2022年01月28日

2022年2月号  「新しい資本主義」考 そして今、日本に求められる視点 - 林川眞善

目  次

はじめに  The era of predictable unpredictability

第1章 「新しい資本主義」考

1.岸田文雄総理が目指す資本主義
              
(1) 文春寄稿 私が目指す「新しい資本主義」の
        グランドデザイン
(2)「新しい資本主義」とは、社会主義シフト?

2. 日本の経済安全保障対応と、日米首脳オンライン協議

(1) 日本と経済安保環境
・経済安保、4つの柱
(2)日本の経済安全保障対応と、日米首脳オンライン協議

第2章  国と企業の「二人三脚」、その合理 

1.米政権とインテルのタッグマッチ
2.Bossy state, 問われる`政府と企業’ の関係

おわりに 北京冬季五輪と習政権のメンツ

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はじめに  The era of predictable unpredictability

昨年暮れのThe Economist(Dec.18~31,2021)は、その巻頭言で、来たる2022年をNew normal始まりの年、The era of predictable unpredictability 、つまり予測するにも、‘予測できないと予測すること’ と断じるのでした。それは複数の供給要因と需要要因が予期せぬ形で押したり引き合ったりする様相にあって、その落ち着く先が見通せない状態が続くと見る処、この現象を英投資調査会社、TSロンバートは、それをバイフレーション(biflation)と称する処です。

過去2年というもの、新型コロナウイルス、「デルタ株」が齎したコロナ禍への対抗に明け暮れ、その行動は、いつしかこれまでnormalと信じられてきた行動や秩序の破壊を生み、更に昨年暮れには新型コロナウイルス「オミクロン株」の出現で、その収束の行方が見通せない、予測不能の新年に入りましたが、biflation効果もあって、世界は今、急速に進み出すインフレへの懸念を高める処です。

そうした中、日本では岸田総理が、この1月11日で政権発足100日を迎え、米国では、バイデン大統が、1月21日で2年目を迎えました。

そして、1月17日 、岸田首相にあっては、召集された通常国会で就任後初の施政方針演説に臨み、2050年温暖化ガス実質ゼロに向けた「経済社会全体の大変革」を強調する処でした。そして経済再生の要は、自説の成長と分配の好循環を生む「新しい資本主義」にありとし、この春に実行計画をまとめる方針を明らかにする処でした。その直後の21日には、オンライでバイデン大統領と1時間半の協議を行っており、そこでは地域情勢への対応や経済分野で両国の幅広い連会を確認した由、報じられています。

そこで、岸田氏が持論とする「新しい資本主義」とは、どういったものか。文芸春秋2月特別号に寄稿の論考「新しい資本主義」のグランドデザイン、を取り上げ、上記日米首脳会談の内容とも併せ、この際は日本の世界におけるposition(注)を踏まえ、日本の経済安全保障に焦点を合わせて論じたいと思います。
  
(注)日本経済の世界におけるポジション(2020)  
    
   Japan (rank)  USA 中国     
GDP (兆ドル)     5.0 (3位)    20.9 (1位) 14.9(2位)
貿易(輸出 兆ドル) 0.8 (4位) 1.5 (2位) 2.0(1位)
人口 (億人)  1.2 (4位) 3.3 (3位) 14.1(1位)

と同時に、パンデミック以来、少なくとも経済活動は政府の支援、あるいは協調なくて進まぬ状況が続く処、これまでも幾度も弊論考では指摘してきた問題ですが、これが市場における自由競争、更には民主主義の在り姿を問う処です。そこで、併せて民主主義堅持を意識しながら、The Economist,(Jan.15/21)が指摘摘するBossy state(高圧的な政府の企業介入)の実状について考察することとしたいと思います。



第1章 「新しい資本主義」考

1.岸田文雄総理の目指す「新しい資本主義」のグランドデザイン

(1)文春寄稿「新しい資本主義」
岸田文雄氏は、自身の標榜する「新しい資本主義」について、月間雑誌「文芸春秋」2月特別号に寄稿しています。早速 取り寄せて読んでみました。新しい資本主義?

寄稿文の全体構成は、以下 10の文節からなるものです。
(1)今こそ資本主義のバージョンアップが必要
(2)「人」重視で資本主義のバージョンアップを
(3) 何よりも大切なのは人への投資
(4)新たな「官民連携」で付加価値を引き上げていく
(5)スタートアップが日本を救う
(6)大胆な投資の実現
(7)地方こそ主役、デジタル田園都市国家構想の実現へ
(8)気候変動問題への対応
(9)若者世代・子育て世帯の所得の引き上げに向けて
(10)まとめ

まず、(1)、(2)、(3)を通じて「成長と分配の好循環」実現のために、「モノから人へ」の流れが重要と説き、次に(4)、(5)、(6)を通じて「モノから人へ」に続く新しい資本主義のキーワードとして「官民連携」を挙げ、連携を以って終戦後に続く、第2の創業時代をつくろうと、呼びかけるのです。更に(7)、(8)、(9)ではもう一つの重要なキーワードとして「地方」を挙げ、デジタル技術の活用により、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するとデジタル田園都市国家構想の実現を目指すと云い、気候変動問題に2050年カーボンニュウートラルの実現を目指し、あわせて2010年代の日本の経済成長を米国と比較して家計消費の伸び低いことが問題でこれを改善するために可処分所得の増加を図りたい、これこそ令和版所得倍増だと主張するものでした。

(2)「新しい資本主義」とは、社会主義シフト?
さて、読み終わっての感想は、「新しい資本主義」とは何か? 依然よくつかめないというものでした。つまり、上記内容からは、資本主義論ではなく、岸田首相の在任中のお仕事予定表としか映らないのです。勿論 政策論であれば、それはそれで問題はないのでしょうが、一国の総理大臣が使う「新しい」と云う言葉には、根本的変革を予知させるものがある処、それが感じ取れないと云うものでした。

つまり、総理大臣の云う「新しい資本主義」論には当事者の理念が映ってこないこと、明確な国家戦略も見えないという事で、むなしささえ覚える処でした。つまり岸田氏が実行したいとする政策を集めても、即「新しい資本主義」とはならないのです。新しい資本主義を語る以上、月並みのレトリックでは意味がなく、日本の経済社会に関するしっかりとした分析が必要です。

そもそも、資本主義とは、資本が主体の生産体制を意味する処、それを否定したマルクスの造語で、彼は競争と云う経済的圧力が生産の為の生産に追い立て、失業と貧困の広がりが、格差社会を生み、繰り返される不況等、あらゆるものが投機の対象になることを明らかにし、利潤第一のシステムがこの巨大な生産力をコントロールできなくなったとし、そこで、国民が主人公となる未来社会への前進が必然と説くものでした。が、仮に格差や独占を生みだし、自然を破壊する資本主義にどう立ち向かうかという事であれば、東大教授の松井彰彦氏が言うように(日経、2022/1/15),「資本主義と市場経済と混同されやすいが、その区別を明らかにしなければ対抗策が見えてこない」処、今次の岸田氏主張は、そうした整理がなされないままに、賃上げだ、格差是正だと云うのですが、であれば「社会主義」への接近ではと映る処です。

序で乍ら、米国のノーベル経済学賞のポール・サムエルソンは、市場の自由と政府による規制を併せ持つ中道主義を目指す処でした。つまり、サムエルソンは、市場の自由を重視する古典派経済学思想と、政府の規制を重要視する新古典派経済学思想とを合体させ、「新古典派総合」と云う新しい概念を生みだし、その下で「公的秩序を保つための規制」と「市場の競争の自由」のバランスを取った経済政策を主導、戦後、60年代から80 年代の民主主義国家の経済政策に多大の影響をもたらすものでした。要は、不況時にはケインズ経済学、軌道に戻れば、自由放任を志向すると云うものでした。なおサムエルソンの名著「Economics」と云えば、60年前、好学社のリプリント版を以って苦労したことを想起させられる処です。

さて、1月17日召集された通常国会での岸田文雄首相の施政方針演説では、まさに「新しい資本主義」に全文の3割を割く処、これまで批判の多かった「改革」と云う言辞については、今回は「経済社会変革」と打ち出していましたが、日本経済の問題はアベノミクスでいえば3本目の矢、生産性を上げる改革など成長戦略が足りないことに尽きる処です。今後この点は、岸田イズムの下で見直されていく事でしょうが、ここは修正ではなく改革の断行を目指すべきと思料するのです。つまりは抜本的変革への意思を明確にし、そして何よりも、日本経済の成長のためにも、行政全体を統率するリーダーシップが求められる処ではと、思料する処です。

かつて、同様趣旨の表題(和訳語)で、2020年10月、ハーバード大学のMBAコースで人気を集めるレベッカ・ヘンダーソン氏の「資本主義の再構築」(Reimagining Capitalism)を手にしました。そこでは企業のパーパス(存在意義)の再定義があり、非財務情報の開示を通じて、株主に偏在する富の分配を見直そうという内容ですが、ステークホルダー主義に基づいたもので、ビジネスの力を使った社会問題の解決や公正な分配を考えるうえで大いに参考となるものでした。

・日本の課題
上述、国際環境を拝する日本の行く道はどうあるべきかを考える時、2020年のForeign Affairs 7-8月号で、Princeton 大学教授のJohn Ikenberry氏が投稿論文「The Liberal Order, The Age of Contagion Demands More Internationalism, Not Less」で、まさにウイズ コロナの時代こそはinternationalism(国際協調主義)がより必要と訴えていたことを想起する処、2022年も尚その延長線上にあって、資源等、パワーを持たない日本が目指すべきは、安全保障と自由貿易が両立する「経済安保」の確立にある処、その為にも‘外交力’の強化が日本にとって喫緊の課題とも思料するのです。


2.日本の経済安全保障対応と、日米首脳オンライン協議

(1) 日本の経済安保環境
1月17日の通常国会では岸田首相は、「新しい資本主義」を語る中、目指す成長戦略では経済安保は、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱だとする処です。
安全保障といえばこれまでは政治的、軍事的側面を中心に議論されてきていましたが、これに「経済」が、結び就くようになった背景には、先端技術分野で存在感を増す中国に対し、世界的に警戒感が高まっている事情があっての事とされる処です。

つまり、中国は、2015にハイテク産業育成策「中国製造2025」を策定し、5G,やAIなど先端分野に力を入れてきている処、ただ先端技術に欠かせない、あらゆる技術の基盤となっている半導体は、目下の処、世界的な不足で、部品などのサプライチェーンへの関心が高まる処で、経済安保上の目玉とも映る処です。 尚、足元での半導体の生産能力は、中国が世界の15%程度と日本とほぼ同水準で、台湾、韓国に次ぐと見られているのですが、近時、2030年には中国は倍増の30%と首位に立つと予想される処です。このため、中国に自国の製造業の命運を握られかねないという危機感が、米国を中心に広がっているとされる処です。

・経済安保、4つの柱
上述、日本を取り巻く環境を念頭に、政府が目指すべき経済安全保障政策の構築は、国際経済評論家の船橋洋一氏が言うように、外交・安保、貿易・投資、脱炭素・エネルギー、デジタル・データなどの政策、そして産業政策とどのような整合性を以って構築されるというものか、つまりは国産と輸入の代替、安全保障と企業主益・経済成長、イノベーションと格差、抑止力とレジリエンス、といった経費対効果を明確にした政策を確立していかねばならないのですが、それらが新しい資本主義にどのように組み込まれていくものか。側聞する処、現状、以下の4点があげられる処、しばし当該推移を注視して行きたいと思います。

・4つの柱:
➀ サプライチェーン強靭化への支援、
  ― 滞れば国民生活や産業に重大な影響を及ぼす半導体などを「特定重要物資」に指定
し、国が供給網の強化に向け、事業者が作成し、資金を支援する。半導体の他、レアア
ースなどを想定する。
② 電力、通信、金融等の基幹インフラにおける重要機器・システムの事前安全性審査制度
  ― 情報通信やエネルギーなどのインフラ事業者が重要な設備で安全保障上の脅威になりうる外国製の設備を新たに導入する際、政府が事前審査する。
③ 安全保障上機微な発明の特許非公開制度等の整備推進
   ― 機微技術の公開を防ぐ狙いとするもので、対象を原子力技術や武器だけに使用さ
れる技術の内、「我が国の安全保障上、極めて機微な発明」に限定されることに伴う
損失を国が補償する。
④ 半導体工場の設備投資やAI等新分野に対する官民の研究開発投資の後押し、
   ― 量子技術やAIなど「特定重要技術」の開発促進に向け、資金支援仕組みの導入
   
(注)岸田政権は2021年暮れの臨時国会で、先端半導体工場の誘致を後押しするため
 の関連改正法案と補正予算を成立させており、台湾・積体電路製造(TSMC)が
ソニーグループと熊本県で建設する新工場がその適用第一号になる見込み。これも
実質的に経済安保法案の一部先取りと云う位置づけ。

・現実の対応に思う事
こうした経済安保への取り組みは、勿論、相応の意味を持つ処と思料するのですが、ただその実践的対応は自国安保の確保にある処、今日的環境に照らすとき、互恵主義で臨むべきではと思料するのです。つまり、もはや平時を前提とした「効率優先の集中・管理」型モデルでは立ち行かなくなってきているのではと思料されるからです。

気候変動や感染症、更には日本においては首都圏直下地震など、これらが同時多発的に起きる最悪事態も想定したモデルへの転換が急がれる処です。そして、何よりも我が国の産業界を巻き込む経済安保上の最大の懸念は米中の覇権争いです。民主主義と専制主義と云った国家理念の対立とも云われる処ですが、バイデン大統領の対中姿勢がいまいち、シャキッとしないことが問題です。
であれば、日本として今後の外交及び通商政策の基礎に置くべきは、米中対立の狭間で悩む国々とともに、二項対立の議論を乗り越え、皆で恩恵(経済的利益)を分かち合える「開かれた互恵主義」を目指すことではないかと思料するのです。そして大切なことは、多くの国が共生に軸足を置き目の前の地球規模の課題に一緒に取り組んでいく世界を実現する事、ではと思料するのです。そしてしぶとく生き抜くこと、これこそ、日本の経済安保にとって必要なことではと強く思う処です。

(2)日米首脳協議
1月21日 、日米両首脳はオンライン協議を行い、経済安保で米国との連携重視と云う岸田政権の基本スタンスが確認されたと発表すると共に、この春のバイデン大統領の訪日が決定したと発表しています。 さて協議の内容ですが、ホワイトハウスの声明によると、米国が提唱する「インド太平洋経済枠組み」の創設について両首脳は確認。同時に米国と緊密に協力し、同構想への支持を地域に広めていくと約束する処、米国は経済面でアジアへの関与を強化する方針にあること、そして中国の「一帯一路」を意識していく事、同時に経済版の「2プラス2」の新設でも合意したとする処です。

尚、新設「2プラス2」については、半導体などのハイテクとサプライチェーン、そして輸出管理が主な議題となるとしています。世界で需要の増える半導体は安定調達が最大の課題です。かくして経済安保の連携深化へ踏み出す処ですが、ズレも大きいと指摘される処です。具体的にはTPPへの米国の不参加。日米協調で焦点となっているのが輸出管理を巡っての温度差です。 更に、岸田路線とバイデン路線の間で未だズレを感じさせるのが米国の対中姿勢です。強硬路線を進める米国ですが、日本はどこまでその強硬路線に合わせていけるのか、問題は続く処です。となると経済安保での日米連携強化では、成長と安保をどうバランスさせていくかが問われる処と思料するのです。



第2章  国と企業の「二人三脚」、その合理性は

1. 米政権とインテルのタッグマッチ

米バイデン政権とインテルは1月21日、2兆円超を投じて米国内に半導体工場新設の計画を共同発表したのです。周知の通り、まさに上記経済安保で述べたように、世界的な半導体不足を受け、国産半導体を目指す動きが世界に広がる処です。バイデン大統領も、21日、ホワイトハウスで「米国の半導体帯分野で過去最大となる歴史的な投資だ」とコメントするも、今回の投資が国と企業の「二人三脚」であることを印象づける処です。(日経2022/1/23)

米政府は、昨年起きた深刻な半導体不足で、自動車、電子機器の生産混乱を招いた経験に照らし、インテルなどに投資を促し、同様の混乱が起きないためと、国内生産基礎の構築を進めると伝えられる処、先端半導体を確保できるかは、自動運転や次世代通信などデジタル領域の競争力に直結する処です。
更に、米国が対抗心を露わとするのは半導体産業の育成に巨費を投じる中国の存在です。米国内では、華為技術(フアーウエイ)を筆頭とした企業群が存在感を増す処、米半導体工業会(SIA)によると20年には約1万5000の中国企業が半導体企業として登録され、先端分野だけで10億ドル近い売り上げを挙げた由です。この他、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムソン電子も米国内で工場建設に動いていると報じられる処です。 尤も、補助金で足元の半導体不足を解消できるわけではないとは指摘される処、商務省調査によれば企業の半導体不足の解消には「最低半年」を要するとしていて、各社の新工場が立ち上がるのは24年以降とみられ、「供給過剰に陥るリスク」があるとの見方は少なくないとされる処です。

いずれにせよ、こうした過度とも映る国策投資政策、政府の介入にはいろいろ懸念も浮上する処、ある意味、ダッコに、おんぶの政府の介入は間違った取り組みであり、長期的に見れば3つのリスクがあると、The Economist ( Jan.15~21)は評するのです。以下にその趣旨を紹介することとします。

2.Bossy state, 改めて問われる政府と企業の関係

まず、80年代のそれとは違い、企業と政府の関係は変質し、これまでグローバル市場で民間企業が競い合うためのルールに目を引からせる審判役に回っていたが、今や波乱含みの新局面が進行していると云うのです。つまり、市民は社会正義から気候変動に至るまで、諸問題への対応を政府に求め、政府は企業に指示を出すことで、より安全で公正な社会へ導こうとしているが、つまり国は車の後部座席で運転手に指図するようになった。このBossy business interventionism(企業への高圧的な介入主義)には悪意はないが、しかしそれは究極的には間違いだとBeware the bossy stateと断じるのです。

バイデン氏は中間層のために米国の自由市場を守ろうと穏健な保護主義、補助金による産業支援等、推進しているし、中国でも「共同富裕」の名のもとに企業への監視を強めている。又、EUは自由市場から距離を置き、産業政策や「戦略的自律」を重視するようになったと云い、英国やインドやメキシコ等も同様にある処、致命的なのは、ほとんどの民主国家で介入の魅力が党派を超えて政治家に浸透していることと云うのです。

それは自国市場や審判が十分な働きをしていないのではと、懸念する市民が多いからだと云うのです。 また現在の地政学的情勢は、貿易の拡大とともに民主主義が広がると見込まれていた90年代とも、冷戦時代のそれともかけ離れているが、今では西側諸国と全体主義的中国とは競い合っているが、経済的には切っても切り離せぬ関係にあること、そして、
こうした介入主義的な動きには国有化の発想はないものの、広義には一連の政策は安全保障を強化すると謳うのです。前述した米インテルのケースの場合は、まさに米政府の提案を受けての行動であり、結果、インテルの投資額も5年前の倍に膨らむと見る一因となっていると云うのです。つまり中国を除き、高圧的な政府が企業心理を痛めてはいない。が、そうした行為は長期的に見れば3つのリスクがあると云うのです。

その一つは、相反する目標に直面した国家や企業が進むべき最善の方向性を見いだせないこと, そして二つは、効率性とイノベーションの低下です。つまり、世界規模のサプライチェーンの二重化には膨大なコストがかかること。そして将来より致命的なのは、競争が弱まることを挙げるのです。つまり多額の補助金を受けた企業の力は衰える事になると云うのです。
最後のリスクは、縁故主義(Cronyism)がやがて経済界と政界の腐敗をまねくことと云うのです。企業は政府を思い通りに動かし、優位に立とうとする。米国では既に境界があいまいとなり、企業の選挙への介入が増えている。一方、政治家や官僚は資金をつぎ込み希望を託した特定企業を引き立てるようになると。つまり、何らかの事態が起きるたびに介入して衝撃を和らげたいと思っても、政財界の関係者を断ち切ることはできないと指摘するのです。

つまり、高圧的な政府と云う新スタイルにこの信奉者が願うのは繁栄や公正さ、安全だが、手に入るのは非効率や既得権益、そして孤立だけという結果を招く可能性の方が高いと云うのですが、自立した企業こそが尊敬されるという事でしょうか。まさにThe Economist魂って処です。

・米巨大IT企業とバイデン政権
序で乍ら、デジタル化が進むと企業の投資は工場・店舗と云った有形資産からソフトなど無形資産に重点が移り、一方、M&Aを繰り返し, 事業領域を拡げているも、雇用を生む力は小さくなっているとされる処です。つまりデジタル革命はアイデイアを生む少数に利益が集中する「勝者総取り」を招き勝ちで、まさに資本主義の基本的な見直しが不可避となる処です。

ただ、かつて独占が問題視された石油や電力とは異なり、今や、高度Digital technology を以ってテック大企業は意思疎通の手段を握る処、周知の通り昨年1月6日、トランプ支持者が米議事堂を襲撃した際、彼らの情報発信を封じたのはフェイスブックやツイターなどSNS(交流サイト)でした。勿論SNSが広げる偽情報は民主主義をむしばんでもいる処、今や民主主義の意思決定で、民間企業が政府に匹敵する影響力を持つに至っています。つまり、巨大企業と大きな政府の争いは、誰が富を集め、誰が言論を主導するのかと云う根源的な問いを発する状況にある処です。その点では、民主主義を守るために政府や巨人企業とどう向き合っていくべきか、問われだしている処です。 

因みに、バイデン政権は、M&Aを繰り返して事業領域を広げている米グーグルなどITテック企業に対する監視の目を厳しくする処、1月18日、米FTCと司法省は企業のM&A審査に関する指針の改定を発表しました。つまりIT企業の巨大化が進む中、競争が乏しくなり、消費者や労働者が不利を被っているとして、実状に沿った指針に見直し、厳しく審査すると云うのです。(日経、1/19、夕)彼らはM&Aによって、より魅力的な製品やサービスを消費者に提供してきていると主張するのですが。勿論、上述、bossy state問題とは異なる話しながら、要は「政府と企業の関係」が今の米国で注目される事情に関心が向く処です。



おわりに 北京冬季五輪と習政権のメンツ

北京冬季五輪は2月4日(土)から20日(日)で、開催まであと一週間です。無事の開催を念じる処です。が、現地からは、中国政府による大会関係者への統制強化の報が連日伝わる処です。勿論、コロナ禍に覆われての開催とあって、関係者はその防疫に大わらわという処でしょうが、観客は中国居住者のみとする方針が公表された以外、今なお観客動員規模、チケットの販売方法、コロナワクチン接種の有無などの入場条件は正式には公表されておらず、統制色が日ごと強化される様相です。

詳細を決定できない背景には、感染力の強い変異型「オミクロン型」などの拡大懸念があるためで、中国政府は「ゼロ・コロナ」政策の徹底を進める処、足元では感染が拡大し、地域によってはロックダウンに追い込まれてきている処もある由。一方、無観客やごく少数の観客を入れる形式となれば自らが誇ったコロナ対策で感染を抑え込めていない、とのイメージが広がり、国威の失墜につながりかねないとの危機感もある為で、当局は観客動員と「ゼロコロナ」を両立させるため徹底した感染抑制策を打ち出していると云うものです。

こうした状況に加え、周知の新彊ウイグル自治区などを巡る人権問題で世界的に対中批判を呼ぶ処、以って米、英、カナダ、豪州、などは政府外交団を五輪に派遣しない、つまり外交ボイコットの決定を発表する処です。又、いわゆるアクテイビストによる政治的発言に対しては処罰を科すとしていることもあって極めて厳しい環境となっているとの由ですが、更に、ここに至ってロシアのウクライナ侵攻の可能性も出てきたことで、緊張感の高まる処です。
そんな中、IOCのバッハ会長が25日北京入りした由ですが、彼の宿泊先は公表されず、これもアクテイビスト等の彼への接近回避のための中国政府の措置でしょうか。
日本政府も閣僚らによる政府代表団の派遣はなしとの決定ですが、習指導部にとっては欧米への対抗という観点からも、成功裏の開催を演出する必要が高まる処ですが、まさに摩訶不思議の政治色一色に染まる北京五輪。これが平和の祭典と呼べるのでしょうか。

そんな中、中国政府が17日発表した2021/10~12月期のGDP(実質)は前年同期比4.0%,前期からは0.9ポイント減速です。これは「ゼロ・コロナ」政策を受けて消費が伸び悩んだほか、石炭高騰に伴う電力供給不足で、各地の工場が操業停止を余儀なくされたことの影響とするのです。
1月14日、デンマーク、オランダ両政府はそれぞれ政府外交団の派遣は、しない決定をした旨発表しています。 以上 (2022/1/27)
posted by 林川眞善 at 21:36| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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