2018年01月27日

2018年2月号  習近平中国の台頭と、レジーム変転の中の日中関係 - 林川眞善

はじめに:Trump’s Abominable Snow Job と習近平中国の台頭 

トランプ米大統領はこの1月21日で政権運営,2年目に入りました。さてトランプ政治の1年とは何だったのか。選挙戦で見せつけたあの暴言虚言、それは選挙に勝つ為の方便であり、政権に就けば現実志向になるとよく耳にしたものでした。然し、こうした楽観論は当て外れ。威圧的な政治手法を改める兆しのないまま、America first を以って進める内向きで排他的な政策は、米国民はもとより世界の国々をも右往左往させ、これが齎した重大な事は、これまでの「リベラルな国際秩序」を揺るがし始めた事でした。

America first の下、決定されたTPPやパリ協定からの離脱は,要はアメリカは自国のInterestに見合わない(cost performance)国際的関わりからは身を引く、retreatするというものですが、このAmerican retreatが世界秩序を担保してきた既存システムを壊し出したと云う事です。昨年12月18日、トランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」にしても、本来なら世界秩序の指針たるべき文書とされるものですが、米国第一を繰り返すにとどまるだけのもので、それは「リベラルな国際秩序」の守護者の役割からの降板を映す、「America first」対応の‘極み’と映るものでした。勿論、米国は軍事力だけで世界をleadしてきたわけではありません。人権尊重、民主主義、市場経済等、普遍的価値こそが米国の支配力の源泉だった筈です。然しトランプ氏はそれを手放していったという事で米国の国際的地位の低下を加速させる処です。

つまり2017年は、米国そして世界にとって 米論壇が云うTrump’s Abominable Snow Job (忌まわしいほどにはったりの政治)に振り回された1年であり、トランプ氏の姿はオバマ前大統領を全否定する、言うなれば‘壊し屋’のそれで終始した1年であり、故に米国政治における最大の不確定要素が大統領自身との認識が定着した極めて異常な1年だったと云えそうです。

さて、迎えた新年2018年は、世界的に株式市場への資金流入が加速する様相を以ってスタートを切りました。年初4日のNY市場はダウ平均で2万5000ドル台にのせ、東京市場でも日経平均は連日、昨年来高値を更新しています。これが、米国で大型減税法案の成立(2017/12/22)もあって世界景気が一段と拡大するとの見方が株価をあと押ししていると見られる処です。因みに米国景気の回復はいまや9年にも及ぶ処です。

然し、世界の安全保障環境に目をやると、依然トランプ氏と北朝鮮金委員長との間での挑発合戦は衰えることはなく、1月9日、2年ぶり再開された南北朝鮮閣僚級会談は最大の核開発問題には及ぶこともなく、北への圧力強化で連携を組む日米韓3か国の枠組みが揺らぐのではとの懸念も出るなど、危機感の消えることはありません。 一方、国内では大幅減税が決まったとはいえ、減税による財政赤字の拡大が再び云々され出すなか、大企業や高所得層の税負担は軽減なるものの、オバマケアーの一部廃止等で所得再分配は後退したことから、米世論調査では、今次減税に賛成の有権者は3割に過ぎない状況が伝えられています。そこでトランプ氏は、その対抗として24日、インフラ計画の具体案を30日の年頭教書で言及する旨を明らかにする処です。
そして、ダボス会議出席のため滞在中のスイスで25 日、TPP復帰の可能性を語っていますが、これが国内のTPP復帰を期待する業界の声に応えんとする国内向けactionと云え、要は、秋の中間選挙をにらんだ変心ともされる処です。いずれにせよトランプ氏の行動様式からは、有権者目当ての人気取りで、益々内向きになっていくものと危惧される処です。
   
・習近平中国の台頭
さて、そうした米国の内向き姿勢が、世界の統治システムに構造的不確実さを齎す中、近時世界が注目するのが‘習近平中国’の台頭です。その中国について12月26日付日経社説は、時代遅れになりがちな中国認識に、以下のように警鐘を鳴らしています。
「世界の人々にとって刻々と変化を遂げる中国を等身大で捉えるのは大変な作業である。ある人は10年前に住んだ経験から、今の中国を語る。また、ある人は5年前に出張した時の見分から中国の現状を分析する。残念ながらいずれも今の中国の実状を捉えることはできない。中国全土に伸びる高速鉄道網や地方都市に広がる地下鉄網は10年前になかった。誰もがスマートフォーンを持ちキャシュレスで生活する「スマホ経済」は5年前には影も形もなかった。・・・」と。確かに2005年頃までは中国のGDPは日本の約半分しかなく、それが2010年には追い抜かれ今は日本の3倍近くとなっています。近く米国すら追い越そうと云われる状況にあって議論の前提が明らかに変わっているという事ですから、昔ながらの感覚で中国に接することは‘危険さ’すら呼び込むことになる、と云うものです。

年明けの1月2日、国際政治学者、Ian Bremmer氏が主宰するユーラシア・グループが発表した2018年世界の「10大リスク」では中国を第1位としていましたが、それは存在感の低下する米国の間隙を突くように台頭する中国の影響力の拡大が齎すリスクを意味するものでした。
その要因として、Bremmer氏は、一つは習近平国家主席が昨年10月の共産党大会で権力基盤を強化し、毛沢東・トウ小平(ドンシャオピン)以来とも言われる近代中国で最も強力な指導者になった事。二つに中国が経済・軍事両面で国力を増している事、そして、米トランプ政権の「米国第一主義」により、中国が世界で重要な役割を果たす機会が増えてきた事, を挙げるのです。

そして、こうした変化を受けて「世界は2018年、中国に注目し、中国と欧米のモデルを比較し、欧米にとってはともかく、他の地域の大多数の国に対しては、中国モデルはもっともらしい、欧米に代わる選択肢を提供することになる処、習氏が選択肢を進んで提供する準備ができていること(注)が最大の地政学リスクだ」(日経2018/1/19)とBremmer氏は断じるのです。もとよりこの変化こそは「戦後レジームの変転」を語る処と云うものです。[(注)昨年の共産党大会での習氏発言をリフアーしたものと思われる]

ではそうした習中国に日本はどのように向き合っていこうとしているのか。今年は日中平和友好条約締結(1978/8/12)40周年を迎えます。昨年来、両国の政界,財界幹部の交流も進み出し、日中関係改善への環境も醸成されつつあるやに見受けられる処、二階堂自民党幹事長は12月訪中時、「互恵を超え、未来を共に創る‘共創‘の関係に深化させて行きたい」(日経12/28)と発言しています。勿論、日米同盟を基軸に中国との力関係のバランスを図ってきた日本の安全保障戦略にも影響する処、現実の政治はどう動こうとしているのか、気になる処です。

そこで、本年最初の本論考では「中国」を取り挙げ、以下を枠組として論述する事とします。
まず第1章では前述の通り、「10大リスク」のトップに「中国」が挙げられていますが、その
背景確認の意味も含め、米論壇、project syndicateに掲載あった前世銀のChief economist, Mr.
Justin Yifu Linの12月1日付論考` The Economics of China’s New Era‘ を下敷に、中国経済の
現状と今後の行くへについて考察し、併せて中国の台頭でレジームの変転の進む中、日中関係
の合理的な在り方について考察します。(注:世銀のChief economistには元米財務長官、L.サマーズ
氏、ノーベル経済賞のJ.ステイグリッツ氏ら有力economistが務めている.) 
次に、第2章では、中国経済の対外拡張路線が齎している問題について、二つのテーマ、その一
つは進出著しいアジア経済での中国化現象について、もう一つは今話題のThe new shape of
Chinese Influenceとされ、「Sharp power」(The Economist、2017/12/6)と称される、中国政府
筋による経済活動に係る一種諜報活動まがいの行動について、その現状を把握しその対抗措置
について考察します。そして「おわりに」では、5年を終えた安倍政権の政策運営について改め
て論評し、新年最初の論考としたいと思います。(2018/1/26)


                  目 次

第1章 習近平主席と中国経済       -----------P.4

1. The Economics of China’s New Era
― 習氏が目指す中国経済のかたち

(1)中国経済の成長のかたち
 ・習氏が目指す「復興」に必要なこと
(2) 日本経済の成長様式をフォローする? 中国
           
2.日中関係再考 -戦後レジームの変転する中で
 ・習中国との関係を考える基本軸

第2章 アジア経済の中国化と、新たな中国脅威 --------P.8

1. 中国化が進むアジア経済
           
2.Sharp power - 新たな中国脅威 
             -China is manipulating debate in Western democracies
 ・世界ルールへの中国の不満
 ・三つの対抗措置

おわりに:年初、気がかりな二題を思う -------------P..11
          
 ・改めて問う成長持続への改革
 ・いま「不愉快」転じて「不気味」強まる

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第1章 習近平主席と中国経済

1. ‘The Economics of China‘s New Era’
   -習氏の目指す経済のかたち

前世銀Chief Economist、J. Y. Lin氏の中国経済の実情を伝える論考 ‘The Economics of China‘s New Era’(2017/12/1)は色々の意味で興味深いものですが、そのタイトルにあるNew eraとは、昨年10月19日、中国共産党大会での冒頭、習近平主席が`China had crossed the threshold into a new era.’ と謳ったことに絡めたものです。

習主席はその際「現代化した偉大な社会主義国家」(great modern social country)の建設を目指すとし、具体的には建国100年の2049年までに経済、軍事、文化のあらゆる面で世界の頂きに立つ「社会主義強国」を築くと、宣言しています。そして「中国は完全な社会主義には程遠い。だから資本主義の要素も大胆に採り入れて経済を発展させなければならない。共産党の指導さえ徹底していれば社会主義からそれることはない」(日経2017/10/20)とするのでしたが、要は、党主導の「中国流資本主義」の深化を目指すものと思料する処です。

さてLin氏は当該論考で,こうした経済発展をprosperous, strong, democratic, culturally advanced, harmonious and beautiful by mid-century, led by an empowered CPC but open to the worldをキーワードとした中国社会の再興を目指すものと定義し、そうした新たな時代に入った中国経済の可能性を分析するのです。暫し、同氏論考を擁し、改めてその可能性を見て行きたいと思います。もとよりそれは上述ブレマー氏指摘の検証にも繋がる処です。

(1)中国経済の成長のかたち
2017年の中国経済は、実質GDPで6.9%増、成長率が前年を上回るのは7年ぶりで、その牽引役は堅調な個人消費ですが、輸出も伸び、焦点の対米貿易黒字はトランプ大統領の批判を受けつつも過去最高を記録する処です。
さて、1979年以来の38年間、中国経済は相応の成長(平均9.6%)を結果してきていますが、個人所得面では先進国との開きは極めて大きく、その原因は労働生産性の低さにある処、技術革新、産業の高度化に向けて今日に至ってきたとし、その結果、高速鉄道や再生エネルギー等の分野ではglobal frontier、つまり世界一流の立場になったと評価します。更にe-commerce, mobile deviceなどの成長も期待される処、労働者、とりわけ技術者も不足はないとするのです。
更に、これまで問題とされてきた国有企業(SOE: State-owned enterprise)については、経営の合理化が進み、競争力ある、持続可能なentityに転換し得た評価するのです。

残る課題は需給バランスの是正にある処、これがsupply-side innovation政策とdemand-side efforts を促し、これまでの投資・輸出主導型成長から消費主導型へと転換してきたとLin氏は指摘するのです。(注)

(注)確かに習政府は消費拡大を重要視し、国家目標としています。が、リン氏のrhetoricは正確
さを欠く処、過去30年間(1987~2016年)の中国GDP成長への投資と消費の貢献度を見ると,
投資が消費を上回っているのが20回と3分の2は消費に負うものでした。つまりもともと消費
主導だった経済が深刻な投資依存に陥り、足元で再び消費主導に戻ってきというのが正しい理解。

勿論その為には、更なる生産性の向上、雇用の創出、賃金水準の引き上げ、中間層の支援、等々が必要となる処、その際は、透明性の確保、統治システムの確立、更には言論の自由を如何に担保していくかに焦点は当てられてきているというのです。が、俄かには納得し難い処です。

・習氏が目指す「復興」に必要なこと
更に先進諸国、とりわけ日本経済に照らしながら中国経済の現状を確認するのです。 つまり、バブル後の26年間、日本を始めとする先進諸国は低成長に甘んじてきたのが、そのいずれもが、とりわけ日本を意識しつつ、不可避とされる構造改革に失敗してきたことにある事、そしてそれは、政治家は短期的な事象に目が奪われ、難しい競争力の堅持、強化問題に取り組むことを二の次としてきたためと指摘するのです。そして、これが一見安定しているやに見られる点について、political stabilityに負うものとの見方はあるが、それは必ずしも合理的とはいえず、つまり活力に欠けたままに続く経済回復が意味することは、失業の増大であり、不平等への不満の高まりで、国民は従って変化を期待することになると云うのです。そして中国については、その辺を十分理解しており、この点forward- looking policies を以って臨むべきだが、習氏にはそれがある(後述)と‘ヨイショ‘するのです。

そしてその際は、米国との関係にも配慮しつつ、国際的な枠組みに積極的に参加していく事が不可避とも指摘するのです。つまり米国はretreat、つまり国際的な指導役から降りようとしているが今尚、唯一世界最大の経済大国であり、中国はその最も重要なeconomic partnerとしてある処、習近平氏が描く`great rejuvenation‘ (中国の復興)の達成を目指すにしても、その際は米中経済の相互補完性を高め、貿易摩擦(注)を含む両国間の摩擦を避ける努力が不可欠と指摘するのです。
    (注)1月12日,中国税関総署が発表した2017年の中国の対米貿易黒字は2758億ドル、前年比
10%増です。中国の貿易黒字全体の内、対米は65%を占める。貿易不均衡を問題視するトラン
プ大統領批判を意識して資源を中心に輸入拡大に努めたが、好調な米景気を受けた輸出拡大が
それを打ち消したというもの。通商を巡る米中対立が激しくなるのではと懸念呼ぶ指処です。

要は、経済的のみならず政治的要因も含め、とにかく相互有為な貿易関係を蝕むようなことはすべきではないという事でしょうが、さてトランプ氏にはどう伝わるのでしょうか。

(2) 日本経済の成長様式をフォローする? 中国
さて、中国は2030年までには名目で世界一の経済大国となる事が予想されていますが、その成長こそはglobal governance に大きな影響を齎すことになる処です。現下の国際秩序は戦後、西欧先進国によって築かれ、それが世界の平和と安定に資してきた処、その枠組みがneoliberalと云われたWashington consensusをベースとする点で、全世界の為と云うよりは先進国指向にあった事で、新興国は先進国流の開発様式を以っては成長することはなかったとして、予てステイグリッツ氏(注)等、世銀エコノミストが指摘してきたと同様、Lin氏も新興国は先進国が進める開発様式に捉われない独自の発想が必要と、云うのです。

(注)J.ステイグリッツ著「ラーニング・ソサイエテイー生産性を上昇させる社会」(原題:
Leading Society;東洋経済新報社、2017年9月)では「ワシントン・コンセンサス」に縛られ
た途上国開発の政策の在り方を厳しく批判する処です。

因みに戦後、多くの国々はWashington consensusにフォローし、自由で制約のない市場、政府
の最善の策は何もしないこととしてきたが殆どは失敗。一方日本は、このアドバイスにフォロー
する形で、政府主導型の産業調整、民営化の推進、規制緩和そして貿易の自由化へと政策を選択
してきたが、その間、国内事情に即して労働集約的、かつ小規模な伝統産業を輸入代替産業とし
て強化してきたことで成功してきたとし、その点で、中国もその様式を取り入れ、これまでの計
画経済から市場経済に移行してきたが、その結果として今があると評価するのです。
序で乍ら、ヴェトナム、カンボデイアも然り、東欧地域で云えばbest economic performerはポ
ーランド、ソルベニア、ウズベキスタン等々、かつてのソ連邦国だとも指摘するのです。

要は、経済開発のパターンは一つだけでなく、何を持つことで何ができるか、当該産業の拡大のために何が求められるのか、その条件を整えていく事であり、実は中国がやってきた事はそうした事だったというのです。そうした経験をベースに国際経済で地歩を固め更に他新興国への支援を図ることにあるとするのです。習近平氏の「一帯一路」構想はまさにユーラシアとアフリカにおけるインフラ開発プロジェクト構想だが、こうした構想主導こそ、習近平叫ぶ処のChinese Dream だというのです。さて、これが世界制覇を目指す独裁者のイメージを呼ぶ処、そこにBremmer氏の指摘する中国リスクが成すところではと思料するのです。

2.日中関係再考 -戦後レジームの変転する中で
福田康夫元総理は雑誌‘文春’新年特集号で、日本としては「中国経済が今後もどんどん大きくなるから仲良くしなければ、と云うような態度で接するべきではない。日中はこれだけ近い距離にあるあるから、経済に限らず、あらゆる面で意思疎通を密にし、お互いに協力し合うのが当たり前と自然に考えるような関係になりたい」と語るのです。そして、この際、銘記しおくべきは国民が不安な状況を解消するのは、軍事力ではない、外交の役割だ、とも強調するのです。

ではその可能性は、です。本稿冒頭でも触れた通り昨年暮、自民党二階俊博、公明党井上義久、両党幹事長の中国訪問時、習近平主席との会談席上、日中両首脳の相互往来の実現を要請していますが、実は日中首脳の相互訪問については、以下の通り頻繁に話しあわれてきています。
まず、昨年5月29日来日した楊氏と安倍首相、谷内正太郎国家安全保障局長との会談時、日本側から18年に首脳の相互訪問を実現したい意向を伝え、11月11にはマニラで開かれたAPEC首脳会議を機会に安倍首相は習近平主席と会談、「互いに日中関係を前進させていく新しいスタートとする」ことを約したと伝えられています.(日経11 月14日) 一方この間の6月5日、安倍首相は東京で開かれた国際交流会議で、中国の「一帯一路」はポテンシャルある構想と評価し、‘協力していきたい’ 旨を明らかにし、積極的な対中理解を示してきています。こうした経過を以って日中友好関係の気運が双方に生まれてきたと観測される処です。1月22日の通常国会開催の初日、安倍首相は施政方針演説で、今年中の訪中の用意がある事、「中国とも協力して増大するアジアのインフラ需要に応えていく」と、再び日中関係強化への意気込みを明言しています。

・習中国との関係を考える基本軸
勿論、問題の所在は周知の通りで、中国の経済と政治が一体化している点をどうマネージしていくかにある処です。一帯一路への協力にしても民間ビジネスマターとしてだけでは割り切れないリスクがあり、どこまでこれを切り離し対応できるかにある処です。習氏としては中国主導の舞台に日本が参加する構図を描いているとも言われる処、日本政府はとにかく当該案件については案件ごと判断し取り組む方針としていますが、その機会を創造的日中関係の構築に資する形に仕向けうるか、そう楽観し得ることではないものと思料するのです。それだけに、この際は
日中関係の改善・進化の視点に立ちつつも、二つの点でそのスタンスを明確にしておくことが肝要ではと思料するのです。

つまり我々は法の支配や個人の自由等、いわゆる自由民主主義を信奉する立場にあり、国際的なルールを守ることを前提とする処、中国はイデオロギー上、手ごわい対抗相手である事、そして中国自身もそう認識している事を、肝に銘じておくことが、まず肝要と思料するのです。そしてその為にも、習氏率いる中国と極端に敵対することは避け(前出:P.6. Forward-looking police)、技術的にも経済的にも優位を保っていくことを、心掛けていくべきと思料するのです。
加えて、習氏は「中国の偉大な復興」を掲げています。我々にも復興は必要です。然し彼はそれを独裁政治の強化を通じて実現せんとしていますが、思うに独裁政治を指向しても何も解決することにはなりません。が、米国のretreatが進む中、代わって社会主義市場経済を標榜する中国が台頭していく事は、まさに「戦後世界のレジーム変転」を語る処、この際はこの新たな事態を理解し(P.3)、それに耐えうる日本の政策、国民世論の柔軟性を高めることが何よりも必要であり、日中の連携強化もその枠組みを以って考えられていくべきではと思料するのです。


第2章 アジア経済の中国化と、新たな中国脅威

1. 中国化が進むアジア経済

処で上述、中国経済の成長は対外経済関係の拡大を促す処、中でもアジアそして日本に及ぼす経済波及効果に今、斯界の注目が集まる処です。つまり、域内経済の「中国化」の加速という事ですが、これまで米国依存だったアジアの経済構造が大きな転換期を迎えているというものですが、1月6日付日経記事はその現状を示唆的に分析し、かつ警鐘を鳴らす処です。

同記事は、アジア諸国にとって永らく輸出先のトップは米国だったがリーマン後、2010年には対中輸出が米国向けを逆転、16年には1430億ドルと米国向けを9%も上回ったとし、日本だけで見ても、昨年11月までを累計した対中輸出は13兆3842億円とこれまでのピークだった14年の実績を上回り最高を更新していると指摘します。そして、そこで引用されている日本経済研究センターの試算では、それは対中貿易の勢いが続いた場合アジアにおける米中の影響はどのように変化するかを測るものですが、「2030年に中国の東南アジアや日本への経済波及効果は15年の1.8倍となり、米国より4 割も大きくなる」との由で、中国が米国を大きく引き離していく姿が浮かんでくる処です。

勿論、この逆転現象が問題と云うことではありません。つまり、中国化のお陰でアジア関係国は相応の恩恵を受ける処、人件費増が進む中国においては省力化投資の潜在需要は日本にとっては資本財の出番が増えることが期待され、又、中国進出の日本企業の現地子会社の利益として国内に還流し、日本での賃金や投資に回る可能性も指摘されるのです。

問題は、前述(P.7 「日中関係再考」)指摘したように中国は経済と政治が一体化しているという点です。中国経済が変調をきたした場合、域内に及ぼす影響も大きくなろうという事です。これが大きなリスクとしてあるのは、経済力を外交の武器にすることを厭わない中国の姿勢です。 加えて、アジア諸国と中国とのtradeの拡大が、近隣諸国の中国への求心力を強める中で、米国の影響力の低下で民主主義を促す力が低下する恐れが強まる事です。その点では各国は中国以外との経済の結びつきを更に強めていく必要がある処、日本こそは、それを主導しうる立場にあるものと思料するのです。まさにトランプのギフトへの取り組みです。

2. Sharp power - 新たな中国脅威 

かくして中国との経済関係が深まる中、彼らの個々の行動様式に今、国際的に脅威と映る問題が指摘されだしています。state capitalism と称される中国経済の常として、陰に陽に政府のビジネスへの介入が云々される処ですが、近時のそれは、自国、中国の方針を飲ませようと強引な手段に出たり、海外の世論を操作せんと積極的に行動するようになってきており、欧米ではこうした中国の動きに如何に対応していくべきか、が問題となってきていると伝えられています。
米ワシントン在のシンクタンク、National Endowment for Democracy (NED)(全米民主主義基金)は、中国によるこうした動きを、ソフトパワーに比肩する新造語で「シャープパワー (Sharp power)」と称し、その脅威を指摘するのですが、まさに新たな中国リスクという処です。
12月16日付、The Economist誌は、近時活発化するシャープパワーを映す事案(注)に照らし[Sharpe Power – China is manipulating debate in Western democracies ] と題する巻頭論考を以って欧米諸国に、このシャープパワーへの対抗措置を取るべきと警鐘を鳴らすのです。

(注)12月5日、オーストラリア政府は、中国によるオーストラリアの政界、大学等への介入疑惑
が発生、外国によるこうした取り組みに対処するべく新法案を提出。12日にはオーストラリアの
国会議員が中国から資金を受け取り、中国に肩入れするような発言が起こった由で、同議員は辞職。
英国やニュージランドでも同様の事件があり、ドイツでは10日、中国がカネを使ってドイツの政
治家、官僚を取り込むという工作活動が露見、又、13日には米議会でも中国の新たな影響力につ
いて公聴会が開かれたとの由。

とは言え、いまや中国はグローバル経済に深く組み込まれている点で、単に当事者間だけの問題としては律しえず、また交渉で事態を打開できる政治的手腕を持つ国際的指導者を欠く現状においては、対応措置をと云っても実状は窮する処と思料されるというものです。その点、エコノミスト誌はまず、シャープパワーとその仕組みを理解しなければならないとして、そのパワーの現実を以下の様に指摘するのです。
「中国は多くの国と同様、ビザや補助金、投資、文化などを通じて自国の利益を追求してきた。だがその行動は最近、威嚇的で幅広い範囲に及びつつある。中国のシャープパワーは、取り入った後に抵抗できなくさせる工作活動、嫌がらせ、圧力の3要素を連動させることで、対象者が自分の行動を自制するよう追い込んでいく、まさにmanipulateする処、究極の狙いは、その目標とする人物が最後には、資金や情報などへのアクセスや影響力を失う事を恐れて、中国側が頼まずとも、自分達にへつらうように転向させていく事だ」と。何か「007」を想起させる処です。

因みに、中国経済の急速な拡大(中国のGDPは11兆ドル、米国の18兆ドルに次ぐ世界第2位、人口では米国の3.2億人を遥かに凌駕する13.8億人)を受ける形で、政治も文化もと、その役割は急速に拡大を増すなか、欧米は中国の圧力に屈しやすくなってきていることが問題と云うのです。
昨年6月EUが中国の人権侵害を批判する採択しようとした際、ギリシャは中国企業が同国のピレウス港への出資を決めた直後だったため、拒否権を発動、採択は見送られていますが、中国経済の規模があまりに大きい為、求められずとも中国の思惑通りに動く企業も少なくないというものです。つまり、今や中国はあらゆる処で世界とつながっていることだということですが、中国企業は国外のさまざまな資源や戦略上重要なインフラ、農地などに投資をし、中国海軍は今や自国遠くからも国力を誇示できる状況にあると指摘するのです。

・世界ルールへの中国の不満
そして最も気がかりなことは、新興大国として国際関係のルールを変えたいとの思いが強いことだとの指摘です。その背景には、そうしたルールは、主に米国と欧州諸国が定めたものであり、事あるごとに欧米諸国は自分たちの行動を正当化するために引き合いに出してくる点で不満があるとするのです。その点では、中国の台頭を確実に平和なものとするためには、欧米諸国は中国に彼らの野心を実現できるような余地を作る必要があるのではと、云うのです。勿論だからと云って中国にやりたい放題を許しては更に危険と強調し、その為の具体的対抗措置を講じることが必要と、三つの措置を示唆するのです。

・三つの対抗措置
その対抗措置とは、中国に負けない「防諜活動の展開」、その為の「法の整備」、そして中国に影響されない「独立したメデイアの確保」とし、これが中国による手の込んだ介入を阻止する最善の策に繋がるというのです。この3つを実行、実現するには中国語が話せて、中国の政界と産業界の繋がりを把握している人材が必要だともいうのです。中国共産党は表現の自由や開かれた議論、市民が独自の思想を持つことを抑えることで支配を固める処、中国のシャープパワーの手口を白日の下にさらし、中国にこびへつらう者を糾弾するだけでも、その威力を大いに鈍らせることになると云うのです。
そして、中国が将来友好的になるだろうと期待して、今の中国の行為を無視していては次の一撃を食らう事になるだけとも云うのです。そこで欧米は自分たちの理念を守り、可能なら各国で協力し合う体制の整備を示唆すスルのです。そして、それは古代ギリシャの歴史家、ツキデイデスにちなんだ「ツキデイデスの罠」、つまり新興大国が既存の大国を脅かすようになると、直接的な軍事的抗争に発展するとされた‘罠’を、回避するための第一歩は、欧米が自らの価値観を生かして、中国のシャープパワーを鈍らせることだと強調するのです。

序でながら、元ハーバード・ケネデイスクール教授のJoseph Nye氏 [クリントン政権(1993~2001)で国防次官補] は1990年、当時のハードパワー(軍事)に対峙するソフトパワーと云う概念を導入した仁ですが、その彼は当時から30年近く経た今、高度情報化の時代にあって今一度、ソフトパワー概念を見直す必要はあるとしながら、シャープパワーへの対抗はopennessに尽きると云うのです。(「Chin’s Soft and Sharp Power」by J. Nye, 2018/1/4)

さて今、第4次情報革命と云われる環境にあって、上述事情に対し日本はどのような認識をもって対応せんとしているのか、創造的日中関係の再構築を目指す安倍政権には、この現実が如何ように映っているものか、やはり気になる処です。


おわりに:年初、気がかりな二題を思う

・改めて問う成長持続への改革
ところで、越年を境に人口減少、高齢化が齎す影響の重大性が、これまで以上に叫ばれだしています。安倍首相は、それを戦後日本にとっての最大の国難だとし、国難克服のためにと「人づくり革命」だ、「生産性革命」だといろいろな「革命」プロジェクトを掲げ、なんとかの一つ覚えよろしく危機感を煽るが如くに叫んでいますが、その姿や、あんぐりさせられる処です。勿論、人口減少と高齢化問題は大問題ですし、国民の理解と支持を得て進められる政策である限り異論のある処ではありません。

然し現下で急速に進むデイジタルテクノロジーが、これまで無縁と思われてきた暮らしやビジネスの隅々にまで入り込む時代が今そこまで来ている現実に照らす時、こうした技術革新の波にうまく対応できるかが、経済や社会の今後を左右する処です。つまり、新技術をうまく生かせば、人口減により市場の縮小や労働力不足が進む中でも、企業の成長や生活の質の向上を実現できることになるのです。言い換えれば、日本の持続的経済にとって人口減少と高齢化は致命的な問題とはならないという事です。つまり生産性の継続的な上昇を可能にするような経済改革を実現する事で日本経済は成長を続けることが出来るのです。それが出来ていないことが問題なのです。問題の所在は明らかなのです。

・いま「不愉快」転じて「不気味」強まる
1月5日付日経「経済教室」にあった東大の御厨貴氏の論考は筆者と思いを同じくする処でした。同氏は2年前、同じこのコラムで当時の不安、自然災害、国際的テロリズム、社会不安を3点セットして「不愉快な時代」の到来と、当時の政権環境について論評していたそうです。同氏はそれを引き合いに出しながら「安倍政権の現状は2年前と変わっていない。安倍首相自身が ‘右’ 的イデオロギーの持ち主だったため各国にみられた‘極右’的要素の強い政治家を生み出すことは無かったが、それが政権内に蓄積されていった結果、これまでタブー視されていた歴史解釈や世界認識が安倍政権下で、どんどん当たり前のことの様になっていった」と、その在り姿に危機感を募らせながら「不愉快」転じてまさに「不気味」な現象が強まっていると警告していたのです。まさに然りと云うものです。

以上
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2017年12月26日

2018年1月号  'America First'と'American Retreat'に揺れた世界、この1年 - 林川眞善

はじめに トランプ現象

今から20年前、米国の代表的哲学者Richard Rorty (1931~2007)が著した「Archieving our Country,- Leftist thought in twentieth century America,1998」は現下のトランプ現象を理解する上で示唆的と云うので、先般、新装の日本語版「アメリカ未完のプロジェクト ー 20世紀アメリカにおける左翼思想」(小澤照彦訳、晃洋書房)を読んでみました。それは3部構成(「アメリカ国家の誇り」、「改良主義左翼の衰退」、「文化左翼」)で、‘現代’アメリカが抱える深い闇(差別、暴動、偏見)をnew left思想からその現実を解析するものでしたが、今日のトランプ現象を予測したかのようで極めて興味深いものでした。

要は、雇用が奪われ、最低賃金も上がらない、ミドルクラスが縮小した社会において、ある日、反エスタブリッシュメントを自負する政治家が現れて、「労働者が報われないのはお金持ちのせいだ、lobbyistのせいだ、政治家、media、intellectualのせいだ」と糾弾する。そして「自分が指導者になったら、それを叩きつぶしてやる」と豪語する。その人物は熱狂を以って迎えられるが、やがてアメリカ社会がそれまで勝ちとってきたマイノリテイや女性の権利が後退するようになる、・・・という趣旨のことを記すものですが、けだし慧眼と云うものです。

ミドルクラスが縮小してくると社会全体としての余裕がなくなってくる為、どうしても排外的となり、国際的な課題に関与するより、自国第一主義のような考え方が出てくると云う事ですが、その面でトランプ現象というのはミドルクラスが縮小したアメリカにおいて生まれるべくして生まれた現象と言え、仮にトランプが当選していなくても、第二、第三のトランプが生まれる素地はあったのではと思うのです。その点では、トランプ現象はアメリカだけに留まらず、ミドルクラスが先細りしつつある先進国に共通してみられる現象と、思料する処です。
そして、先の大統領予備選で自ら社会主義民主党員と名乗って若者の人気を一身に集めた上院議員のBurnie Sanders氏 を想起させるのですが、実はRichard Rortyも自らを、米国に夢としての民主主義を追求する「左翼」と任じる仁でした。因みに彼が日本語版宛てに寄せた2000年1月21日付序文で「・・・自分の関心はアメリカや日本のような民主主義国家に革命的変化を起こす事ではなく、そうした国々の有権者の想像力を捉えて、その票を獲得していく左翼的な社会政策を考案することにある。」と記しているのですが、興味深いところです。


さて、そうした論理を実証するが如くに登場したトランプ米大統領のこの1年は、彼が主張する米国第一主義、America Firstを基本軸に、これまでの米国そして世界と共に創りあげてきた生業を否定する如くに、「迷走する世界」を演出する1年だったと云える処です

そんな折、示唆に富む二つの文献に遭遇したのです。一つは米MIT名誉教授、ジョン・W・ダワー氏の新著「アメリカ 暴力の世紀」(田中利幸訳、岩波書店、2017/11)、もう一つは、阪大名誉教授、猪木武徳氏の論考「歴史から学べるのか、歴史は繰り返すだけなのかー経済学から見たトランプ氏の通商政策」(中央公論、12月号)です。いずれも著名な歴史学者であり、経済学者です。前者は、戦後から今日に至る米国の姿を米国が関与してきた国際事件を通して今日を照射するものであり、後者はトランプ米国の今、そしてその可能性を、経済学的論理を以って問うていくというもので、いずれも示唆に富むものでした。

そこで今回論考では、第1章として、この二つの文献を下敷きとして、トランプ氏が主張するAmerica Firstの1年を総括方レビューすることとし、新年に備えることとしたいと思います。
そして第2章では、先のトランプ大統領アジア歴訪中、日本がinitiateした、そしてトランプ氏も取りあえず同意したとされる「自由で開かれたインド太平洋戦略」、そのproject の可能性を握るのがインドと見られる処、 Foreign Affairs, Nov./Dec. 2017.(P.83~92)が掲載するAlyssa Ayres 氏、Senior Fellow for India and South Asia at the Council on Foreign Relation ,の論文「Will India Start Acting Like a Global Power ? ―New Delhi’s New Role 」はglobal power たらんことを目指すインドの現実の姿を描くもので、それは新年の可能性を占う上で有為の材料と映るものでした。そこでこの際は、その概要を紹介しておきたいと思います。

処で、12月6日、米トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認定すると共に米大使館を現在のテルアビブから移転すことを発表しました。この決定は「米国の国益」だとも発言、再び「アメリカ・フアースト」です。勿論、このトランプ認定にアラブ諸国は猛反発、世界の主要国からも一斉に反対の意見が伝えられる等、中東情勢は緊迫の度を増す処です。そうした新たな問題を抱えたまま、世界は新年を迎えるのですが、では世界経済はいかなる推移を辿ることになるのか。そこで ‘おわりに’ として、NYU Stern School of Business 教授でノーベル経済学賞のMichael Spence氏が米論壇Project Syndicateに投稿したessay、The Global Econmy in 2018, Nov.28にも照らしながら、日本経済のあるべき論に触れ、今年の締めとしたいと思います。
(2017/12/25)

                                      
           目  次
                                             
第1章 この1年、Trump’s America First は何をもたらしたか ---- P.3

1. Trump’s America First
 ・世界の潮流 / ダワー氏VSトランプ氏

2.検証:トランプ通商政策の合理性と、WTO対応 
(1)米中二国間貿易インバランスの是正と 保護主義政策の帰結
 ・保護主義政策の帰結/ Trump’s next trade turget             
(2) 米国の世界覇権からのretreat
     - トランプの「国家安全保障戦略」と日本の対応

第2章 「自由で開かれたインド太平洋戦略」        ------P.7

1.「インド太平洋戦略」構想は、Trump’s gift to Japan

2.世界の「グローバル・パワー」を目指す新生インド
   ― Will India Start Acting Like a Global Power
(1)インド経済とNew Delhi’s New Role
 ・インドの外交姿勢
(2)米印関係の強化
 ・インド経済のグローバル化と安全保障対応

おわりに The Global Economy in 2018、そして日本は ------ P.11
 ・TheGlobal Economy in 2018 /日本経済のこれからを考える

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第1章 この1年、Trump’s America Firstは何をもたらしたか

1. Trump’s America First

・世界の潮流
今年1月米大統領に就任したトランプ氏は「America First」を強調、対外的には「自由貿易によって米国は一方的に損をしてきた。従って米国の手足を縛るような多国間の貿易協定には参加しない」と、保護主義、排外主義を前面に押し出す諸政策を打ち出し今日に至っています。実際、トランプ米国は「TPP」協定からの離脱、環境保護を巡る「パリ協定」からも離脱、そしてUNESCOからの脱退決定、更にはイランとの核合意など多国間協定や合意についても次々と離脱、一対一の力による交渉の枠組みへと米国の位置をシフトさせてきています。

さて、こうした動きに照らしながら世界情勢を振り返る時、この数年、ゆっくりと進行してきた「統合と収斂」の動きが大きく後退し、「分離と発散」への傾向が再び顕著になってきたことに気付くとは、阪大名誉教授の猪木武徳氏の指摘する処です。(中央公論12月号) 昨年、英国が国民投票によってEUからの離脱を決め、スペインではカタルーニア州独立の声が上がるほどに、今次トランプ氏の言動は、まさにそれらを援護射撃するかのように映る処です。文明が「共存の意志」を意味するのであれば、こうした分離・発散の傾向は、文明の進歩とは相反する野蛮への回帰という事になる、とも猪木氏は断じるのです。

・ダワー氏 VSトランプ氏
先月(11月)、ジョン・W・ダワー氏の最近刊「アメリカ 暴力の世紀 ―第二次大戦以降の戦争とテロ」(田中利幸訳、岩波書店)[原題:The Violent American Century—War and Terror since World War Ⅱ, 2017] を手にしました。ダワーと云えば、思い出されるのが1999年のピューリッツア賞受賞作品「敗北を抱きしめて」(Embracing Defeat ― Japan in the Wake of World War Ⅱ )です。これは戦後直後の日本にスポットを当て、日本に民主主義が定着する過程を日米の視点から書かれたものでしたが、今次のそれは、第2次世界大戦の遺物を抱えた世界と歩んできたアメリカの現状、軍事を巡る歴史、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状を描くものものです。そして、今次の日本語版に寄せられた2017年8月5日付序文はトランプ時代を危惧する、短いものでしたが、それだけにトランプ氏の米国大統領としての存在に,一層の ‘危険さ’を感じさせるものでした。因みにダワー氏のトランプ評の一部を紹介しておきましょう。
「・・・多くのアメリカ人と世界の大部分がトランプを不安の目で見ている。彼は国家を指導するにふさわしい知性も気質も備えていない。彼は読書をしない物事の詳細を知ろうとする忍耐力もなく、物事の正確さや真実を尊重することもない。・・・もっとも重要なのは、彼が世界のリーダーとして、「支配」以外にアメリカの将来について明確な展望を何ら持ち合わせていないという、非常に不安な状況にあるという事だ。」( J・ダワー「アメリカ 暴力の世紀」)

さて、こうした二つの論評を前にする時、以前リフアーしたThe Economist,(Nov.11/17)の巻頭言‘Endangered’ でBy putting `America First’ , he makes it weaker, and the world worse off. つまり「米国第一主義」を実践することで、米国を貧しくし、世界を貧しくすることになる、という事態に思いを深くする処です。

ただ、それでも頭をよぎるのは先月NYで会った知人との会話でした。つまり、そうした発想は、NYを中心とした東部、又西部ではカリフォルニアぐらいで、中西部に出かけるとトランプの当選を齎したエスタブリッシュメントへの国民の怒りという草の根の潮流は変わっていないとの指摘でしたが、それは冒頭引用のRortyの文脈に通じる処です。確かにメデイアは共和党の動きとして、2018年の中間選挙に向けて、移民受入れや自由貿易に否定的な「ミニ・トランプ候補」が続々名乗りを上げていると報じています。一方の民主党でも反自由貿易を唱えるサンダース氏の主張が影響力を強めているとも報じています。そして12月12日、長年与党の地盤とされてきたアラバマ州での米上院補選では民主党ジョーンズ候補が僅差ながら25年振り勝利したのです。勿論、現状は未だまだ不透明な要素一杯で、メデイア風に言えば、トランプイズムはアメリカの亀裂をさらに深めている, という事になる処です。とすれば仮にトランプ氏が一期で終わったとして、その後は万事平穏と見るのは楽観的に過ぎると云うものでしょうか。

2. 検証;トランプ通商政策の合理性と、WTO対応

(1) 米中二国間貿易インバランスの是正と保護主義政策の帰結
さて周知の通り、トランプ氏はAmerica Firstの下、選挙戦を通じて中国や日本との貿易収支の赤字が米国の製造業の雇用を奪ってきた, と二国間貿易の均衡化を主張し、先のアジア歴訪の折も同様言動を繰り返し、因みに中国からの輸入については高関税で阻止し、中国との貿易赤字を是正し、米国の製造業の雇用を回復させることが当面の米国の重要な貿易政策としています。

こうしたトランプ氏が主張する「中国からの輸入急増が米国の製造業の雇用を奪った」という点
についてはMIT Autor教授、Dorn教授 他による2014年、更に2016年の学術的検証(注)によ
れば2000年以降、中国からの輸入増が齎した米国経済への影響としては大まかに言って「米国
の製造業雇用者の減少分の内、中国ショックによるのは1割から2割程度」と推定される処です。
が、これら製造業から排除された労働者を他のセクターが十分吸収できなかった点も指摘され
る処です。 [(注)China Syndrome : Local Labor Market offsets and Import Competition in the United
States ,by Autor,Dorn,Hanson,他 (2014) & (2016) ]

そこで、中国に向かって輸入抑制措置を取ったとして中国からの輸入が減少し米中二国間貿易の赤字是正が進んだとしても、だからと云ってマクロ経済的に米国内の雇用が回復することになるかと云うと、そうはなりません。と云うのも一国の対外収支(貿易バランス)は会計学的に成立する恒等式によってマクロ経済的に制約されているからです。つまり、一国の「民間投資と政府の財政赤字分」をフアイナンスするためには結果として同額の「民間貯蓄と経常収支の黒字」を必要とするという事で、この恒等式が教えることは「対外収支は一国全体の貯蓄(S)と投資(I)のバランスに依存する」という事ですから、米国民が消費支出を抑え、民間貯蓄が投資を上回るようにしない限り貿易収支を改善することはできないのです。俗にいうISバランス理論です。

因みに、2000年以降、米国では資産価格の高騰等を背景に消費の増加に加え、財政収支の赤字の悪化等で国内の貯蓄率は低下傾向にあるなか、投資率はやや上昇したことから貯蓄不足が拡大してきており、この点を改善しない限り、保護主義的措置をとっても何らの解決にはならず、ましてやアメリカ国内の基幹産業の復活に繋がる事はないのです。ノーベル経済学賞のJ.Stiglitz氏も、12月5日付のEssay ‘The Globaization of Our Discontent’ で、ISバランス理論を擁してトランプ貿易政策の矛盾を批判する処です。

・保護主義政策の帰結
処でトランプ氏が尊敬すると云われるレーガン元大統領は、まさに80年代初頭、日本の自動
車、鉄鋼等の対米輸出を抑え国内産業を保護する為と輸入制限策を取ったのですが結果は「川
下」産業に高コストを強い、競争力の低下と同時に物価高で低所得者を困難に至らしめた経験が
あるのです。レーガン大統領はこの失敗を認め自由化に向かったのですが、こうした失敗をトラ
ンプ政権が認識しない限り、米国経済はここ数年内には先進国の優等生の地位から滑り落ちる
可能性は否めないというものです。もとより日本経済にとっても極めて重大問題と映る処です。

かくしてトランプ政権の貿易政策、つまりそうしたlogic無視の貿易均衡策、保護主義的措置は結果として、米経済の競争力の低下、委縮、延いては世界経済の停滞すら招く事になりかねないという事で、それはフーバー大統領時代の経験(1930年6月「スムート・ホーリー関税法」)が教える処です。つまり、米経済の構造的改革なくしてはトランプ氏が目指す健全な貿易バランスは期待できず、保護主義政策は経済の停滞をもたらすことになると云うものです。

・Trump’s next trade turget
加えてトランプ政権は、自由貿易の本山ともされるWTOの基本までをも槍玉に挙げだしており、これ又憂慮される処です。12月7日付、Finanncial Times はTrump’s next trade target と題した一大記事を以って、The World Trade Organization faces an identity crisis because of the suspicion of the Trump administration. とし、しかも皮肉なことに、The irony is many countries want to work with the US to deal with China’s modelと、トランプ流の行動様式を取らんとする国が多くなってきているとも指摘していたのです。

実際12月10日からブエノスアイレスで開かれたWTO閣僚会議で、米通商代表部のライトハイザー代表は、WTOルールは途上国に有利になっており、現状を維持することはできないと主張し、「多角的貿易」の文言の削除すら求めたと伝えられています。(日経‣夕、12/12)つまり、米国がWTO体制における被害者だというトランプ氏のこれまでの主張に沿った姿勢を鮮明とするものです。そして当該閣僚会議は米国のWTO批判にかき回され議論が錯綜する中、閣僚宣言の採択ないままに13日閉会となっていますが、大国のリーダーシップ不在の結果で、WTOの漂流する姿が印象付けられるばかりです。さて次の一手は?です。繰り返すに、トランプ貿易政策の最大のリスクは、戦後世界が営々と築いてきたGATT、そしてWTOの多角的かつ自由な貿易体制が崩れ、報復関税の応酬を引き起こしかねないという点にある事です。

(2) 米国の世界覇権からのretreat
   - トランプの「国家安全保障戦略」と日本の対応

ただそれ以上に問題と映る事は、こうした米国の政策行動は、米国の世界経済における覇権からのretreat 、つまり‘後退’の何物でもなく米国のlocal 化すら懸念される処です。そして、かかる事態が中国の世界経済における覇権国家としての台頭を許す処ともなってきていることで、因みに先のAPEC首脳会でも、保護主義という守りに入ったトランプ米国とは対称的に、習近平主席は「通商戦争には勝者なし」としつつ、グローバル化や自由貿易の重要性を強調していましたが、何かドラマでも観ていると云った感じです。
現状多くの識者は、そうした世界経済の化学反応を容認してはいる処ですが、中国が一度も民主主義を経験していないことにも照らし、近代国家としての持続性に聊かの疑問を禁じ得ない(ジャレド・ダイアモンド氏、米UCLA教授、日経11/ 28)と、総括される処です。

さて12月18日、トランプ大統領は「国家安保戦略」を発表しました。本来なら世界秩序の指針たるべきものですが、持論の「米国第一」を繰り返すに留まるもので、米国のretreat宣言とも映る処です。日本の安全保障政策の基軸が日米同盟にある事には変わりないでしょうが、これでは心許ないと云うものです。従って、安倍政権には、自由主義、市場経済を掲げる国々と、幅広く安保ネットワークを構築していく事が求められる処、その点では日米豪印による言うなれば広域安全保障体制の構築を目指す「自由で開かれたインド太平洋戦略」構想(後述)があり、又、12月14日ロンドンで開かれた日英外務・防衛担当閣僚協議では「グローバルな戦略的パートナーシップ」の拡大が謳われ、準同盟国として協力していく事、とりわけ英国のEU離脱に向けた経済関係強化の方針がが合意されており、これを機に、米だけに頼ることのない、幅広い日本としての安全保障網をしっかりと構築していくべきを改めて目指すべきと、思料する処です。


第2章.「自由で開かれたインド太平洋戦略」

1.「インド太平洋戦略」構想は‘Trump’s gift to Japann’

トランプ米国が「国際的な枠組みやルールはアメリカにとっての足かせだ」とする中、日本としてどのようにアメリカを繋ぎとめておくことが出来るかが課題となる処でしょうが、もとよりアメリカと世界は言うなれば一蓮托生の安全保障上、政治、経済上のステークホルダーであり、日本としては不可分の存在である事を強調するほかないものと思料するのです。

その点で、今次トランプ氏のアジア歴訪時、明らかとされた「自由で開かれたインド太平洋戦略」構想は極めて有為なものと云え、つまりは太平洋とインド洋を結ぶ地域全体で法の支配や市場経済を重視する国際秩序の維持を狙いとするものです。実は日本がinitiateした構想と云われていて、これにトランプ米国を巻き込み、同時にオーストラリア、インドをも巻き込み日米豪印4か国が共同して、新たな海洋安全保障協力体制づくりを目指す、まさに不可分を強調する処となるものですが、これこそは前号論考で紹介したTrump’s gift to Japanと映る処です。

11月12日、その四者会合がマニラで行われていますが、そこで出された各国声明文を分析したインドのネルー大のコンダパリ教授によると、日米豪は法の秩序、核不拡散など同戦略に関する主要9項目のうち、ほぼ全項目で一致した由ですが、インドは海洋安保等3項目で言及を避け、意見の相違をうかがわせたと、12月4日付日経は伝えています。そして、同紙はインドは軍拡を通じて独自の「インド洋戦略」を優先し、その延長線上でのみインド太平洋戦略に加わる安保外交を展開していく事になるのではと、指摘するのです。

もとより、内向きを強める米国の影響力が衰えることを睨んでいくとき、日米にオーストラリアとインドなどを加えた枠組みでアジアの安全保障の変化に対処していかんとする方向は高く評価できると云うものですが、そのカギは従って、インドにありと思料される処です。 その点で、
米外交誌Foreign Affairs(Nov./Dec.,2017)が伝えるAlyssa Ayres氏論文 `Will India Start Acting like a Global Power ’ は、その可能性を測る上での格好の資料と思料するのです。そこでその概要を以下に紹介しておきたいと思います。

2. 世界の「グローバル・パワー」を目指す新生インド
 ― Will India Start Acting Like a Global Power

(1)インド経済とNew Delhi’s New Role 
まず、インドは軍事力(軍人の数)で世界第3位、国防予算で世界第5位、そして経済力では世界第7位の民主主義国でありながら、国連安保理のメンバーでも、先進工業国G7のメンバーでもなく、major global playerとは認知されてきていないことに疑問を呈するのです。然し、現在のモデイ政権下ではleading power として世界的にも位置付けされてきているというのです。

その背景にあるのがインド経済の成長です。つまりインド経済はGDPで2兆ドル超。G7メンバーのカナダやイタリアを凌駕する処、米政府は更にインドは2029年までには世界第3位、米中に続く経済大国になると予想しているのです。BRICSにあって、中国がスローダウン、ブラジル、ロシアの経済が縮んで来た今、インドのグローバル経済におけるウエイトは高まり、IMFは2020年までには8%を超えるものとみているというのです。これは1995年の日本、2000年の中国を上回るもので、2016年米コンサル企業KPMGの予測ではインドは今後3年間で経済大国になるとしています。そして、その可能性を担保するのが大規模な若年人口の存在と云うのです。国連見通しでは、インドは2024年には中国を捉え、世界最大の人口大国になる事が予想されており、この若手労働者の成長は2050年まで想定されるというものです。因みに日本の平均年齢は53歳、中国は50、欧州では47歳、一方インドでは37歳と予想されているというのです。

・インドの外交姿勢
ここ数年、こうした成長を背景に自信を深めたインドは単にグローバルな動きに反応するというよりも、積極的に役割を果たしてきているとも指摘するのです。その一つは、国際気候変動問題への対応だと指摘するのです。これまで炭酸ガス排出削減協定に拒否してきたが、それは先進国が排出量の少ない新興国のインドに削減を求めることは不公平だと考えてきたためで、その辺の事情が変わってきた今、2015年のパリの国際気候変動会議ではインドはこれに参加、New Indiaの顔を鮮明としたと云うのです。そしてフランスと共にモデイ首相は新たな国際ソーラーパワー開発機構の拠点をインドへと訴えているのも、当該開発でインドは国際的なリーダーシップを目指さんとするもので、こうした ‘パリ協定への参加はインド外交の新たな姿、従来の姿勢とは違った問題解決型の新たなインドの姿を示すもの’ だと強調するのです。

もとよりインドは西欧への依存を深めながらも、これまで過去数十年に亘り、既存の国際機関を補強する機関の創設に努めてきており、BRICsメンバー国として2012年にはNew Development Bankを創設、既に2016年には初のローンを実施していること、2014年にはBRICSのContingent Reserve Arrangementを確認していますが、これは経済危機の際のIMF支援に代わるものとしていく事を目指とするのです。2017年にはインドは上海協力機構にも参加していますが、これも米国の枠組みとは異なるConference on Interaction and Confidence Building Measures in Asiaを通じて広くアジア諸国との連携を深める処と云うのです。勿論インドは中国主導のAIIBをも支援する立場にあり、今では当該銀行の第2位の出資者となっています。勿論、ニューデリーのトップ・プライオリテイは西欧が主導する伝統的なグローバル機構に留まり、米国のインタレストに見合う形で協力していく事にはあるとも強調するのです。

(2)米印関係の強化
処で、こうしたインドの実状に対するトランプ米大統領の理解が乏しいと、米国に対インド政策の見直しを迫る処です。それはグローバル・ガバナンスたる主要国際機関から外されている不公平な事情を改善し、対等に迎えられるべきであり、インドはそれに応えていく用意、十分にありというのです。
では、米政府はどうか。引き続き米政府はインドとの関係を有力な戦略機会の一つとして見ていることには変わりなく、インドについては歴史的な齟齬を超え、成長市場として、関係の強化を、また中国に対する防波堤として、注目してきたと云うのです。それでも、ジョージW.ブッシュとは2005年の核共同開発について、オバマ政権では防衛、経済、外交協力面で、いろいろ努力してきてはいるが、双方の目標とそれへのアプローチはかみ合う事はなく、例えばロシアのクリミア侵攻問題を巡っての対応の違いがそれだったというのです。

いずれにせよインドとしての戦略上の課題はグローバル・パワーとして認知されることで、これまで長年時間をかけ政策の独立性を維持しながら現在のインド政府のビジョン「世界は一つの家族」へとシフトを図ってきたと云うのです。ただ、独立性と同盟関係という点で、時に双方の理解に齟齬をきたす等、衝突する事情があったものの、昨年、米国は重要防衛パートナーと定義づけた事で、新しい動きが始まりだしたとする処です。

・インド経済のグローバル化と安全保障対応
尚、インドは目下、グローバル化を推進中で、2014年には貿易手続きの簡素化を含む貿易促進に取り組み、近時ではインドが最有力とする情報技術分野についてtop priorityを置き、人材の交流を含め、これには米国でのビザ発給手数料の引き上げ問題はあったが、当該ビジネスの拡大を図ってきており、こうしたグローバル化対応はインド経済の持続的成長に寄与する処、その点では更なる改革を自覚する処と云うのです。尤も、インド独自の政治的枠組みだけではその努力にも限界のある処、国際的ネットワーク、つまりAPEC,OECD,IEAなどを通じて、経済成長と雇用創造を進めていくとも主張する処です。
近時アフリカ資金援助でインドは大いなる貢献を果たしてきており、OECDではインド、ブラジル、中国、インドネシアをKey partnersと称し、経済成長を誘導させんとしており、G7を世界経済の中核としながら、インドを外してはやっていけなくなってきている点、強調する処です。

そして最後に安全保障対応では、人口とUN Peacekeeping(国連平和維持軍) への資金援助額から見て、国連安保理への招聘がないのはunfairと主張するのです。2010年、オバマ当時米大統領はインド議会でインドの為に「組織の再編・拡充」を約していると指摘、従って米国はそれを履行すべきと云うのです。そして欧州のメンバー同様、米国はインドの台頭に応え、世界の秩序再生に努めてほしい、世界のステージは今、our time has come.と主張するのです。


さて、世界のベクトルが今、「分離と発散」ヘとシフトを見せる中、まさにトランプがくれた贈り物としてのこの機会を効果的、戦略的に活かすこととし、日本が主導する形で具体的に進めていくべきで、うまく進めば地域の均衡と安定に役立つ処と思料される処です。ただ、この際は米国の対中姿勢にも関わる処でしょうがそれでも、中国封じ込めが狙いでは安定は覚束ないと思料するのです。と云うよりは中国を引き込んだ「均衡と協調」(注)の体制を作る必要性すら思う処です。 [(注)慶大教授 細谷雄一氏は国際秩序とは、「均衡」「協調」「共同体」という3つの体系の結びつきで形つくられると指摘するのです。(同氏著「国際秩序」中公新書、2013 )]


おわりに The Global Economy in 2018、そして日本は

12月20日、米議会は10年間で1.5兆ドルという巨額な減税法案を可決しました。トランプ
大統領、初の大型公約の実現です。メデイアは総じてこれが景気の起爆剤となると伝えていますが、巨額減税は財政の悪化に繋がる恐れある処、さて潜在成長率の引き上にどこまで結びつくか、その副作用は否めず、中期的効果は今後試されることになると云う処です。因みに今次大型減税法案に賛成票を投じたのは共和党だけ、民主党は「大企業、金持ち優遇だ」として全員が反対に回った由で、そうした議会の様相は分断の広がる「トランプ米国」を象徴する姿と映る処です。

・The Global Economy in 2018,
さて、ノーベル経済学賞の米NYU Stern School of Businessの Michael Spence教授は、米論壇に寄稿した11月28日付エッセイ「The Global Economy in 2018,」で、今次世界経済の現状を鳥瞰した上で、成長のカギは、technology, とりわけdigital technology にあるとして、世界経済の新たな生業について以下(概要)語るのです。

まず2017年の先進国を回顧し、経済成長は加速する一方で、政治的には分裂、分極化が齎す緊張に晒された、対照的な年となったが、長期的にはそうした経済も、政治的、社会的な分離主義の流れに影響を受けていく事になろうというのです。尤も、市場も経済も政治的無秩序さにはゆとりある対応を取ってきており、当面、景気後退のリスクは低いと指摘するのです。但し例外はBREXITを抱えるイギリス、そして連立政権候補の調整に問題を抱えるドイツ、メルケル首相の影響力の低下で、EU統合強化への影響を危惧するのです。一方、斯界が注目するのが金融政策の推移。先進国経済の良好なperformanceに照らし、引き締めに向かう事が予想される処、それは経済の本格回復を示唆するものと積極的に受け止めるのです。
一方アジアについて、中国では習近平主席一強の様相を強めるなか、経済構造のゆがみ是正問題が進み、同時に、消費とイノベーション主導の成長が期待されること、またインドも成長の持続性と構造改革に向かっていると指摘するのです。そしてこれらの経済成長に刺激され、他諸国も地域での発展を目指すことになると予想するのです。

こうしたperspective に立ってSpence氏は、世界経済の成長のカギはtechnology、とりわけdigital technologyで、今後、中国と米国がその中心となって、膨大な情報量を背景に経済と社会の交流の場となる各種プラットフォームを形成し、イノベーション推進、実用化、AI活用等で、新しい機会が創造されていく事で、経済社会は新しい局面に入っていくと見るのです。とりわけ同氏は中国の11月11日のSingles’ Day、独身者の日という名の世界最大のショッピングイベントに注目、中国最有力のon line payment platform 、Alipayでの取り扱いが一秒間でなんと256,000件と驚異的な結果であったこと、これによる金融サービスの拡大とそれが齎す経済活動の広がりに注目するのです。今後、先進国、新興国は共に、そうした機能を擁して、より包摂的成長を目指すことになると指摘するのです。 尚、トランプ米国が進めるretreatの動きの如何で、グローバル経済はserious challengeに向き合う事になると警鐘を鳴らすのです。

・日本経済のこれからを考える
さて、そうしたグローバルなperspectiveの下にあって、では日本経済はどうあるべきか、です。12月8日、安倍政府は再び「生産性革命」と「人づくり革命」を2本柱とする新たな経済政策を発表しました。そして「生産性革命と、人づくり革命を車の両輪として、少子高齢化と云う大きな壁に立ち向かう」と強調するのですが、何とも相変わらずの謳い文句です。12月9日付日経社説は「日本経済の最大の課題は潜在成長力の底上げと、先進国で最悪の財政の立て直しの両立だ。その姿が(新政策には)見えず、勿論「革命」の名に値しない新政策だ」と断じる処です。

あと1年4か月で「平成」の時代が終わります。であれば、この際はポスト平成を期すべく、これまで日本経済が対峙してきた問題を繰り返す事のよう、今後の経済をどう運営していくべきか、考えることが肝要であり、それは未来の日本や企業の望ましい姿をまずは描くことで始まるものと思料するのです。具体的には10年後の日本の姿は人口統計からある程度分かる処です。2025には団塊世代が全員後期高齢者に仲間入りです。これが意味することは医療・介護費用が膨らむのは確実です。一方健康寿命を延ばし、稼げる高齢者を増やせば社会保障費の膨張を抑えることもできると云うものです。財政についても同様です。日本は平成の間だけで国債発行残高は5倍以上に増えています。なのに、利払い費はピークの10兆円台が8兆円台にまで減っています。経済の低迷が皮肉にも財政破たんのタイマーを遅らせたと云うものです。然し、現状の超緩和が続けば金融機関の体力が衰え、金融危機の再来すら危惧される処です。等々、10年後の姿を描き出し、来たる新年に備えていくべきと思うのです。

それにしても、11月28日、経団連榊原会長の出身会社、東レで品質改ざん、品質不正が明らかになっています。その前日、同会長は,東芝をはじめとする企業の不祥事について強く非難していたばかりでした。まさに「東レよ、お前もか!」です。次々に起こる日本の大企業の不正事件、一体どうしたものなのか。かつて「財界の総理」と呼ばれた経団連会長、いまやその面影はいずこと、財界のretreat だけが痛く感じさせられる年の瀬です。
以上
posted by 林川眞善 at 18:37| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2017年11月27日

2017年12月号  トランプ大統領、この秋、アジアを行く  アジアからのretreatを鮮明としたトランプ米国 - 林川眞善

はじめに: トランプ米大統領と日本

この秋、トランプ米大統領は就任後初のアジア5か国を歴訪、その最初の地として11月5日、日本にやってきました。その彼の来日を控え、日米関係に係る資料を整理していた折、ある論文が筆者の目を惹きつけたのです。それは米外交誌Foreign Affairs, Sept/Oct. 2017 ( P.21-27)に載った米コロンビア大、Takako Hikotani氏の論文 ‘Trump’s Gift to Japan’ でした。因みに副題はTime for Tokyo to invest in the Liberal Orderです。(注:Takako Hikotani is Gerald L. Curtis Associate Professor of Modern Japanese Politics and Foreign Policy at Columbia University)

「トランプ米大統領の日本への贈り物」とは、聊か皮肉っぽい表題と映る処ですが、Hikotani氏は、要はグローバル化、多国間協調と云う世界の潮流に背を向け、America First, 自国主義を貫かんとするトランプ大統領の登場は、これまでの国際経済の枠組みを否定する如くに、日本に対しては日米通商面ではその公正を、また、日米安保関係では日本の役割の見直し、強化など、圧力をかけてくることが予想され、又それへの対応を余儀なくされる処としながらも、こうしたトランプ政権の対日姿勢こそは、これまでの対米従属と批判されてきた日本の外交、安全保障政策を、自主的、主体的なものとしていく絶好のチャンスと受け止めるべきで、更には、アジア等、世界への関与後退、つまりretreatこそは経済大国日本のアジアにおける出番となるとし、そうしたトランプ氏の米大統領としての登場は日本にとって歓迎すべき機会だ、まさに‘贈り物’だというのです。そして、そのコンテクストを以って日米関係の今日的実状を分析し、日本の取るべき対外政策の今後について語る、極めて実践的な論文です。

そこで、本稿は今次のトランプ大統領のアジア歴訪のレビューと併せて日本での日米首脳会談が映す日米関係の現実と今後について考察する事を予定するものですが、その考察への備えとして、改めて上掲論文をレビューする事から始めることとしたいと思います。そして先週、Thanksgivingで沸くNYに出かけましたがその際の、安倍首相が叫ぶ‘アベノミクスの再起動’に、覚える所感を合わせ記したい思います。( 2017/11/27)
             
     目  次

第1章 Trump’s Gift to Japan --------- P.2

(1)二つの ‘トランプ取り込み’ 作戦
(2)いま日本に求められる外交戦略

第2章 トランプ米大統領、この秋、アジアを行く 
            --------- P.5
1.トランプ大統領の来日と、日本の今後
(1)日米首脳会談が映す日米関係のリアル
(2)気がかりな事

2.トランプ大統領のアジア5か国歴訪と彼の可能性
(1)トランプ大統領のアジア歴訪と首脳会談総括
(2)トランプ大統領の可能性


おわりに 滞在先のNYで思うこと
--------- P.9
(1)米景気の勢いに触発されて
(2)「改革したふり」せず、真に改革を


        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第1章 Trump’s Gift to Japan
―Time for Tokyo to invest in the Liberal Order

(1)二つの ‘トランプ取り込み’ 作戦
安倍首相とトランプ大統領との相性はよさそうだ。これがまず作戦のベースにあったと云うのです。つまり両者は共に、自国を再生し偉大な国にすると云い、どちらも強いリーダーシップに共感し、共にゴルフを楽しむと云った点で、相性がよさそうだ、フレンドリーだ、との感触の下、勿論トランプ氏が見せていた対日批判姿勢を気遣っての事でしたが、同氏を日本側に取り込むための「二つの作戦」が用意されてきたと指摘するのです。外交とは人間関係にあり、と云う事でしょうか。

その一つが「to `disarm ‘ Trump」と云うのです。(トランプ融和作戦とでも云う事でしょうか)
具体的には昨年11月、当選直後のトランプ氏を安倍首相は、黄金のゴルフ・ドライバーをお土産にトランプタワーに表敬訪問していますが、それは選挙中、トランプ氏が見せた対日批判姿勢を気遣ってのアレンジであり、両者の会話の場に娘のイバンカさんにも同席を促したこともあって、その効果は大きく、更には、今年2月にはトランプ氏の別荘、Mar-a-Lago でゴルフ、会食する等で、蜜月とも言われる関係が出来てきたと云い、二人の距離は急速に縮まり、二人の会談はより効果的なものとなってきたと指摘するのです。

もう一つの作戦が「to `disengage’ Trump from key policy matters」だと云うのです。日本政府筋はトランプ氏のtransactional dealmaking approach、つまり外交交渉をビジネス交渉まがいとする姿勢を懸念し、とりわけ経済と安全保障問題が一緒に扱われ、例えば貿易上の問題を同盟関係維持問題とすり替えられる事への懸念から、交渉チャンネルを変え、つまりはホワイトハウスから切り離すこととしたことで、これが功を奏していると評価するのです。

因みに、安保問題につぃてはスムーズに進展、米国は在日駐留軍の維持と、日米安保条約第5条(米国の集団的自衛権行使)を以って日本の防衛と日本の領土保全を約するまでに至った事、 一方、経済問題では周知の通り、TPPからの離脱という事で日本に水を浴びせ、又、自動車輸出を巡り、reciprocity 互恵の云々が持ち込まれる等、1980年代の日米交渉の再現すら思われる処ですが、日本からは日米の副総理、副大統領による日米経済対話を提案することで、トランプ氏をこうした問題から外すことに成功していると云うのです。

要は、こうした二つの対トランプ作戦、disarming Trumpと disengaging him from core issues、 が攻を奏する処、因みに2月11日、Mar-a-Lagoでの食事を挟んでのトップ会談後、その際、北朝鮮はミサイル発射実験を実施していますが、トランプ氏は` The United States of America stands behind Japan, its great ally, one hundred percentage, ‘(米国は100%日本側にある)とメッセージを発していましたが、それこそは両者の結束力の強さの証とするのです。そして、係る状況に、日本国民はかなりの比率において成果ありとしていると理解をする一方で、28%と僅かながらも、トランプに近づきすぎ ` Abe for sucking up to Trump’ (トランプにおべっかばかりの安倍)とする批判にも言及し、日本への信頼を怪うくする処と指摘するのですが、これこそは今、安倍政権が醸し出している問題と思料する処です。

(2)いま日本に求められる外交戦略
処で、こうした日本の対トランプ作戦にもその限界が鮮明となってきたと指摘するのです。
つまり、彼の行動はdisarming はともかくdisengagementと云う点では想定されいた枠組みを超え、北朝鮮問題に対しては極めて挑戦的な行動をとり、7月以来、G20などで米国製品の市場アクセスについて漏らしていた不満を荒げだしてきたという事です。これらはより基本的には、米国の外交政策上の構造的変化、つまり国際機関からの撤退、米中関係の不確実さ、高まる朝鮮半島での脅威を映すものとし、かかる変化は日本に、これまでの対トランプ政策を超えた戦略思考を求める処となってきたというのです。それは日本が如何に自主防衛の能力を高めるか、そして如何にその政策ポートホリオを拡充し、以ってinternational institutions国際機関等、諸制度の活性化を助けていくかが、求められる処と指摘するのです。

尚、北朝鮮への対応として、彼らの米本土に届くICBMの開発の成功はまさに日米同盟の在り方を変えるgame changer となるとして、巡行ミサイルを含むcounterattack 能力の確保を指摘するのですが、これはアジア地域における他国の戦略にも大いに影響を及ぼす処と云うもので、慎重を要する処と思料するのです。要は日本はこれまでとは比べようのない広域の選択を迫られる処となってきたと云い、それは経済関係で云えば米国のTPPからの離脱を問題とする事よりもアジアにおける経済秩序の在り方について主導していく立場にあると指摘するのです。

そしてアジア地域における最も重要な問題は、アジアにおける膨張する中国、とりわけ「一帯一路」構想とどう向き合っていくべきなのか、競争し、共存し、協力していけるかにあるというのです。トランプ政権のアジアにおけるリーダーシップの弱体化が進む中その分、日本は対アジア政策の再考が必要になっていると指摘するのです。因みに、この6月安倍首相は「一帯一路」構想にたいして、これまでとは姿勢を変え、協働していくと公言していますし、又、太平洋からインド洋にまたがる自由貿易圏の構築を目指したい `to see a world in which high-quality rules cover an area from the Pacific to the Indian Ocean、with free trade a force that can bring both peace and prosperity. ’ と語っています。又日本のEUとの経済連携協定もアジアを超えた通商拡大を意味しているというのですが、これらが全て、日本が米国を離れて、中国に向かうという事ではないと質した上で、トランプ氏が日本に向ける問題の基本は、liberal democratic order に関わる点であり、それこそは日本の発展、成功の規範となるもので、それこそはアジアのみならず世界における日本の役割と、主張するのです。まさに副題、Time for Tokyo to invest in the Liberal Order の示唆する処と云うものです。

アジアにあっては、TPP完成の為に日本は鋭意関係諸国と協働し,主導していくべきであり(次章P.8)、米国の将来の復帰参加を可能とすることをも考え取り組むべきで、同じ文脈で、日本はワシントン政府のパリ協定への再加盟を支援していくべきとも云うのです。又、日本はアジアのリーダーとしてアジア諸国と協調していくべき立場にあるわけで、そうした対応こそが北朝鮮危機を悲劇的結果とならないようにしていく事になる、Keeping the door open for the United States- is a role Japan should seek, not just in Asia but also worldwide. と云うのでした。


第2章 トランプ米大統領、この秋、アジアを行く

1.トランプ大統領の来日 ― 日米首脳会談と日本の今後

さて、トランプ米大統領は就任後初となるアジア歴訪の最初の地として11月5日、日本に到着、やはりShinzo-Donaldの蜜月さは、ひときわ世界の注目を引く処でした。そしてトランプ氏滞在中、行われた日米首脳会談を通して見える日米関係とは本稿冒頭紹介したHikotani 論文を地で行くがごときと映るものでした。

まず、トランプ大統領は11月5日 日本に到着するや直ちに、安倍首相招待の歓迎ゴルフ接待を受け、続く首相夫妻主催の夕食会に出席。翌6日、午前中は日本の経済人との会合に、そして皇居での天皇皇后両陛下と初会見、午後はワーキングランチを経て、大統領就任以来5回目となる日米首脳会談を果たし、これらevents での会話、会談を通じ、両国の喫緊のテーマ、北朝鮮問題について、米国と当該対応方針について認識の共有を図り、まさにShinzo-Donald の‘蜜月’を、改めて世界にアッピールするものでした。尚、余談ながら彼の日本入国は米軍横田基地経由でした。かつて72年前の1945年8月30日、マッカサー元帥が国連軍最高司令官としてコーン・パイプを咥え米軍の立川基地に降り立つ姿を想起させられたのですが、今回彼が横田基地に降り立ったことに特別な意味を持たせようとしたものかと、下衆の勘繰りと云うものでした。

(1)日米首脳会談(注)が映す日米関係のリアル
今回の日米トップ会談は、その後に続くアジア訪問各国での首脳会談への枠組み作りとも映る処、日米が主導して政治的、経済的メッセージを発する処に狙いがあったと云うものでした。
当首脳会談要旨は以下(注)の通りで、北朝鮮に対して日米の結束を打ち出し得た事、勿論、それで米朝の軍事衝突リスクが解消とはなりませんが、相応の成果があったとされる処でしょう。

 (注)11月6日行われた日米首脳会談要旨(日本政府発表)。(日経2017/11/7)
[北朝鮮問題] 日米両国が北朝鮮問題に関して100 % 共にある事と、日本の防衛に対する米国のゆるぎないコミットメントを確認。対話ではなく、北朝鮮に最大限の圧力をかける局面であるとの認識で一致
[安全保障] 法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が国際社会の安定と繁栄の基礎であること
を確認。インド太平洋地域の重要性で一致。自由で開かれたインド太平洋戦略を共に推進する。日
米同盟の抑止力の強化に引き続き取り組む。
[貿易] 自動車、ライフサイエンス等の分野での協力を確認。日米両国間の貿易・投資見ついては、
麻生太郎副総理とペンス副大統領による日米経済対話で引き続き議論をしていく事で一致。2国間
だけではなく、アジア太平洋地域に広がる貿易、投資の高い基準作りを主導することで一致。自由
で公正な貿易の環境を作ることを確認。

そして、もう一つ成果としてあげられるのが上記‘要旨’にも記されている米国と「自由で開かれたインド太平洋戦略」の理念(注)を共有できた事だったといえそうです。そのコンセプトは日米豪印4国を軸に、アジアからインド洋を経てアフリカに至る地域の安定と成長を目指さんとするもので、大風呂敷な感は否めませんが、それでも日米共通の外交戦略とすることでトランプ氏と合意なった事は相応の成果と言えるのではと思料するのです。周知の通り、同氏はアメリカ第一主義を以って多国間協調なる戦略を忌避する立場ですが、この多国間の枠組みに理解を示した初の事例と云う点で、興味深いものでした。さて、インドはやや浮いた存在にありますが、これがつなぎとめられるかが、今後の課題と云うものと思料される処ですが、やはりトランプ氏がどこまで真剣に考え対応しようとしているかは、気になる処です。

      (注)「インド太平洋戦略」3つの狙い(日経 2017/11/7 )
     1.基本的価値の普及→ 日米豪印中心に連携
       2.経済的繁栄の追求→ アジア・アフリカの成長支援 (太平洋)
       3.平和と安定確保 → 人道・災害支援 (インド洋)

とは言え、トランプ氏のこの変化は、中国の「一帯一路」構想が、時に対米戦略の一環とも言われる処、これへの対抗ビジョンを求めていただけに、オバマ政権との差別化という点でもトランプ大統領として乗りやすかったのではと思料する処です。当該戦略とはどのような展開となるものか、具体的にはまだ分かってはいませが、今次大枠合意をみたTPP11とも併せ、日本はアジアにおける主導的な立ち位置を手にしえたのではと思料される処です。もとより、当該課題は如何にそのcomprehensive、 かつtimely なaction planを示し得るかでしょうが、暫し推移を見て行きたいと思う処です。

(2)気がかりな事
勿論、色々残された問題多々です。双方の問題への関心の在り方、そのベクトル合い難く、因みに首脳会談の冒頭、安倍首相が北朝鮮問題について言及したのに対し,トランプ大統領は対日貿易赤字にまず触れた事は、好対照と云え、両者の関心のすれ違いを鮮明とする処でした。各論については`日米経済対話’の枠組みに持ち込まれましたが、トランプ大統領としては来年の中間選挙を前に日米間の貿易交渉での成果を期待する処でしょうから、日米関係がShinzo-Donaldの蜜月とは言え今後共、貿易面では強く圧力をかけてくる事が予想される処です。

因みに、首脳会談後の共同記者会見では、貿易不均衡問題に絡めた米国製防衛装備品調達の要請が飛び出し、これに応える形で後刻、前述のように安倍首相は800億円の追加調達を明らかにしていますが、さてこの辺りになると、トランプ追随型の安倍政治と映る処、それは米軍の枠組みに取り込まれる姿とも映るだけに、極めて気がかりと云うものです。
加えて、日米関係に限る話ではありませんが、トランプ政権と付き合っていく上で、いま最も気がかりな事として云えることは「ロシアゲート」問題です。日米首脳会談を控えた5日、トランプ氏とロシアの不適切な関係を巡る「ロシアゲート」に新たな疑惑が持ちあがってきたのです。対象となったのはトランプ政権閣僚、ロス商務長官です。10月末のマナフォード元選挙対策本部長(起訴)、フリン前大統領補佐官に続く疑惑です。トランプ大統領としては米国内でのこの逆風から目をそらすため、外交面での目に見える成果に傾く公算大と云え、後述する歴訪総括報告はそういった事情を反映したものとも云えそうです。

2. トランプ大統領のアジア5か国歴訪と、彼の可能性

(1)トランプ大統領アジア歴訪と首脳会談総括 
トランプ氏は大統領就任後、初となったアジア5か国の歴訪を終え、11月14日、ワシントンに戻り、翌15日、今回の歴訪総括声明を発表したのです。今回の歴訪は、前述の日本(11/5-6)を皮切りに韓国(11/7)、中国(11/8-/9)そして、ベトナムでのAPEC首脳会議(11/10)、フィリピンでのASEAN首脳会議(11/13)に出席、夫々、安全保障問題として、北朝鮮の核・ミサイル開発停止に向けた対北朝鮮包囲網作りへの協力要請、そして経済面では公正かつreciprocal trade つまり互恵的貿易の確保を訴える旅でした。

さて15日の総括声明は、とにかく自画自賛の内容とも云うべく、とりわけ日韓中での首脳会談を通じて、安全保障との絡みで3か国への売り込みに成功した話が中心で、何か企業人の出張報告といった様相にあり、TVに映るその場の雰囲気はいささか冷めた観のあるものでした。
つまり、先々の首脳会談、多国間協議の場では、彼は米国のアジアへの関与の維持を口にすることはあっても、期待された`安保‘と`経済‘を両輪にアジアの平和と発展を主導する具体的戦略を語ることもなく、最後は必ず持論のAmerica First で終わるもので、大統領としての彼の関心が専ら二国間対米貿易の赤字削減に向けられ、何よりもこれまでの世界の指導者としての立場を投げ出し、やり過ごす姿に、もはやアジアからの共感を呼ぶことはなく、その分、後述、中国の存在感が際立つばかりと云うものでしたが、それを自ら実証したと映るものでした。

そうした状況を決定的なものと印象付けたのが10日、APEC首脳会議を前に、習近平主席のスピーチに先立ち行われたトランプ大統領のスピーチでした。トランプ大統領は「インド太平洋構想」には触れたものの、あくまで米国を縛るような多国間協定には反対と、米国第一主義を繰り返すだけで、そこで‘東’には自国主義で内向きに閉じこもるトランプ米国があり、‘西’には世界を主導せんと台頭する習近平中国がありと、両者が太平洋を挟んでせめぎ合う構図の深まりを‘実感’する、まさに世界のガバナンス構図の変化の始まりを強く印象付けるものだったのです。

(注)両首脳の発言ポイント(日経11/11)
・トランプ大統領:「我々はインド太平洋地域のパートナーであり、同盟国だ」だとしなが
らも、「米国第一」は譲らず、多国間交渉を通じて地域全体に自由貿易のルールと理念を
広げる先導者の役割には背を向けるもの。    
・習近平主席:「アジア太平洋の平和と安定、繁栄はアジアの人々に属する」「アジアで自由
貿易を作るのは私にとって長年の夢だった」と、自国優先に傾く米国のスキを突き、地域
の盟主の座を窺う様相

・‘対北朝鮮政策’と‘公正貿易’
さて、最大の課題とされた「北朝鮮政策」を巡っては、日米、米韓両トップ会談では「最大限の圧力」、「最大限の制裁と圧力」をかけることで足並みを揃え、カギを握る中国の習近平主席との会談では、北朝鮮への圧力継続を確認したと成果を誇示していましたが、北朝鮮を核放棄に追い込む包囲網には濃淡は残り、道は半ばと云った様相に終わっています。(尚、17日、中国は北朝鮮に特使を派遣し、米国との対話の可能性について協議を始めたと報じていましたが、その内容は不透明のまま。-日経、11/18)

もう一つのテーマ「貿易赤字の是正」問題では、米国との防衛防衛の拡充と云うコンテクストを以って、トランプ大統領は日本,韓国に対して米国製武器の調達を要請、既に安倍首相は800億円の迎撃ミサイル追加購入を約し、韓国では在韓米軍の平等な費用負担を絡め、FTAの再考を促し、更に中国では28兆円の商談(大半は「協議入り」や「覚書」だそうですが)と云う手土産を手にしたのですが、さながらトランプ大統領は武器を含む行商人の様相を見せる処でした。もとより米国内の軍需産業、ボーイング、ロッキード・マーチン等、は大いに恩恵を受け、業績好調が伝えられていますが、トランプ政権の主要閣僚が軍出身者(注)で固められている点からも、トランプ政権の軍産複合体の拡大を実感させると云うものですが、それは同時に、アイゼンハワー元米大統領が1956年、軍産複合体の危険性を指摘し、警鐘を鳴らしていたことを想起させる処です。

      (注)Generals & ex-generals in the Trump administration :
H.R. McMaster : National security adviser (3- stars)
James Mattis : Secretary of defence (4- stars )
John Kelly : Chief staff (4-stars)
  Joseph Dunford : Chairman of the joint chiefs of staff (4-stars)
  Michael Flynn : Former national security adviser (resigned) (3-stars)
                   ( The Economist, Nov.11-17, 2017) 

・TPP11大枠合意と日本経済
序でながら、当初、日米主導で進められてきた多国間通商協定TPP12は、今年1月トランプ大統領が就任時、米国のTPPからの離脱を決めた事で一時、その成立が危ぶまれていましたが、米国抜きのTPP11としてAPEC会議と並行して進められていましたが、11月 11日、漸く大枠合意を果たしたのです。日本が11か国の議論を主導した結果というもので、その努力は大いに評価される処、自国第一主義の高まる中での合意成立の意義は極めて大きいと云うものです。

TPPの目的は、アジアの成長市場の活力を取り込むためにルールを整備することにあります。タイ、インドネシアなどは市場も大きく、多くの日本企業はASEAN全体にわたってサプライチェーンを展開する処ですし、これら国々が参加すれば日本にとって経済的実利は大きいと云うものです。それよりも何よりも、二国間取引を前提に米国から圧力がかかってもTTP協定を以って当該圧力には対抗しうると云うものでしょう。但し、このためにも日本は一層の構造改革と同時に貿易の自由化を進めることが不可避となる処です。そして、日本経済の再生が実現していくとすれば、世界経済の成長に貢献することになると云うものです。関係国の早期批准を期待する処です。

(2)トランプ大統領の可能性
さて、米国民が異端の指導者を担いだ選挙戦から11月8日で1年、そのトランプ政権の混迷は深まる一方の状況にあります。周知の通り、ポピュリズムの台頭を許した庶民の内向き志向は根深く、かつての米国に戻る復元力は今の処乏しいと見ざるをえません。 因みに彼がアジアへ旅立つ前の10月28日、米紙、ワシントン・ポスト紙は、メリーランド大学との共同世論調査結果、トランプ政権下で「政治の停滞が危険水準に達した」と考える国民が71%に達したと報じたのです。そして、この水準について、米軍撤退等を巡り国論が2分したベトナム戦争当時と同じ水準か、それよりもひどいと感じていると回答した人が70%に達したと、伝えるものでした。

上掲エコノミスト誌(Nov. 11-17)、巻頭言は「Endangered ― American influence has dwindled under Donald Trump. It will not be simple to restore.」と、劣化したトランプ米国の世界に対する影響力の再生はもはや無理だろうと、断じると共に、By putting `America First’, he makes it weaker, and the world worse off と、極めてnegativeなコメントを伝えるものでした。上述トランプ大統領の言動からは、もはや、と云ったところかと思うばかりです。因みに米論壇,Project SyndicateでMs. Elizabeth Drewは論考(11/3)`The Fall of the President’s Men’ で、`Trump is the Target’ と指摘するのです。(Ms. Elizabeth Dew is regular contributor to New York Review Books and the Author of Washington Journal; Reporting Watergate and Richard Nixon’s Downfall)


おわりに  滞在先のNY で思うこと

(1) 米景気の勢いに触発されて
筆者は先週、Thanksgiving で賑わうNYに滞在し米経済の消費景気を実感してきました。23日にはNY最大と云われるパレードがあり翌24日はBlack Friday で街中、大セール一色で身動きの出来ぬほどの人出、今朝一番のTVニュースでは本当か嘘か、1億1千万人の人出があった由、これは日本の全人口がショッピングに集まったという事になるのですが・・・。とにかく筆者もこの活況に与かるべくパレードの大本拠たる36丁目のデパート、メーシイーズに出かけましたが、久しぶりの高揚感と熱気に疲れ、ホテルに戻りましたが、その帰りyellow cab のdriver に景気が良くていいね、と声をかけたら、戻ってきた言葉は、給料が上がらなくてね・・・。要は、自分は関係ないよと、云いたかったのでしょうか。どこかで聞くストーリでした。

さて日本経済は8月発表のGDP(四半期)ベースで6期連続のプラス、内閣府が11月8日発表した9月の景気動向指数では景気回復は戦後2位、58か月となる見込みと報じています。でもNYのタクシードライバーならぬ多くの日本国民はその経済の回復の恩恵に浴している実感がないというのです。GDPの6割を占める消費は依然低迷状況にあります。雇用者賃金が上がらず好景気でも懐は温まらないという事です。
思うに、。アベノミクスがスタートして4年。この間、日銀は異次元の通貨量を流し、政府は想定外と云われる規模の財政出動をもって経済を支えんとしてきたのですが、お陰で株式市場は好調なのですが、これが実需につながる事はなかったという事なのです。そこで安倍首相は財界幹部に一律賃金の3%アップを要請、「賃上げは企業への社会的要請だ」と云う言葉を付してです。そしてこの要請を財界は一言の異論を挟むことなく受容したのです(10月26日、経済財政諮問会議)何か変です。もはやアベノミクスは機能不全に陥ったと云うものです。

不全とする理由は経済構造が90年代以降急速に変わってきたのに、日銀も政府も昔の短期不況に対応した政策の発想から抜け出せていないことの不条理とも云うものです。
これまで日銀は通貨を発行さえすれば人々はモノを買いに走り、景気が回復するとしていました。政府も民間にお金を配る事で、つまり公共事業等財政出動ですが、そう考えてきました。まさに需要サイドの話です。一方、政府は効率化だ、競争力強化だ、無駄の排除等いわゆる成長戦略などを進めてきています。アベノミクスで云えば今一億総活躍だ、働き方改革だ、等々改革を掲げ、誘導してきています。これは日本経済の生産力の強化、つまり供給サイドでの対応です。然しお金を配っても需要は増えない。消費者は一応の必需品を完備して、そういった点で需要は増えない状況です。需要が増えなければ企業が、労働者が頑張っても効果は上がりません。それどころか、効率化によって人がいらなくなり、生産能力が更に拡大すればかえって売れ残りや失業が広がり、不況をひどくしかねないのです。

今、消費者は必要なものは十分に揃えている、飽和状況にある現状ですから、本当は何が欲しいのか見つめ直し、今企業にとどまっているお金をそのために使うようにしていく事が必要なのです。これまで生産性の向上が競争力強化に繋がり、以って企業が稼ぎその結果が賃金に反映されていくと考えられていましたがもはやそうした考えは通用しなくなっているのです。そうした認識がいま、世界的に広がってきている処です。

・技術革新が賃金を抑えていく
この5月、MIT教授のD.オーター氏が発表した論文「労働分配率の低下とスーパースター企業の興隆」が、今世界的に話題を呼んでいます。同教授は2014年8月、米ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジューム向けに提出した論文で「コンピューター化により、世界中で高学歴の人や未熟練労働者への需要は高まったが、中間スキル層への需要が低下した」ことを明らかにし、コンピュータ時代の長期的な戦略は、人的資本に積極投資するこ都で「ハイテクに奪われるのではなく、ハイテクに保管されるようなスキルを持った労働者」を育てることだと、主張していたのですが、更に、当該論文は、その議論の延長として、アップルや米アマゾン・ドットコム、フェイスブックといった革新企業を取り上げ、彼らの経営行動が賃金に逆風になっていると主張するのです。(注)因みにフェイスブックの場合、利用者は世界で20億人、株式時価総額は50兆円。然し従業員数は2万人。2017年3月時点の連結で36万人いるトヨタ自動車の18分の1.企業が稼いだ利益は資本家に集中し労働者に廻りづらくなっていると云うものです。 [(注)日経( 2017/9/14):「経済教室」鶴光太郎慶大教授「労働分配率低下の真犯人」]

これまで新興国への生産移転と空洞化を経験してきた先進国は経済の停滞を、イノベーションを図ることで克服してきました。そうした革新が今や、ほんの一部の企業が主導するようになってきたことで、イノベーションが ‘競争’ではなく‘寡占’を生む処となり、従って成長の果実も寡占されていくという新事態を生んできているのです。こうした産業の在り姿が急速に変化を進める今、既成通念的な対応では、事態を律しえない状況となってきたということです。

つまり、生産システムのコンピューター化、デジタル化が進んできたことで「モノづくり」の形が急激に変りだしてきていますが、そうした技術革新の進行がシステムの変化を齎し、結果として賃金が抑えられてきているという事で、今や国際的な広がりでみられる現象です。因みに従業員の給料をGDPで割った「労働分配率」は先進各国では低下傾向にあり、日本の場合、1997年からずっと下落傾向にあると法政大学教授の水野和夫氏は雑誌NIPPON、2017/11で語る処です。(注:国民総所得における賃金・俸給の比率は1980年度には46.5%あったものが2015年度には40.5%まで低下)勿論、その分、資本家への分配が増えていると云う事なのです。

こうした変化の中、消費者の行動も構造的に変わりだしてきているのです。今次経験したNYでの消費活動の様子ですが、Thanksgiving Parade の翌24日のThe Wall Street Journalの一面には「Shoppers Flock to Phones 」、つまり混雑のデパートに行くよりはスマホで、と云った具合に消費行動も大きく変化しているのです。

(2)「改革したふり」せず、真に改革を
安倍首相は、現下の完全雇用状態で、近時株価も上昇し、これがアベノミクスの成功の賜物として、「アベノミクス再起動」を云々するのでしょうが、アベノミクスの行動様式を続ける限り、
金融、財政政策の成功の陰で、成長戦略は進まぬままとなり、もはや日本経済の体質の行き詰まりとなる事、火を見るより明らかです。これまで日本の強みとされていた「モノづくり」は近時の大企業の体たらくが象徴する処これありで、成長の可能性に繋がる設備投資もデジタル化でその伸びは鈍化する状況にあって世界的なカネ余り現象が更に深まる恐れがある処です。要は潤沢な手元資金をどのように次の成長につなげていくかが、問われているのです。

これまでも、例えば「一億総活躍」と云ったような陳腐な表現を持ち出し、改革だと叫んでいる安倍首相にいま求められる事は、いつまでも「改革したふり」をすることはやめ、自身も記者会見で喋っているように、‘少子高齢化やグローバル化に対処できる日本経済 ’ へと体質改善を加速させていく事なのです。そしてその為の論理と将来像を描きながら、一義的アクションとして、まずは国をよりオープンとすることも含め規制改革を果敢に進め、新規事業を進めやすい環境を整備していく事であり、それは同時に世界の成長を取り込むアクセスでもあるのです。安倍首相は当初これこそは一丁目一番地と云っていた筈です。
思うに一国の首相たる彼が、目標数字を示し要求する姿は、まさに「国家資本主義」の姿と映る処、これこそが日本経済の活力を乏しくしているのではと痛く思う処です。

それにしても前述、諮問委員会で、経団連会長をヘッドとする企業経営者が首相の要請を、特段の異見を挟むこともなく素直に受け入れる姿に、これって何なのと、大いなる疑問を禁じ得ない処でしたが、偶々見ていたTVニュースで、自民党の小泉進次郎衆院議員も、17日、都内での講演で、同様の疑問を呈していたのです。「首相から、お金が足りない、と言われたらお金を出す。政治の顔色をうかがう現状に甘んじていてはinnovationは生まれない」と檄を飛ばし、そして、一番ものを言えないのは経済界だと、経済界を一喝していたのですが、この若い彼の批判に経団連会長はどう応えるものか、帰路機中では、その思いは深々とする処でした。
以上
posted by 林川眞善 at 21:45| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする