないことが問題と云うのです。

・動物農場 (Animal Farm)
さて、上記論考にあった「アジテーター」の言葉で連想させられるのが世界的な風刺小説、George OrwellのAnimal Farm (1945)です。そのあら筋はよく知られる処で、人間の農場主が動物たちの利益を搾取していることに気づいた「荘園農場」の動物達が、偶発的に起きた革命で人間を追い出し、ナポレオンと称する「豚」の指揮の下に「動物主義」に基づく「動物農場」を作りあげ、動物達の仲間社会は安定を得たのですが、不和や争いが絶えず、最後は理解できない混乱と恐怖に陥っていき、結果的には支配者が入れ替わっただけで、人間が支配していた時より、圧倒的で過酷な農場となったというものです。この小説は当時のソ連をイメージした風刺小説ですが、次元も環境も全く異なるものの、なぜか現下のトランプショックに通じるものを感じるのです。と云うのも、確かに貧困や低所得者から多くの支持を得たトランプ氏ですが、彼が目指す減税策等は結局は、彼に投票した白人労働者を裏切るものになるものと、思えるからです。

そして、 Financial Times (2017/2/17)に寄せた政治コラムニスト、Philip Stephens氏の記事、これはフリン大統領補佐官(国家安全保障担当)の辞任を巡るホワイトハウス事情を書き立てるものですが(辞任の背景は、補佐官が駐米ロシア大使館と対ロ制裁問題でトランプ大統領就任前に情報活動をしていた事)、その締めの言葉は極めて重く響くのです - What has it come to when the world view of a US president seems as fanciful as the notion of Mr.Trump as the Siberian candidate ? つまり、トランプ氏は(大統領選挙中)「シベリアから来た候補」ではないかと見られたのと同じように、世界が今、米大統領たる同氏を懐疑的に見ている。なんと嘆かわしいことかと。そのタイトルは`Trump, Putin and a fatal attraction ‘

以上
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2017年01月26日

2017年2月号  'Post-truth'とPresident Donald Trump - 林川眞善

はじめに:アメリカニズム

日本外国特派員クラブが発行する会員機関誌「Number 1 SHINBUN 」1月号は、1993年8月 18日、来日中のトランプ氏が(彼の訪日は、先の金融危機の際、支援をしてくれた日本やアジアの投資家へのお礼旅行とされていた)同クラブのProfessional Luncheon のスピーカーとして現れ、当時の日米通商交渉について、米側の交渉力の弱さを批判したのですが、その際の様相を同日付でN.Y. Timesが次のように報道していたと、紹介しています。

・・・ urging the U.S. to get `tougher’ with Japan in its trade negotiations and calling past U.S. negotiators `moron’ and `idiot’. The article also quoted him as saying that in trade negotiations America should be represented by a top businessman.

要は、米政府に対し、対日交渉に当っては、タフであるべきで、これまでの米側交渉者は低能でバカな連中で、これからの通商交渉はトップのビジネスマンにやらすべきと、言っていたと報じるものだったのですが、果せるかな、それから24年、今月20日、不動産王の彼は米国第45代大統領に就任したのです。まさに彼の有言実行の極みと云う処です。そして、America first(米国第一主義)を旗印に、deal (取引)をキワードに政策の実現に向け船出したのです。尤も、その船出は企業への口先介入という形で既に始まっています。

・口先介入というトランプ流企業誘導
新年早々の1月5日、当時のトランプ次期大統領が自身のツイッターでトヨタ自動車に対し、彼らが進めているメキシコ工場の新設を撤回するよう求めきたのです。実に驚きです。6日付日経夕刊は第1面で「トランプ氏、トヨタに介入」と大きく報道すると共に、翌7日の朝刊第1面では「北米戦略に政治リスク」の文字が大きく踊っていました。あろうことか、超大国アメリカの大統領にもなろうかと云う人物が、大企業とは云え、日本企業トヨタがメキシコで行う事業活動に口先介入するなど、とても信じられない行為と映るものでした。(注)

(注)トヨタは2019年にメキシコに約10億ドルを投じて新工場を稼働させ、小型車を米国にも輸
出する予定。これに対してトランプ氏はその計画の撤回を、次のように求めたというもの。
― Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for
  U.S. NO WAY! Build plant in U.S. or pay big border tax.

トランプ氏の米企業への口先介入は、選挙中の公約であった工場労働者の職場確保にあるというものですが、彼の言い分は「メキシコで車を作り、それを米国に輸出するという事は、米国から製造現場と雇用が失われることになり、そこで高関税をかけ輸入車を締め出すことが米国の国益に適う」という主張ですが、それは全く間違った貿易観に端を発するものと
云う他なく、極めてunreasonableな論理というものです。

それでも、この口先介入を受けた多くの企業は結論として、これに応え、12月1日には米大手空調メーカーのキャリア社がメキシコへの事業投資撤回、自動車のフォードもメキシコでの工場の新設撤回を決定、これに続く、フィアット・クライスラーそしてGMと「米自動車ビッグ・スリー」が軒並み米国内での雇用拡大のための生産計画を表明するなど、まさに異例とも言える様相を呈しています。更に、IT業界でもIBM,アマゾン、アリババが、更には独バイエルなども米国内での雇用増や投資の取り組みについて発表するなど、新政権への歩み寄りを示しています。トランプ氏の米国大統領就任を控え、米国への貢献度合いを訴えるアッピ-ル競争とも映る処です。勿論、米企業として時の政策に協力するという自主的な経営判断なら、それはそれとして納得できる処です。然し、聊か恫喝とも映る口先介入、しかも当時、大統領でもない彼による口先介入が行われ、又これに従順に応じる企業の後継を真の当りにするにつけ、これがアメリカかと、その異常さに立ちすくむ思いを禁じ得なかったというものです。

そして、今「米国第一主義」という‘アメリカニズム‘ の下、トランプ氏は、恫喝ともいえる手法をも弄して、実際トヨタに届いたツイッター(上記注)など、まさに恫喝の何物でもない処ですが、アメリカを保護主義へと誘導している処ですが、それが行くつく処は、自国経済はもとより世界経済を巻き込んだ大停滞に陥ることになる、その可能性を危惧する処です。

・「迷走する世界」の幕開け
トランプ氏は、就任演説では再び、「米国第一主義」を掲げ、「米国製品を買い、米国人を雇う」ことが新しいルールだと、そして保護主義こそが繁栄と強さに繋がると主張し、米国を偉大な国にすると、叫ぶだけで、そこには、これまでの経済発展の規範とされてきた自由主義貿易の否定はあっても、「偉大な国」とは、どういった形の国を目指すのか、未来に向けた米国を語ることもなく、まるで選挙戦で対立候補と向き合い、言い合っている様相とも映るというものです。
こうした、まさにlousyなトランプ氏をトップに頂く米国と世界はこれから付き合っていく事になるわけですが、それこそは、まさに「迷走する世界」の幕開け(月例論考、先月号)を実感させられる処です。就任1週間前に行われた、初の彼の記者会見での混乱状況とも併せみるとき、「これで大統領をやっていけるのか」との思うこと、しきりと云うものです。かくして、米内外の各種メデイアはトランプ大統領の言動を巡って色々書き立てています。

そこで本稿では、それら議論を踏まえつつも、これまでのトランプ氏の言動を、トランプ政権の政策行動のリアルとして、二点に絞り、具体的には、上述アメリカニズムの実践と云うべく、口先介入で企業の国内回帰を促し、国内での雇用機会を創るということの実際とその矛盾、つまり、彼が公約したrust beltの低所得者層を救えることになるのか、という点。そして、トランプ氏登場で世界的に、地政学的リスクの高まるなか、とりわけトランプ氏は対中貿易の赤字拡大が米国内の雇用を奪っているとし、対中批判を強めています。そうした事態の推移は、グローバル・リスクの拡大に繋がる処、そこで米中関係の行方について考察していく事としたいと思います。

・Post-truthということ
ただこの際は、外せないテーマとしてあるのが「Post-truth(ポスト真実)」です。この言葉は、世界は事実より感情を優先する?そんな文脈で語られるkey wordとされるものです。暴言王と言われたトランプ氏が、今次の大統領選挙で勝利したのも、実は自身のツイッターを介し一方的に情報発信し、言うなればPost-truth のrhetoricを擁しての事とされていています。その点、彼はまさに‘Post-truth politics’に在る処です。その詳細は本論に委ねますが、それはネット社会となった今、メデイアと政治、そして民主主義との関係の再考を迫る処と思料するのです。

そこで、トランプ政治を理解する上で、まずはこのpost-truthの実状をレビューする事とし、その上で、以下、目次に即し論述することとしたいと思います。実は上記2点こそは、彼の映すpost-truth の検証でもあるのです。 (2017/1/25)


    ― 目  次 -

第1部 Post-truth Politics

(1)Art of the lie         ・・・P.4
(2)Post-truth politics in the age of social media P.5
・トランプ政策の虚実

第2部.トランプ政権のリアル:Post-truth politics 検証

1. 見えない‘雇用と産業再生’への政策  ・・・ P.6

(1) America first でrust belt を救えるか
(2) トランプ政権の経済閣僚おトランプ氏の実像
・トランプ政権の経済閣僚と産業政策
・トランプ氏の実像
  
2.トランプ政権の通商・外交政策のリアル ・・・P.9

(1)「反中」に照準を合わせるトランプ通商政策
                   ・米中貿易インバランス問題
                    ・為替操作国認定問題
(2)「一つの中国」問題

おわりに:アメリカは‘殺戮’の場所?   ・・・ P.12

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第1部 Post-truth Politics

(1) Art of the lie (虚言の技術)

トランプ氏には今、Post-truthのレトリックを擁する政治家という言葉が向けられています。
このpost-truth 、文字通りに訳すと「真実後」ですが、それは「客観的な事実とか真実よりも、感情や個人の心情への訴えかけの方が世論に及ぼす影響が大きい状況」を意味するものとされています。そこで「post-truth politics:真実後の政治」ですが、それは真実が重視されることなく、個人の信念や感情的な訴えに動く政治、を意味すると云うのです。 言い換えれば、今や政治には、真実は関係なく、事実無根の嘘であれ、怒れる有権者たちが聴きたがっていることを語り、支持率を上げていく、そうした政治の在り様を指すというのですが、それを選挙戦で実践し、大統領へのキップを手にしたのがトランプ氏だったのです。

・Art of the lie
The Economist(2016/9/10)は、カバー・ストーリで「Art of the lie」(虚言の技術)と題する特集を組み、選挙中のトランプ氏の発言は矛盾だらけ、虚言のかたまり、としてpost-truth politics の象徴と決めつけると同時に、Politicians have always lied. Does it matter if they leave the truth behind entirely? 政治家はこれまでも嘘をついてきたが、真実に目を向けることないままに済ませることでいいのかとし、更に「多くの国で感情が事実より簡単に力を持つようになる状況が続けば、社会の様々な問題を解決していく手段として事実が持つ力は大幅に消えて行くだろう」と、警告を発していたのです。

今次の米大統領選では周知の通り、最後まで中傷合戦が繰り広げられました。政策よりもスキャンダルに注目が集まっていましたが、その背景にあったのがソーシアル・メデイアの存在です。そこでは、まじめな政策論よりも過激な発言の方が注目を浴び、それがソーシアルメデイアで共有され、自分は実際、その発言を聞いていなくても、又その検証をすることもなく、「○○と、発言した」というコメントが拡散され、それが世論となっていくという事です。

例えば、トランプ氏は何ら根拠もなく「オバマ大統領が過激派のISを作った」と、ネットで主張し世論誘導を図ったり、また「オバマ大統領は米国生まれではない」と、人種差別にもつながるような発言をすることで白人票を集めることに成功したと言われています。そして、これがポピュリズムに組みする形で支持者の間で世論が形成され、その結果、彼は大統領へのキップを手にしたとされているのですが、この一連の動きをpost-truthが齎す政治現象と評される処です。
つまり、ライバルに不利になるような、或いは有権者の不満に応える政策を、しかし何ら根拠のないままに繰り返し、それもソーシアル・ネットワーク(ツイッター)を通じて直接支持者に繰り返し訴えることで、いつしかそれは真実味を帯び、支持票を重ねていったと言いうものですが、問題は「事実を無視した政治」がまかり通っていく事です。

勿論、以前にもこうした例はありました。例えば「大量破壊兵器をかくし持っている」として、9・11事件とは関係のなかったイラクを米国が攻撃したのもPost-truth の代表格とされるのですが、大統領選挙中のトランプ氏の行動は聊か際立ったものでした。それでも有権者の支持を得た点で問題は深刻と云うものです。オバマ大統領の出生問題については、出生証明書が公開されたことで一件落着していますがトランプ氏は、自分が発言したことでオバマ氏は自身の証明を果たす事が出来たと、発言の誤りを詫びることもなく、誇らしく振舞っていたのです。

英国で、6月起きたEU離脱に係る国民投票結果も同様事情を映すものでした。当初、EU残留派が優位と予想されていましたが、離脱派は「英国はEUに対して毎週3億5千万ポンド(約476億円)拠出している。離脱すれば財源難の英国民保険サービス(NHS)に充当できる」と訴えていたのです。然し、そこにはEUからもらえる補助金は含まれていないこと、更にあきれることは離脱決定後、離脱しても予算は当該項目には投入できないことが判明したと、主張を撤回したのです。然し離脱派が勝利したのは、この嘘が有権者の心をとらえた結果とされているのです。事実に反する事項をスローガンに掲げ有権者の心をつかむ政治という事ですが、2016年の英国での流行語大賞には、この「post-truth」が選ばれたのです。

(2) Post-truth politics in the age of social media

ここで重要なことは、前述のとおりトランプ氏はソーシアルメデイア(ツイッター)をフルに使い、直接支持者に訴え、有権者の支持を取り付けていったと言う点です。つまり、そうした手法が広がっていくとなると、色々の情報が瞬く間に広がっていくことで政治と有権者の距離が縮まり、スピード感を以って情報の共有が可能な環境が出来ていく事になるという事ですが、例えば当該政策についての全体像がつかめぬまま、そして当該情報の真実性をチェックできないままに、それはポピュリズムとなって進むことともなり、いわゆる‘正論’より、噂が支配すると云った環境が進むことになるという事です。しかも、その結果は米国と云う国を二分する処となってきていることです。大いなる問題です。

そこで、情報の真偽の見極め方が問題となるのですが、それが政治と直結して進むことが問題なのです。トランプ氏がでたらめな発言をしていても、それが問われないままに過ぎていった現実が証明する処ですが、ソーシアルメデイア社会となった今、post- trust政治を如何に監視していくか、情報と政治の関係が改めて問われる事になったというものです。が、それは同時に民主主義の本質が改めて問われると言う事でもあるのです。

・トランプ政策の虚実
さて、トランプ氏は大統領就任早々、TPPからの離脱宣言やNAFTA見直し等々、反自由貿易政策を自らの署名を以って発表しました。これからも色々政策を打ち出す事でしょう。然し、上
述のようにpost-truth politics の主役を演じてきた彼の事だけに、その行動への不信感は増すことはあっても、減ずることはなさそうです。例えば、経済政策では彼は、インフラ投資、規制緩和そして減税を3本柱としているようですが、それらが本当に低所得層を救う事に繋がるのか、ですが、あれもこれも、post-truthとなると、そのツケは結局国民に降りかかる処です。以下では、その点に焦点を当て、トランプ政策の虚実として論じていく事としたいと思います。


第2部. トランプ政権のリアル:Post-truth politics の検証

1.見えない‘雇用と産業再生’への政策 

(1)America first で rust belt を救えるか

トランプ大統領は、「最も多くの雇用を創りだす大統領になる」と云い、前述の通りメキシコでの事業投資を目指す米企業に対し、米国内での雇用創出のため米国への生産回帰をと、恫喝的ともいえる口先介入を進めています。

然し、トランプ氏の言い分は、前述(P.2)の通りですが、そもそもメキシコへ投資をしたからと云って米国の雇用が減るという事にはならないはずです。仮に米国に全て生産が戻ったとしても、高い人件費が米国内での販売価格の上昇要因になる処です。7日付日経が伝えた「米自動車研究センター」の試算では、フォードの小型車「フユ―ジョン」の生産をメキシコからミシガン州に移した場合、1台当たりのコストが1200ドル(約14万円)上がるというのです。トランプ氏を大統領に押し上げた白人労働者層を意識したポピュリズム政策は、まわりまわって支持層を苦しめる構図になるというものです。
一方、フォードは建設計画を撤回した事で、予定地の州政府から誘致に投じた費用の返還を求められているほか、地元企業の間ではフォード車の購入取りやめの動きも出てきており、工場建設計画の撤回はフォードにとって高い代償となる可能性が出てきているのです。

・Rust beltに在る低所得者層を救えるか
問題は、こうした手法で、公約である成長に取り残されたrust beltに在る低所得層の労働者を救うことが出来るかという事です。周知のとおりトランプ大統領は、その背景にあるのがグローバル化だとして、保護主義の姿勢を強めています。然し、‘rust’の背景にある問題の本質は、産業構造の変化であり、産業の競争力、つまり生産性にあるのですから、単に外国のせいにする事ではなく、当該地域の産業事情を理解し、それにどのように取り組み、改善していくか、まさに産業再生戦略のシナリオを描いていく事が求められる筈です。然しそれがないままに米国第一の名の下、安く手にできる輸入品まで輸入規制していくとなれば、回りまわって米国内では消費者は高い製品を購入することになり、結果として経済格差を拡大させる事にもなるのです。

加えて、これまでの減税の恩恵が富裕層に偏ってきたことも格差拡大に繋がっていると指摘されています。その点ではルールの見直しも不可欠と云うものでしょう。フランスの経済学者トマ・ピケテイ氏は「悲劇的なのはトランプ氏の政策がもっぱら不平等をつよめてしまう事」だと指摘していますが、要は、経済の生業が構造的に変化してきた現状にあっては、所得再分配の在り方についても戦略的に見直されていく事が不可避となっていることに、真摯に向き合っていく事が不可欠なのですが、そうした発想も見えていない事が問題なのです。

因みに、Financial Times(2017/1/5)は社説` The protectionist trade ― fallacies of America First’(トランプ氏が叫ぶ米国第一主義の間違い)で、フォードがメキシコ事業投資を撤回したことについて、気まぐれなトランプ氏の怒りにふれまいといま、米企業はきゅうきゅうとしていると、次のように警鐘をならしています。
「・・・トランプ氏はGMに対しても、国外で生産した車にbig border taxをかけるとツイッターで脅している。国民大衆には受けたかもしれないが、それは全くの判断間違い。同氏は保護主義に凝り固まり、個別企業をツイターで脅すことで産業政策を展開しているかに見える。企業活動への介入に固執しても、米国の雇用増加にはつながらない。それどころか、企業経営者に政治介入という恐怖心を植え付け、効率よく機能しているsupply chainを混乱させるだけだ。・・・特定の企業に目を付け、ゆすりに屈したかのような事業戦略を取らせるのは、疑いなく悪い結果をもたらす。・・・フォードの決断でトランプ氏はPR戦では勝利したが、同氏の手法が米経済に予測不能で破壊的な政治リスクを齎すことは間違いない。ゼロサムの重商主義をやみくもに追求する同氏の「米国第一」の貿易政策は、あらゆる国の経済を悪化させることになる。」と。

(2)トランプ政権の経済閣僚とトランプ氏の実像

・トランプ政権の経済閣僚と産業政策
トランプ氏の言動への不信は上述の通りで、米産業政策の不透明感を高める処ですが、更に、その感ひとしおとするのが、トランプ政権の主要経済閣僚の顔ぶれです。

まず、財務長官のムニュ―チン氏、国家経済会議委員長のコーン氏はいずれもゴールドマン・サックスの出身、また各国との通商交渉にあたるUSTR(米通商代表部)にはライトハイザー氏、輸出振興を練る商務長官には著名な投資家で資産家のW.ロス氏、更に今回、新設なった通商政策の司令塔の国家通商会議のトップには、近時対中批判を強める米UC大のP.ナヴァロ氏となっています。 尚、他、重要閣僚には、エクソン・モービルのレックス・テイラーソン氏が国務長官に又、元中央軍司令官のジェームズ・マチス氏が国防長官に入っていますが、以上の閣僚の‘出身’の頭文字をとって3G政権とも云われてもいます。つまり投資会社Goldman SachsのG、軍人のGeneral, 更にロス氏他の超資産家を指すGazillionaire (超億万長者)のG.、です。

かくして、主要経済閣僚は、彼がこれまで批判してきたウオール街の出身者、それに繋がる投資家、大企業出身者で固められており、従って金融政策はよりウオール・ストリート寄りとなる事が予想されるのですが、彼が云う、‘雇用と産業の育成’に通じる人材は見当たりません。つまり、rust beltを再生、救済していく為の産業政策の専門家は見当たらずという事ですが、この辺はやはり個別企業への口先介入でなんとか対処せんとするという事でしょうか。それでは場当たり的であり、産業としての成長や構造改革など期待しようもないというものです。実の処、彼にとっては関心のない様に見受けられるのです。

・トランプ氏の実像
例えば、彼はは「雇用を創る大統領になる」と云っています。つまり‘雇用創出’の一点に絞って事を進めるという事の様ですが、それは単にその数字をつくる事自体が目標で、それが達成されたら、それでOKとするのではと、彼の行動様式からは、そう思えてなりません。というのも、彼の行動にかかるキワードが`Deal’にあり、このdealを通して目標を達成していく事を信条としているようで、それはいわゆるビジネスでの経営目標達成行動と変わるものではなく、それだけに超大国のトップに求められる生業とは全く次元を異にする行動様式にある点です。

つまり彼の場合、‘そこにある’土地を取引してお金を生ませていく事で大成功してきた不動産王です。が、そこで重要なことは、‘創る’(create)という事ではなく、deal、つまり自分にとって交渉を如何に有利、かつ効率的に進めるかという事にあるというのです。まさにdeal なのです。

「ビジネス」という言葉の定義にはいろいろあります。が、今では色々の要素を組みあわせ、社会との生業に配慮し、生産活動、企業活動を図る、つまり‘創造’(Creation)していく事を含意とされるようになってきていますし、それだけに仕事に係る構想力も求められるというものです。そしてそれが企業人の矜持とされる処です。つまり、今日、ビジネスマンと呼ぶ際はそうしたイメージを抱かされるものですが、彼の行動様式から見えてくる事は、要するに不動産を取引する旧来型の業者の域を出るものではないのです。巷間、「ビジネスマンのトランプ氏が米国大統領になった」と表するのですが、上述次第からは彼をビジネスマンとは呼べないのです。さて、この差をトランプ氏が理解できぬままに行動することの危険性が高まっているというものです

一見するとトランプ氏の姿勢は国内の企業や産業に優しい路線と映るのでしょうが、彼が「米国第一主義」と主張し、保護主義がベターと云うのも、彼にとっては、それが自分の利益に適う、要は隠れ蓑とも映るのです。その結果はrust beltの労働者を苦しめることになるだけで、彼の支持者を裏切る事になるのです。まさにpost-truth politician という処です

いま世界経済は多国間にわたるSupply chainとの組み合わせを前提に出来上がっており、それは効率的な生産システムとして更なる進化の中にあり、新たな産業構造を演出していく処です。そうした進化を体して米国産業をどのように再生、誘導し、雇用の創造を図っていこうとするのか、いわゆる産業政策なるものがない限りrust beltに在る人たちを救えない筈です。グローバル化を忌避するトランプ氏ですが、ヒト、モノ、カネ、更には技術も含め、その移動を自由にしていくことでイノベーションも進み、新しい機会が生まれてくる事を理解すべきなのです。

2.トランプ政権の通商・外交政策のリアル

(1)「反中」に照準を合わせるトランプ通商政策
    
・米中貿易インバランス問題
周知の通りトランプ氏は、選挙中「中国を為替操作国に指定する。同国製品には45%の関税を課す」と対中強硬策を訴えていました。そして選挙後、各地を回り「中国がWTOに加盟した2001年以降、我々は7万カ所もの製造拠点を失った」と繰り返し、米中貿易のインバランス(注)を「米国の赤字は、中国が米国内での雇用を奪うもの」と、激しく対中非難をしてきています。

(注)米国の対中貿易赤字:2000年以降中国は対米輸出が著しく拡大した結果、2015年には約3670億ドルの対米貿易黒字(米統計)となっており、他国(日本:689億ドル)に比べ最大となっている。そこで、トランプ氏は中国に対し高関税(45%)を課すことで、米国内の製造業の雇用を取り戻すと公約している。ただし、中国では電子機器類のサプライチェーンが構築されている事、労働力も豊富かつ低廉の為、高関税が課されても米国の雇用回復は見込めないものとみられる。ただ中国でも人件費が高くなっている為、ベトナム等、更に人件費の低いアジアの国へ生産ラインが移行している状況。尤も中国はWTOで国が為替などを統制する「非市場経済国」として今尚扱われている(前号、論考)ため、反ダンピング関税がかけやすい環境にはある。

こうしたトランプ発言は、選挙中, 私的顧問を務めていた中国批判を強める学者、米UCアーバイン校、教授のP.ナヴァロ氏の助言に負うものと伝えられています。その彼をトランプ氏は、新たに米国の通商政策の司令塔として創設する「国家通商会議」のトップに充てたのです。彼について、近着 The Economist (2017,1,21)は、「The head of Trump’s new National Trade Council is about to become one of the world’s most powerful economists. That’s worrying.」と評していましたが、この人事を以ってトランプ政権の対中姿勢、「反中国」を鮮明にしたというものです。

いずれにしろ、米国の外交政策はこうした人事を背景にトランプ大統領主導の下に進められることを示唆する処で、世界の通商外交は、ますますトランプ氏の言動に振り回されることになるというものです。いずれにしろ、トランプ政権の通商政策は雇用問題と結び付けた形で貿易の均衡化に向けた交渉が行われていくものと思料するのですが、勿論そのシナリオは見えません。
ただ、米中交渉の流れの如何では、世界秩序の安定に寄与してきたとされる「一つの中国」には縛られないとトランプ氏は発言していますが、元より、これが大きな不安定要因となっているというものです。つまり、「一つの中国」と云う国際合意を、彼は‘デイール’の材料に使おうとするものとみられるのですが、これこそは世界の生業を一変させる、つまりは地政学的リスクの拡散を意味する処となるのです。要は、こうした通商問題は新政権の火薬庫と見られる処です。

・為替操作国指定問題
もう一つの為替操作国指定問題は、より国際的でsensitiveな問題がです。トランプ氏は選挙中から中国の人民元安誘導が巨額の対中貿易赤字を生み、米国の雇用を奪っているとして、中国の為替操作国指定を看板政策としていました。ただ、米財務省はそれとは異なり、中国を監視対象国にとどめています。(注)

(注)米財務省は次の3つの基準項目 [ ①対米貿易区理事が200億以上。②経常黒字がGDPの
3%以上。③為替介入の規模がGDPの2%以上 ]を設け、すべてが適用される場合は操作国と認
定し、2つに該当する場合は監視対象国とすることしている。

然し、1月13日、米紙WSJとのインタビユーでは為替操作国との認定は見送ると発言、同時に為替政策、通商問題で、中国との交渉に進展がなければ「一つの中国」の原則を見直す(14日付、毎日新聞、デジタル)、としています。この方針変えの真相は不明ですが、操作国指定はかえってドル高を招くとの計算が働いての事かと思料されるのです。つまり、中国は経済成長の鈍化で海外への資金流出が続いており、かえって中国からの輸入を促し、米国の貿易赤字拡大が進みかねないとの読みがあっての事かと思われます。(注)

   (注)Harvard のC. Reinhart教授は、Project Syndicate に寄稿した12月30日付、論考
「Will dollar strength trigger intervention in 2017?」で「強いドルは彼の公約を達成する上で大きな
障害」と指摘すると共に、興味深い指摘をしています。つまり、レーガン政権初期、強烈なドル高
が起き、1985年には日米欧が強調してドルお引き下げるプラザ合意が成立した。
さて、「再びプラザ合意はあるのだろうか」と、問いかけ、日独、中国の状況を点検、彼らの事情か
ら協議のテーブルにはつきそうもないとし、もし今年ドル売り介入があるとすれば、米国の単独介
入が最も有力なシナリオだ、と云うのです。

尤も現実には、トランプ氏の財政出動による景気の引き揚げ発言でマーケットが反応してドル高が進んでいます。そして17日付WSJでのインタビューでは「ドルが強すぎる」と、ドル高をけん制する発言をしたことで、ドルを押し下げる(通貨安誘導)可能性を示唆するものと言われ、もしそうであれば、中国の為替介入を批判してきた米国がドル安誘導できるのか、と疑問の出る処です。これまで米国は強いドルが国益に適うとし、近年、歴代大統領らは通貨安競争を明確に否定してきています。とすれば、米国の通貨政策の大転換に繋がる可能性すら感じさせる処です。19日の上院承認公聴会で,次期財務長官のムニューチン氏は「強いドルは長期的に必要」とトランプ発言とは異見をとなえていましたが、23日には、一転トランプ氏に沿った発言をおこなっており、政権内の意思統一の未熟さを暴露するばかりです。

(2)「一つの中国」問題

12月2日にあった台湾、葵総統との電話協議は歴史的なものでした。それは1979年の米台断交以来、米大統領や次期大統領と台湾総統とのやり取りが公になったのは初めてのことです。
トランプ政権が、これまでの台湾は中国の一部とする「一つの中国」の原則を尊重してきた米外交の転換の可能性を示唆するものと受け止められる処です。勿論、中国はこれに反発を隠しません。もとより米中間貿易に係るトランプ氏の中国批判は前述の通りですが、南シナ海問題に係る対中批判等も含め、それら要素がトリガーとなって米中関係の険悪化が急速に進みだしてきたというものです。勿論、この行方の如何は世界経済に与える影響の大きさは云うまでもなく、とりわけ日米韓を核とするアジア安全保障体制の在り姿に大きく影響を齎す処であり、その点、注意深く事態をフォローしていく事、云うまでもない処です。

トランプ氏は、13日のWSJ紙のインタビューでは再び、「一つの中国」は確約しない方針と明言すると共に、中国と為替政策や通商政策を巡って交渉する上で、「一つの中国を含むすべてが対象だ」と、しています。それは取引材料として中国に揺さぶりをかけながら、為替や貿易で譲歩を迫る姿勢を鮮明にしたものと思料するのですが、外交問題でもビジネス感覚の利害得失を前面に押し出さんとする姿勢と映るというものです。それでも中国を挑発した先に、何を得ようとしているのかが、分かりにくい処ではあるのですが。

以上からは、必要とされる政策は未だ煮詰まった様子はなく、全てこれからという処でしょうが、それも前述したように来年の中間選挙次第という事になるのではと、思料するのです。
ただそれでも、米国がAmerica firstで進む事となれば、自らが作り上げてきた経済発展の規範とする戦後秩序の大転換が起こり、以って世界は新たな地政学リスクと対峙していく事になると予想されるだけに、それへの戦略的な対応準備が不可避とされる処です。
とすれば、これまでの日米同盟を日本国の運営の基軸としてきた日本としては、勿論その基本軸には変わることはないでしょうが、改めて、日本として持続可能な経済としていくか、日米同盟の在り方も含め、その戦略の見直しが不可避と思料する処です。実は、それこそは世界の相対として、日本にとって新たな出番となる筈ですし、それはまさに機会なのです。


おわりに:アメリカは‘殺戮’の場所?

処で、‘America first’という言葉は、日本では極めてポピュラーな言葉となっています。然し、米国では今回、彼が演説の中で発した言葉 ‘carnage’ (殺戮)に大いなる関心が集まっています。

というのも彼は「・・都心部で貧困から逃れられずにいる母親と子供たち、米国中に墓標のように散在するさびれ果てた工場、・・・大きな潜在能力を持つ米国に略奪を働いてきたギャング、麻薬。このアメリカの殺戮(carnage) は、この場所で、たった今、止まる。」(日経1月22日)と演説していましたが、本当に米国は、彼が云うような「殺戮」が起こっている悲惨な状況にあるのかという疑問です。 大統領の地位にある人物が、こうした現状認識に在ることに極めて違和感を抱くと同時に、そうした彼に不安を感じるというものです。これこそはトランプ流、post-truthのレトリックと云う処でしょうが、彼の政治姿勢に疑問の募るばかりです。

加えて、就任直前の17日、米メデイアが発表に行われた世論調査では、彼を支持する(好ましい)とした、比率は40%、「好ましくない」が52%と、政権発足の当初から50%割れの過去最低となっています。このことは彼の政治基盤の弱さを意味する処ですが、それだけにポピュリズムに走っていく事になるのではと、極めて懸念されるというものです。

・America First or America Alone?
Financial Times (2017/1/10)の伝える、世界的に著名な政治Columnist , Mr. P. Stephensの「America First or America Alone?」と題した論考は、こうした懸念をえぐり出すようなトランプ評でした。同氏は`America First looks a lot like America Alone’ (米国第一主義は、米国孤立主義と極めて似ている)と、したうえで、トランプ氏が云うgrand designは極めて失望させられるものであり危険とし、次のように断じるのです。

・・・Mr. Trump prefers dealmaking to strategic thinking. His Make America Great Again prospectus is a jumble of instincts, prejudices and impulses. Among the ingredients : economic nationalism, antipathy to `globalism’, hostility towards immigrants, a relentless focus on Islamist extremism and a transnational, zero-sum view of great power relations.

つまり、トランプ氏の「米国を再び偉大にする」政策は、直感と偏見の寄せ集めで、中身は経済ナシナリズム、反グローバル主義、反移民、イスラム過激主義の徹底拒否、米国の利益優先のゼロサム思考等だ。米軍は今後数十年比類なき力を持ち続けるだろうが、その優位性は覇権とは同じでない。そして相手国と取引き引しても同盟関係には置き換えられないし、怒りに任せてツイートしても米国の力と威信の回復にはつながらない。とし、これまでの言動からは、トランプ氏はそれを認識する思考や性分を持ち合わせていないようだと、断じるのです。 トランプ氏は大統領を果たしてやっていけるのか、再びその懸念は深まるというものでした。

さて1月17日、中国習近平主席はダボス会議に初めて出席し(先月号、月例論考)、その冒頭の演説で、次のように発言したのです。「経済のグローバル化は世界経済の成長に強力な力を提供した」と。(1月18日付日経)          
 以上
posted by 林川眞善 at 12:49| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2016年12月26日

2017年1月号  来る年、2017年は’迷走する世界’の幕開け? - 林川眞善

はじめに:2016 Person of the Year

12月7日、米タイム誌は、同誌恒例の「今年の人、2016年」にDonald Trump 氏をとり挙げました。今年1年を通じて、良かったのか、悪かったのか、色々の出来事に、極めて強い影響を与えてきた仁とするものですが、彼について同誌は「過去の政治慣習を廃し、新たな形を作り出した」と、その理由を挙げると共に、「トランプ氏の勝利は、傲慢で守られた支配階級に対する長く見過ごされてきた怒りを象徴している」と分析するものでした。


さて2016年、欧米の先進国では、有権者の反グローバリズムが吹き荒れ、英国ではEUからの離脱、また米国では次期大統領選で「米国第一」を掲げる不動産王、トランプ氏が勝利を収めたことで、世界をあっと驚かせると同時に、保守化の高まりを強く印象付ける年となりました。この両者に共通する事情とは周知の通りで、経済格差拡大への市民の不満、移入低賃金労働者の増大で奪われる雇用機会への不満、等々こうした不満を背にしたポピュリズムが高まり、政治への現状不満の爆発と説明される処で、要は、これまでの自由や人権を軸としたリベラリズム、グローバリズムへの反撃とも言われる変化です。

周知の通り、グローバリゼーションとは地球規模の自由化です。モノ、カネ、ヒト、更に文化の自由な交流です。然しその自由は、時として人々を阻害し、不安に陥れることになると言われます。となると人は強固なアイデンテイテイ―を求め、純化路線に走り、ナショナリズムや排外主義に突き進むことになるというものです。
今、‘America first ‘を掲げるトランプ氏が次期米大統領として現れた事で、こうした社会的化学反応が一挙に進みだし、これまでの欧米先進国が経済発展の規範としてきた新自由主義なる思考様式が否定され、従って行動様式の構造変化が不可避となる様相にあります。

当然のこととして彼の言動を巡り、連日メデイアは精力的に報道していますが、2017年1月20日以降、彼はどのような政策展開を図っていくのか、そうした情報に世界は、日本は、翻弄されていると云った状況にある処です。
そうした一喜一憂する日本政府と野党の姿に、文春新年特別号のコラムでイタリアから帰国中の作家、塩野七生氏は今更ながらげんなりとしながらも、世界最大で最強の国のことだから、ある程度はやむをえないことかと云い、また、他国に無関係では生きていけないのは現実なので、米国の動向に注意しつづけるのも当然だろうが、こういう時期こそ、日本さえその気になればできることを実現化してみてはと、例えばTPPがどうなろうと、日本の農業の抜本的改革(注)なら、やり遂げたと言えるように、と提言していましたが、筆者も思いを同じくする処です。

  (注)政府は11月29日、JA全農の組織刷新を柱とする農業改革方針を決定。但し、規制改革会議の提言や、自民党農林部会長の小泉新次郎氏が目指していた全農改革にかかる具体的な数値目標、改革期限目標などは先送り。

勿論、今回のトランプ政権の意味は、単に米国だけの問題ではなく極めてグローバルなコンテクストで理解されるべきは云うまでもありません。その点については先の弊論考においても筆者流の分析と提言を行っていますが、いまなお多くの、多面的側面からの分析、論考の断つことはありません。

処で、大統領就任前ながらトランプ氏は、既に大統領然として行動をとり始めています。
詳細は本文にて触れますが、メキシコに工場移転を計画中の企業「キャリア」に自ら乗り出し、その計画を覆させ、当該雇用の確保を果たしたと喧伝するなど、自身の趣旨に沿った経営をと、企業介入を始めています。一方、対外的コミットメントの修正を迫る中、とりわけ安保戦略上Asian pivotalとしてきた米国のアジアへのインボルブメントの修正でアジアでの空白が懸念される中、これまで米中間でも確認されてきた「一つの中国」論に対し、貿易上の事由を以って、これに異論を唱え出しています。折も折、中国の習近平主席が1月に世界の主要リーダーが集まるダボス会議に出席するとの情報があり、世界はざわついでいますが、早速に、英Financial Times 紙のコラムニスト、Philip Stephensは同紙12月9日付で「Xi,Davos and the world in 2017」と題し、興味深い解析を展開しています。

これらはトランプ旋風に絡む話題という事ですが、12月、日本で行われた今年4回目の日ロ首脳会談の推移を、こうしたトランプ旋風に重ね合わせ見るとき、‘迷走する世界’すら示唆する新たな国際関係の構図が見えてくるというものです。つまり2017年の行方を考察していく上での興味深い視点が見えてくるというものです。そこで今回は2016年の総決算の意味と、併せ2017年の行方を考えていく為の手立てとして、これら三点に絞り、論じることとしたいと思います。     
(2016/12/25)



目  次

1.トランプ次期大統領の出現で世界はどう変わる   ・・・P.3

(1)「米国第一主義」のリアル
・トランプ流ビジネスの作法
・米企業は、ニュー・ノーマル(新常態)
(2)習近平主席、1月ダボス会議に出席する
・「一つの中国」をかく乱させるトランプ発言
・Stephens氏の解析―融解のグローバル秩序
                 
2.日ロ首脳会談と、会談から透ける‘迷走する世界’のかたち・・P.9

(1)日ロ首脳会談
(2)2017年、‘迷走する世界’の幕開け?
・日本の出番

おわりに:安倍首相、ハワイ・アリゾナ記念館慰霊訪問 ・・・P.12
                     
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       

1. トランプ米次期大統領の出現で世界はどう変わる

(1) 「米国第一主義」のリアル

12月14日、最大の焦点となっていた次期国務長官に、エクソンモービル社のレックス・テイラーソン氏の起用が決まり、これでほぼトランプ次期政権の陣容が固まった事になりました。
陣容構成の特徴は、安全保障分野では「元軍人」、経済閣僚では「最高経営責任者(CEO)」
と云った企業経営者が目立つ布陣となっています。とりわけ経済分野については、まさに米国内第一と、国内雇用創出などを重視する布陣を意識したものと云う処でしょうか。

さて、その雇用創出ですが、トランプ次期大統領は12月1日、訪問中のインデイアナ州で、米空調大手企業「キャリア」社が計画していた工場のメキシコ移転を翻意させ、その結果、同工場の人員解雇を阻止し、800のジョッブを確保したと、その内幕を、つまり同社の親企業、UT(United Technology)のヘイグCEOとの直談判で決めた事情を、堂々と明らかにしたのですが、これは次期大統領として露骨な政治介入というものです。この他にも、例えばAppleに対してはもっと国内での生産を行うように要請、Ford社に対しても、Boeing社に対しても同様圧力をかけていることも報じられています。
ただ一部の世論調査では、今回のトランプ氏の対応については6割方の人々が好意的だった由、伝えられていますが、こうしたトランプ様式にはきわめて強い危惧を隠せないと云うものです。つまり一時的に、トランプ氏への忠誠を誓うようなことで相応の見返りがあるとしても、中長期的には米国経済にとって極めて問題というものです。

・トランプ流ビジネスの作法
英エコノミスト誌(2016/12/10)はこうした事情について、次のように解析、批判するのです。(注:America’s new business model )

まず、トランプ氏の行動様式です。つまり、周知されている通り彼は大幅の減税、大幅なインフラ投資による経済の回復を狙うとしており、既にそうしたことからマーケットはトランプ相場として活発な動きを示しています。が、問題は彼のビジネス姿勢の背後にある、なにか容認しがたい商人気質、もう一つはその戦術、ゴール達成のために使う手段、企業買収や個別企業への攻撃、にあるというものです。そして、そうした行動は多くの犠牲の上にありながら、その成果を享受できるのは極く限られた人たちとなっていると、云うのです。

彼の主張は、アメリカの労働者は企業が低賃金の外国での生産活動にシフトした結果、大変な被害を受けている、そこで海外に転出した企業の製品を米国に輸入する際は35%という高関税をかけると云うのですが、そのような高関税は破壊的ともいえ、アメリカの消費者にはそれだけ高額な輸入品となる処です。一方、アメリカ企業も合理的な海外のサプライ・チェーンを活かすことが出来ず、従って競争力の低下は不可避、設備投資も鈍り、廻り回って労働者賃金も低下していく、言うなればしっぺ返しを喰うことにもなるというものです。
そして、関税については行政上、大統領に権限が集中しており議会の権限は限定的で問題ですが、もっと重大な問題は、仮に性急な保護主義が避けられたとしても個々の企業に賄賂や企業いじめ的な発想をベースとした戦略がでてくることこそが問題と指摘するのです。

尤も、アメリカでは経済環境によってはビジネスへの政治介入が起きているという歴史がこれまでもあり、例えば、1960年代にはJFKが値上げをきめた鉄鋼業界を公然と批判し、2009年にはオバマが自動車産業の救済と云ったように、歴代大統領はマーケットに干渉してきた経緯がありました。従ってトランプ氏が企業を言いくるめて、こちらに向かわせる大統領と言う点では、初めての大統領と言うものではありません。

国際的に見ても例外的な事ではなく、英国の場合、NISSANにBrexit 後も英国に残るようMay首相は内密の約束をしたと伝えられていますし、フランスでも眉を顰めるような企業に, 雇用をフランスに残すよう政府が強く働きかけてていることなど、周知される処です。ロシアやネズエラなど、コネが物言うことで悪名高い国々は、従順なものには恩恵を与え、敵対する者には罰を与えているとも指摘するのです。では米企業もCourting the king and currying favour 、まさに ‘ドナルド王‘のご機嫌をうかがう米企業と云う処でしょうか。 然し、それでもトランプ氏のやり方は心配だというのです。

・米企業は「ニュー・ノーマル」(新常態)
つまり大恐慌でもない今、当時のフバーや、ルーズベルトが企業に迫ったのは、国家のためになすべきことは何かが語られ、そうしたコンテクストにおいて2009年、オバマ氏は破たんの危機にあった銀行を整備し、自動産業を救済するものでしたが、今、アメリカはそうした危機状態にあるわけでもなく、とすれば、トランプ氏の企業への干渉は、非常事態への対応ではなく「ニュー・ノーマル」となる可能性が高いと、言うのです。

更に悪いことに、予測しにくい彼のやり方(penchant)、時に復讐的ともいえるいじめ(vindictive bullying )姿勢は、多くの政治家が好むバラマキ政策よりも一層経済を蝕むことになると、断じるのです。そして、もしこれがトランプ次期大統領の基調とするなら賢明な企業人は、大統領の好みに合わせ、彼の嫌がることは避けて行動することになり、その結果、米経済は長期に亘って深刻なダメージを受けることになると危惧するのです。
実際、そうした傾向は、既に現れており、選挙中あれだけトランプ候補を非難していたトップのCEOが、嬉々としてトランプ政権のアドバイザーリーメンバーとして参画している事だと指摘するのです。トランプ氏は選挙中、特別な利害関係者がたむろするワシントンというswamp (沼地)を干し上げると、言っていました。が、然し、これではロビスト達の役割は皮肉にも増大するという事になる処です。

こうした政策行動のシフトが齎す弊害は最初の内は見えにくいものだが、それは経済刺激策や規制改革の効果をはるかに超えるものとなっていく筈と云うのです。更には、世界最大の経済大国の大統領として、トランプ氏は、今後長きにわたり、誰にとがめられることもなく、小国の政治家ならできたであろう、それ以上に企業介入を進めていく事になるものとみられるというものです。

そうした動きは当然のこととして、アメリカの経済社会として、不合理な資本配分、競争力の低下、アメリカの制度・機関への信頼の低下、等々大変なダメージを託つことになるはずで、そのおかげで最も苦痛を余儀なくされるのが、トランプ氏が助けると約束した労働者なのです。もし、彼が真にmake America great again を標榜するなら、是非とも保護主義行動をやめ、脅すような行為を直ちに正し方向を変えていくべきと、警鐘を鳴らすのです。

要は、雇用など自国を過度に重視する姿勢は、企業の経営改善努力を損ない、世界で活躍する場が奪われていく事を、改めて警鐘を鳴らすというものですが、では日本経済運営の実情は?です。 勿論、日本は立派に自由主義をかざし、その枠組みに変化のない処です。ただ、近時、日本の財界の総本山と言われてきた経団連は、今や政府の下請け機関に変質してきています。例えば企業の賃上げについて、政府が示す引き上げ幅を示すと企業経営者はこれに素直に従う、官製と揶揄される状況にある処です。まさに癒着状況が進展中という事ですが、これでは創造的な企業活動など期待できる処ではありません。問題です。

(2) 習近平主席、1月ダボス会議に出席する
  
トランプ次期米大統領が掲げるAmerica first とは対外関係よりも、国内経済重視の姿勢を強めることを目指すと云うものですが、それは同時にアメリカの対外コミットメントの整理を意味する処です。TPPからの米国離脱発言も然りですが、トランプ氏は、国際的ルールは米国を縛り、色々の同盟関係は米国にとって負担になるだけで、米国の力を強化することにはつながらないと、思っているようだと伝えられています。日米安全保障問題では日本に駐留する米軍の経費は日本が負担すべきと迫るのも同じコンテクストにある処です。又、12月11日放送のTV番組では台湾を中国の一部とみなす 「一つの中国」 政策を米国が維持するかどうかは中国次第と発言しているのですが、それもその線上にある処です。

つまりトランプ氏は、米国内の雇用が中国に奪われていると繰り返し、「貿易などで(中国と)合意を得られなければ、なぜ「一つの中国」政策に縛られなければならないのかわからない」(日経12月13日)と発言しています。とにかく、彼にしてみれば地政学もビジネスも同じことで、とにかく交渉で何かを勝ち取りたいという事なのでしょうか。もとより「一つの中国」 の原則を揺るがす発言は、アジアの安全保障と経済に化学反応を起こす処です。

・習近平主席、1月 ダボス会議に出席
さて、そうした折、習近平国家主席が1月開催のスイス、ダボス会議に出席する話が伝えられ、これが上記トランプ次期米大統領発言と絡み、世界の強い関心を呼ぶ処となっています。ダボス会議については、Financial Times紙のコラムニストStephens氏は、「Xi , Davos and the world in 2017 」(2016/12/9, Financial Times)と題する寄稿記事で、ダボス会議を世界のelite達が集まり自身の英知を引けらかすvanityの場 (虚飾の場)と揶揄するのですが、それでも習近平主席もそうした場への誘惑に負けたものかと、評しながら、彼の参加が脚光を浴びること自体が今の世界の在り姿を語るものと云うのです。

・Stephens 氏の解析
さて、Stephens氏は次のように分析するのです。2016年、the west,欧米先進国を苛立たせたポピュリズムは、1848年 欧州を席巻した一連の革命騒動とは比較すべくもないが、あの年の`spring of nations ‘(諸国民の春)は`the ancien regime’(旧体制)の基盤を打ち砕いたに対して、今日の反乱者たちは、投票所を通じて権力を握ったというのです。

冷戦以降、人々は物事が秩序正しく、ある程度予測通りに進むと考えていたかもしれないが、それが根本から揺らぎはじめ、もはや権力は我々が考えていた場所にはない、というのです。
そして、トランプ氏の勝利や英国のBrexitを齎したポピュリズムによる混乱が落ち着くまでもなく既に、世界は新たな風景を見せてきていると指摘します。ただ、トランプ氏が今、何を考えているかはわからないし、発言も極めて大きくぶれるが、変わらないことが一つや二つあるというのです。それは`Billionaires will pay less tax and foreign policy will be unashamedly nationalist’ということで、つまり、大富豪には減税をし、外交政策では臆面もなくナショナリストになる、というのです。

そもそもトランプ氏とは、グローバル・ルールやいろいろの同盟関係は、米国の力に資するというよりはそれを減ずるものと見るa club of Americans、米国人の一派にあり、そこでは多国間主義とはwimps, つまり弱虫の為のものとし、地政学もビジネスと同じで、彼はとにかく交渉で何かを勝ち取りたいと考えていると云うのです。そして、米国は今なお超大国としてあり、自国の地位を十分守れると考えているようで、それはそうだが同盟国を捨て、ロシアのプーチン大統領のような人物と取引する事は、米国の戦略的利益を高めることにはならないだろうとし、ここにダボスに行く習近平主席にチャンスがあると云うのです。

‘冷戦後の秩序’ に対する中国の不満はトランプ氏以前からのものでした。然し、今米大統領となる仁が、これまでの ‘Pax Americana’の幕を下ろそうとしており、しかもトランプ氏の貿易や安全保障政策において‘America first’を前にすると、中国が求めてきた‘New model of international relation’(新たな国際関係)は、もはや欧米が築いてきたwestern liberal orderを覆そうとしているようには見えないというのです。
それどころか中国は国際的統治体制の守護者、guardian of global governance であり、開かれた貿易体制の旗手になるかもしれないというのです。加えて、習主席は気候変動に関するパリ協定を支持し、国際社会とイランとの核開発合意を擁護し、アジアで貿易自由化を進めようとしていると指摘するのです。(注) まさに習近平主席は自由貿易の旗手?って処です。

(注)12月9日、WTOは、日米欧が中国をWTO協定上の[市場経済圏]と認めず、引き続き中国を「非市場経済圏」と認定したのです。これは中国がWTO加盟時の2001年、当初、15年間はダンピング認定で不利な条件を課される「非市場経済国」として扱われることを受け入れたもので、この条項が12月10日に失効したもの。中国は12日、WTO提訴に向けて米欧との2国間協議を始めています。

こうなると、これまで悪役だった中国は、これでは、いい奴という事になる一方で、上述のようなトランプ氏の対中発言は、米中間の合意で数十年間、維持されてきた台湾海峡の平和を覆えそうとしているのは、今やトランプ氏の方だと映る処です。

・融解のグローバル秩序
ではこれからの世界はどうなっていくと見るのか。Stephens氏は、今後の地政学的な勢力図、new geopolitical landscapeとして次のように語るのです。

まず、トランプ氏としては米国、中国、ロシアで世界を統治すればいいと考えているかもしれないとしながらも、これでは3か国の利益が合致するより衝突する方が多いのではと指摘するのです。そして、TPPから米国が離脱すれば、この地域の米国の同盟国を中国との経済的統合に向かわせることになるだろうというのです。 また、トランプ氏はNATOについても関心を置く様子はあまりなく、一方、欧州自身2017年も域内問題で手いっぱいと見るのです。そして、移民問題はポピュリズムを一層勢いづけ、Brexitは政治的エネルギーを消耗させる。更にフランスでは右翼のナショナル・フロントの党首、M.ルペン氏が来春の大統領選で、トランプ氏とEU離脱派の余勢を駆りたがっている状況で、仮にルペン氏が大統領になる事にでもなれば、もはや打つ手はないだろうというのです。

ただこうした状況ながら考え得るシナリオとして、景気回復の足取りが早まり、移民流入の動きが安定し、欧州復活の目が見えてくる展開だというのです。そして、その為にもより重要なことはフランス大統領選で共和党候補のフィヨン元首相が勝ち、ドイツのメルケル首相が4期目を確実にし、欧州協調の独仏エンジンを復活させることだというのですが、聊か楽観的かなとは思うのですが、同意する処です。

・いまそこにある,中国のチャンス?
いずれにせよ、世界の新たなnew designに向けての秩序など存在す余地はなさそうだという事ですが、ただ、中国にはチャンスがあるというのです。
古典的地政学の理論では、既存の大国と新興国の間で、衝突が起きる場合、まずupstart(成り上がり者)の新興国が、不安定な事態を引き起こすことになっているのですが、然し、ダボスに集まるエリートが自画自賛して、互いをたたえ合う、年一度のお祭りで、‘Mr. Xi to appear as the voice for stability’、つまり、習氏が安定の代弁者と見えるとしたら、これこそは皮肉なことと云うのですが。まさに、そこにある不確実性という事でしょうか。


2. 日ロ首脳会談と、会談から透ける ‘迷走する世界’のかたち
 
(1) 日ロ首脳会談

12月15日、安倍晋三首相はプーチン ロシア大統領を自身の故郷、山口県長門市の温泉場に迎え、翌日16日には東京の首相官邸で、日ロ首脳会談を行いました。それは日ロ間に残る戦後処理問題とされる北方4島返還問題、平和条約締結問題について、首相在任中にその具体的道筋を立てておきたい、とするものでした。
こうした鳴り物入りの会談でしたがその結果は、3000億円規模での経済協力について合意すると共に、その具体化の為のspecial system (特別な制度)等、法的基盤づくりを進めることで合意を得たという事でしたが、肝心の平和条約については決意表明に留まり、北方領土についてはにべもないと云った処です。今後、首脳会議を継続し、事案の具体化を進めるという事でしたが、これでは日本側にとっては食い逃げされたのと同じではないか、と大いに不満の残る処です。

因みに、12月18日付英Financial Timesはこの点、Abe risks backlash as Japan and Russia agree Kurils pact.と題し,次のようなコメントを伝えたのです。
― Russia and Japan have agreed to negotiate a ` special system’ for joint economic activity on the disputed Kuril Islands after a high-profile summit which will have delighted Vladimir Putin but disappointed Shinzo Abe.

つまり、この千島列島に係る今回の合意(Kurils pact)について「プーチンはご満足、安倍はがっかり」と、報じるものでした。因みに、12月23日、プーチン大統領はモスクワで行われた定例記者会見では、1千人を超える記者が集まったと伝えられていますが、4時間に及び、内政、経済、国際問題と幅広い質問に応えていたとされていますが、今回の日ロ首脳会談についての質問は採用されなかった由で、北方領土問題の話題を避けたいプーチン政権の姿勢がにじみ出ていた記者会見だったと、伝えられています。(日経12月24日)

序でながら冒頭リフアーしたタイムズ誌の「Person of the Year, 2016」発表に続き、12月14日、米経済誌「フォーブス」は、恒例の「The World Most Powerful People」(世界で最も影響力を持つ人物)を発表しましたが、そのN0.1にプーチン ロシア大統領が4年連続、リストされたのです。プーチン大統領をN0.1とする理由として、同誌が挙げた理由が「自国の影響力を地球のほぼ全域に行使している事。そして母国からシリア、米大統領選まで、自分の望むものを手に入れ続けている」ということでしたが、今回の日ロ首脳会談に照らすとき、さもありなんと思いを深くする処です

さて、翻ってプーチン氏は安倍首相に対して米国から独立した外交をと、迫っているとされています。というのもウクライナ問題で日本を含めた先進7か国(G7)は、ロシアに対して経済制裁を科してきていますが、近時の日本のロシア接近はG7の約束を逸脱するものと欧州勢は不満を託つ処となっており、プーチンとしては、この際は米欧と日本を分断し、制裁の緩和を引き出したいと思っている筈だと見られています。

勿論、日本としては安全保障で米国の抑止力に頼らざるを得ず、日米同盟を外交の基軸に据える点でそう簡単にプーチンのシナリオに乗るわけにはいかない筈です。と云うよりも、トランプ旋風で世界は再び激しく動き出している今を考えるとき、今回のような領土返還をテーマとする首脳会談の在り姿は、もはや時機を逸したものではと思うのです。と同時に、対ロ政策については改めて「世界の中の日ロ関係」の視点が、より求められる環境になってきていると痛感するのです

(2)2017年, ‘迷走する世界’ の幕開け?

ところで、トランプ氏の米大統領就任で世界の形がどうなっていくと見るか、先のStephensコメント(P.8)にも示唆ある処ですが、これが今次の日ロ首脳会談の舞台裏に秘められている対ロ経済制裁とそれを巡るG7各国の関係を見ることで、相応の構図が描けるというものです。(カナダもメンバーですが敢えてここで触れません)

まず英国ですが、彼らは中国とは積極的な経済交流(AIIBへの参加等)を進めていますが、プーチン・ロシアに対しては強硬姿勢を崩してはいませんが、いまやBREXIT問題への対応で手一杯の状況にあり、他メンバーのフランス、ドイツ、そしてイタリアに至っては政権の交代、右翼勢力の拡大等、国内政治は不透明感を強め、今や個別事情に翻弄され、いずれも‘制裁’をフォローできる体制にはなく共同歩調はとりにくい状況にある処です。

では、トランプ・アメリカはどうか。トランプ次期大統領はオバマ大統領とは180度相違し、プーチン氏を力ある大統領と評価する一方、かつて旧ソ連との対峙として米国が主導した欧州安全保障の枠組み、NATOについて、その意味を認めようともせず、G7の対ロ制裁にもあまり意味を認めていないと、しています。 また、中国に対しては前述の通りで、極めて批判的な姿勢にあり、今や対決姿勢とも映る処ですが、21日、トランプ氏はホワイトハウス内に貿易政策を統括する「国家通商会議」の設置を決定していますが、そのトップに対中強硬派のUCアーバイン校のピーター・ナバロ氏を起用すると公表しています。

かくして対ロ制裁で一枚岩であった筈のG7でしたが、いまやその求心力の所在が見えなくなってきており、G7崩壊の可能性すら感じさせる処です。尚、余談ながらプーチン大統領はトランプ氏への接近を始める一方、トランプ氏と対立色を深める中国とも市場として改めて秋波を送る状況にあり、中露関係の再生が進んできている処です。

こうした環境変化を踏まえ2017年以降の世界の様相を展望すると、米国が主役を務めることには変わりはないでしょうが、G7の連携体制は弱体化する中で、その役まわりと対応は大きく変わっていくことでしょう。とりわけ、America first を唱えるトランプ・アメリカは、選択の基準を‘国益’に置いて行動することが想定される処、具体的にはこれまで民主的とされてきた統合化を通じて世界秩序の確保を目指す多国間協議の枠組みを廃し、二国間協議を旨とするとしています。この姿勢の変更は、改めて‘国家’を意識させると同時に、国家の内向き姿勢をも高める処です。ひょっとして、北朝鮮問題など、これまで曲がりなりにも6か国協議の場を通じて討議されてきていますが、今後、米国が北朝鮮と直接交渉に向う可能性すら想定できる処ですが、こうした二国間で物事が決まっていくとなると、物事がどこで、どのように決まっていく事となるのか、見えなくなっていく事が極めて問題と思料するのです。

こうした環境にロシア・プーチン氏と中国の習近平氏が加わってくる事で、3トップが主導する世界へとその‘かたち’が変わっていくと見るのですが、トランプ氏の目指す米国第一主義と夫々の政策主張とのギャップを、いかに調整していけるか、そこではオイル、原発、金融、更には海洋開発問題等、実経済要素が絡んでくる事で、国家間の利害対立が鮮明となっていく事が想定され、世界は暫し迷走の体をなす処と思料するのです。とすれば2017年は、こうした迷走する世界の幕開けの年と、云えそうです。もとより、そこではこれまでのようなリニアーな発想だけでは御しきれない事態の進行を意味するというものです。

・日本の出番
さて、こうした環境変化の‘はざま’にあって世界第3位の経済力を擁する日本はどうすべきかが改めて問われる処です。日本はこれまで自由貿易、グローバル化を規範として成長し、今後ともその規範を以って進む運命にあります。それだけに常に世界の中の日本を自覚し、多角的な経済関係の維持に腐心、努力していく事が不可避となる処です。そして、この姿こそが迷走する世界にあって日本に出番を齎す処と思料するのです。それは、想定される新たな国際環境にあって、これまでの「戦後日本的」とされてきた常識が根底から覆る可能性があることをしっかり頭に置きながら、自身のあるべき姿を再定義していくこと、そしてアメリカとの同盟関係のありうべき方向を再確認し、また世界の中の日ロ関係、日中関係を再定義しつつ、よりinclusiveな展開を目指すべしと云うことです。
さて、安倍首相は、かかる環境変化をどのように受け止め、どのように日本を運営していこうとするのか、政権の長期化可能性が見えてきただけに、彼の行動には注目の集まる処です。


おわりに:安倍首相、ハワイ・アリゾナ記念館 慰霊訪問

さて、安倍首相は12月26~28日、ハワイを訪問。任期最後となるオバマ大統領と最後の首脳会談を行い、併せてアリゾナ記念館を共に訪れ、真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊する事となっています。勿論、現職の首相の真珠湾訪問は初めての事です。
既承の通り今年5月、伊勢志摩サミットを機会にオバマ氏が現職の米大統領として被爆地の一つ、広島を訪問していますが、日米首脳が太平洋戦争の象徴的な場所を訪れ合い、戦後、両国は強固な同盟を築いたと内外に訴えることになると、各種メデイアは、これで日米同盟関係は新たな段階を迎えるもの、と報じています。

さて次なる関心は安倍首相が現地で、どのようなメッセージを発するかです。彼は戦後70年の2015年春、米議会の上下両院合同会議で行った演説では、真珠湾に触れ「深い悔悟」を表明、戦死者には「とこしえの哀悼をささげる」とのべ、同時に日米和解を訴え、米側から一定の理解を得たと評されていましたが、今回もかかる分脈で日米の和解と世界平和と安定に貢献していく旨を語る事でしょう。

トランプ氏は大統領選挙戦のさなか、そのオバマ大統領の広島訪問について色々な角度から批判していましたが、その点では、今回の安倍首相の真珠湾訪問は、トランプ新政権をにらんだ動きでもあるとも云う事でしょう。ともあれ次期政権との関係を円滑に進めるうえからも、訪問は大事な意味を持つ処です。勿論、米国民にはなおまだわだかまりを抱く向きはあります。が、今次の相互訪問は真の友好を確認する良い機会と思料するのです。

ポピュリズムの旋風が世界的に巻き起る中、政治がうまく進まない事を外国のせいにする風潮が目立ってきている、こうした時期に、かつての悲惨な戦いを多くの人が思い起こし、なぜそうした事態に至ってしまったのか、振り返る事は有意義なことと思料するので す。そして日本がその発信源となれれば、国際政治への大きな貢献にもなるものと思いを強くする処です。

さて、2016年は、世界に大きな変化を齎した年でした。来る2017年が、前述、‘迷走する世界の幕開け’ともされる中、新たな可能性を齎す年であらんことを祈念し、読者の皆さんと共に良き新年を迎えたいと思います。 以上。

Merry Christmas and A Happy New Year !
posted by 林川眞善 at 09:17| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする