2020年05月25日

2020年6月号  ジョー・バイデンJr. 見参 - 林川眞善

目 次
  
はじめに  ジョー・バイデン Who ?

第 1 章 2020 米大統領戦、戦いの構図  
             
1.‘危機’に便乗した再選足固めのトランプ・コロナ対策

2.今次大統領戦で求められるは ‘有事の指導力’

第 2 章 バイデン政策の基本と可能性

1. ‘アメリカを取り戻す’

(1)バイデン政策の枠組み
① 外交政策
② 経済政策 ―・無保険者救済 /・雇用の回復
(2)問われる民主党政策の独自色

2. メデイアに映るバイデン氏の可能性 

おわりに 緊急事態宣言延長で思うこと

・緊急事態宣言/・政策のトリアージ

[ 付属資料 ] 抄訳 バイデン外交政策
― 「アメリカを取り戻す」  
(Foreign Affairs, March/April 2020)

            ---------------------------------------------------

はじめに  ジョー・バイデン who ?

コロナ災禍で世界の生業が大きく変わる中、あと半年に迫った米大統領選の行方は世界にとって最大の関心事です。1971年、ニクソン大統領が金・ドル交換の停止を決定し、世界経済のシステムを変更させたように、又2017年、トランプ大統領の台頭は新たな米中対立時代を演出するほどに、米大統領選は言うまでも世界最大の権力者を選択するものです。

さて、今次選挙では、共和党候補は勿論現職大統領のトランプ氏。その対抗馬となる民主党の候補は、4月8日、最強のライバルとされていたバーニー・サンダース上院議員が撤退を表明したことで、バイデン前副大統領のprimaryでの候補指名が確実となり、その結果、2020米大統領戦は、バイデン氏が民主党候補としてトランプ氏に挑戦する構図が整いました。(最終的には8月の民主党員集会で決定)
そこで前号で約束した通り、本論考はバイデン特集としました。トランプ氏は云うまでもなく現職大統領として毎日、メデイアに現れ米国、世界にあまねく知られる存在です。が、バイデン氏についてはオバマ政権での副大統領と云うことの他、正直、バイデン who? です。

・バイデン Who ?
ではバイデン氏とは、どのような政治家か、彼の実像を探る事とします。バイデン氏(1942年生、77歳、デラウエアー大、シラキュース大ロースク-ル)は、1973年、被選挙権ぎりぎりの30歳の若さで上院議員に。議会の主要ポストを歴任し、2009年からは、オバマ前大統領の副大統領として8年間仕える実績をもつ国政44年のベテラン政治家で、その政治姿勢は労働者層に寄り添う「ミドルクラス・ジョー」をアピールする処です。
 
その原点は、生まれ故郷のペンシルベニア州の地方都市スクラントンにあり、石炭業が衰退し、ボイラー掃除や中古車販売で生計を立てた父親の背中を見て育ったと云われています。民主党中道派として自由貿易を支持するなど、共和党に近い側面を持つ、「超党派の政治家」と評される一方で、民主リベラル派からは「妥協的」、「変化を期待できない」との懸念の声も伝わる処です。尚、彼は1987年、2008年の大統領予備選に立候補したものの途中、撤退しています。

さて、そうした折、彼が3月号の米外交誌 Foreign Affairsに‘ Why America Must Lead Again ’ と題した論文を寄稿していたこと、承知しました。その内容は予て彼が主張する ‘この国を取り戻す’ を映す論文です。オバマ大統領と歩んだ8年間をレビューし、民主主義の再生、中間層の再生を訴え、外交面では同盟国重視を訴えるもので、バイデン氏こそが世界をオバマ時代に戻すことができるとの期待を、広く抱かせる処です。まさにポスト・トランプのアメリカに期待する政策論です。勿論、トランプ氏が大統領を務めたこの4年間、米国自身、そして世界各国との関係は根本から変わってきました。国内ではこの間に進んだ社会的、政治的分断は極めて深く、仮にバイデン氏 が大統領となったとして、次の4年でこの分断が、改善に向かうものか、見通し難いともされる処です。(後出 Financial Times)

ただ、そうしたバイデン氏の言説等を巡る批判も今、急速に変化し出す処です。 と云うのも、これまで、トランプ氏の絶対有利を裏付けてきた ‘経済’ が急速に悪化、後退しだしてきたからです。つまり、今年1月末以降、COVID-19感染が急速に拡大、その拡大抑制策としてヒトの移動が規制されたことで、市民生活はもとより、米経済は急激な減滞、危機すら呈する状況(注)となり、現職大統領トランプ氏の絶対有利とされてきた環境は遠のき、今では危機下の選挙戦として,バイデンVトランプは互角の戦いになる様相です。

(注)減速米経済の実際:4月3日、米労働省発表の3月雇用統計では景気動向を敏感に映す
非農業部門就業者数は前月比70万1千人減少。就業者の減少は2010 年9月以来,9年半ぶり。
新型コロナで米経済は大幅な活動制限を強いられてきた結果で、過去に例のない雇用と景気の
悪化に、経済対策の執行が追い付かない様相。因みに、4月29日、米商務省が発表した
1~3月期GDPは、前期比年率換算、4.8%の減少、更に4~6月期は年率40%の減少が予測される処です。一方、4月29日、米FRBのパウエル議長は新型コロナウイルスによる失業急増で、経済の復元には時間がかかると、長期停滞のリスクを指摘する処です

さて本稿は、バイデン特集を意図する処、上述事情を踏まえ、第1章では大統領戦を巡る環境変化として、トランプ氏のコロナ戦略対応の現状をレビューし、第2章で、バイデン論文を下敷きに、トランプ氏との対比において、バイデン氏が目指す政策の可能性、問題、課題を整理し、併せてメデイアが伝える、バイデン氏の可能性を考察すすることとします。 尚、バイデン論文については抄訳ながら付属資料として末尾に付す事としました。


第1章 2020 米大統領戦、戦いの構図

1.‘危機’に便乗した再選足固めのトランプ・コロナ対策

上述環境にあって、大統領選挙を秋に控え、再選を目指すトランプ氏は、彼の最大の支持要因とされてきた‘経済’の停滞は何としても打ち止め、回復させ、自らの支持回復を焦眉の急とする処、2兆ドル超の規模の経済支援(注1)を持って、コロナ災禍で経営危機に陥った企業、所得危機に直面した消費者の支援に大車輪の状況です。その内容は、彼のこれまでの主義、主張とは相いれないほどに、まさに「急ごしらえの社会主義」(米コロンビア大、ウイレム・ブイター客員教授)に道を譲るが如きで、‘あのトランプが左傾化’ と巷間、関心の呼ぶ処です。とは言えその実態は、今次危機に便乗した再選のための足固めと云う処です。

  (注1)トランプ政権のコロナ対抗戦略推移
・3月6日:ワクチン開発支援等、83億ドル規模の支援対策 (尚、トランプ大統領は3月13日、
国家非常事態を宣言。)
・3月18日:総額1000億ドル規模の経済支援策 (コロナ無償検査、有給病気休暇、失業保健の
拡充、低所得者向け食糧支援、等)を決定
・3月27日:2兆ドル(約220兆円)規模の, 家計と企業に向けた大型経済対策を決定。これは
2008年の金融危機支援策(7000億ドル)を上回る数字。
・4月23日、中小企業の就労対策を柱とした4800億ドル(約52兆円)規模の追加対策決定、

とにかく経済の回復を、とするトランプ氏は、4月16日には、早くも市民の行動規制を緩和することとし,感染者が少ない地域から経済活動の再開を3段階で進める新方針を発表。
3月中旬からの厳しい外出規制の緩和に踏み切ったほか、 ムニューシン財務長官は合計2兆億ドル超の支援策をもって「6000万人分の雇用が維持できる」と強調、その受け皿となるインフラ投資等、検討開始を表明する処です。勿論、経済活動の再開はコロナの感染拡大のリスクと隣り合わせとなるだけに、緩和のタイミングには厳しい批判のある処ですが、あれもこれも‘再選’のためとする処です。

彼は自らを「戦時大統領」(War President)と位置付け、コロナの収束と早期の景気回復に向けた強い指導力をアピールする戦略を描く処、吹く風は冷たさを増すばかり。因みに5月8日発表の4月失業率は戦後最悪の14.7%と、大恐慌以来の水準。1か月で8人に1人が離職した計算で、米経済は雇用危機突入の様相です。この状態が長引けば世界経済も深刻な打撃を受ける事になるだけに、同氏にとって雇用の受け皿維持が焦眉の急となる処です。

2.今次大統領戦で求められるは ‘有事の指導力’

処で、トランプ、バイデン両者の戦いは、早くから「自国第一か、国際協調か」を基本的対立軸とされていました。(注2)

     (注2)現時点での両者のスタンスの違い
        [ バイデン氏(77)]        [トランンプ氏(73)]
      選挙スローガン: 民主主義の再生、中間層の復活   米国を偉大に(一般教書,2020/2)
      外交 :     国際協調重視 (パリ協定復活)    米国第一(パリ協定2020/11離脱)
     移民政策 :    受け入れ寛容           不法移民対策重視

が、今秋の大統領戦は上述、新型コロナ災禍の下で行われる事情を映し、伝統的な二項対立を以ってされる争いではなく、ずばり‘有事の指導力’を問う戦となってきています。つまり、コロナ対策の如何と云う事ですが、これが今次の大統領戦に向けての看板となる処です。

その点では、現職大統領として連日コロナ対策に向き合うトランプ氏には有利なポジション再びと、映る処です。とにかくトランプ氏にとってのテーマは、一にも二にも、足元の経済回復・再建。だが、現実に展開される景気回復への取り組みは上述(注1)の次第ですが、そこには ‘トランプ慣れ’ の手あかまみれの政治があるのみです。問題は、この行き詰まりを如何に克服するかでしょうが、まさに有事の指導力が問われる処です。

勿論、バイデン氏にとっても足元の回復はもとよりでしょうが、当然の事として彼には「トランプ後」の政策の如何が問われる処です. その点、前述 バイデン氏の政策は「トランプ後」のアメリカの姿として、責任あるアメリカ、国際協調を以って有事に応えるアメリカを体現せんとする、ものとなっています。そこで、当該論文と足元の実際とも併せ、選挙戦でのバイデン氏の可能性を探ることとします。

・民主党の結束力
尚、これまで民主党の結束力の如何が問題視されてきましたが、近時こうした環境は、バイデン氏にとってpositiveな様相に転じてきたようです。つまり、ここにきてオバマ前大統領、ヒラリー・クリントン上院議員、サンダース上院議員、等々民主党有力議員がバイデン支持を表明し出したことです。いうまでもなく反トランプで党内の結束が進み出した、と云う事でしょうか。選挙まで、6か月。その空気を更に高めていけるか、です。


第2章 バイデン政策の基本と可能性

1. ‘アメリカを取り戻す’

(1)バイデン政策の枠組み
バイデン氏政策は当然の事、「ポスト・トランプ」に照準を合わせる処、その基本軸は前述の通り、民主主義の再生を謳い、世界の規範としてSummit for Democracyを通じて民主主義の強化、そして国家間の連携強化を通じて成長を目指す事、外交については米国パワーの源泉として、中間層に添ったものとし、以って`アメリカを取り戻す’とするものです。
そこで、彼が目指す外交政策、そして今次の危機が浮き彫りした‘消えた雇用’の回復、そして国民皆保険問題への取り組みに絞り、トランプ氏との対比において考察する事とします。

① 外交政策: バイデン氏はトランプ外交に対抗する如くに論文一杯に、同盟国重視、国際機関との協調を訴え、自らその前線に立つと宣言しています。これが示唆するのは、云うまでもなく、トランプ慣れに浸った政治からの脱皮です。

トランプ外交は周知の通り、いわゆるdealを建前に、America firstとする点でトランプ米国との同盟関係は不安定と云え、例えば、日米関係について見れば、安倍・トランプ関係は良好とは言え、同盟自体は不安定と映る処です。例えば在日米軍駐留経費の日本側負担の交渉は、2021年3月末が特別協定の期限で、その後トランプ政権との協議開始が予定されていますが、諸般の事情に照らし、厳しいものとなること予想される処です。 尚、バイデン氏の ‘稼働’ で米国のTPP復帰が期待される処、トランプ氏が雇用面では米国にマイナスとのイメージを作ってしまっており、その辺りを如何に克服できるかが、課題と映る処です。

一方、欧州では米国との同盟関係の立て直しに、外交経験豊富なバイデン氏が必要とする声は強く、トランプ氏が忌避するNATOについては、バイデン氏は米国の安全保障の要と位置付ける処です。 尚、中国については、両者とも強硬姿勢にあり、トランプ、ライデンのどちらが大統領になっても米中の確執が和らぐことはないだろうとは大方の見方です。
つまり「不公正なことをして大国になった」との見方は民主党内でも共有されているとはいえ、根本は、習近平政権の最強国路線にあるとされその点、特段の変化はないと見る処です

尚、バイデン氏は今次コロナ対策について、「G7を中心に公衆衛生が整っていない国々を支援する国際枠組みの創設」を提案しています。その背景には金融危機や14年に米国で広がったエボラ出血熱への対策を当時副大統領として対処した経験が映る処です。更に、ひどい打撃を受けている国に手を差し伸べるべきと、イランへの制裁緩和をも提案する処です。つまりオバマ前政権で結んだイラン核合意を破棄したトランプ氏への意趣返しともなる処ではと、思料する処です。 ただ強権姿勢の首脳が幅を利かせる現在の国際社会で、融和の主張がどこまで通用するかですが、彼が主張するアメリカに期待したいと思う処です。

② 経済政策:コロナ危機で新たに大統領戦での争点となって来たのが経済再建。バイデン氏は再生可能エネルギー、高速通信網などに10年で1.7兆ドルを投資すると公約する処、急増が予想される失業者の受け皿とする狙いとも伝えられる処です。この点は前出トランプ政策と対抗するものですが、両者とも、経済の推移の如何次第では更なる政策の見直しがあるものと伝えられる処ですが、この際は、危機を象徴する失業問題、雇用の回復問題、これにリンクする形で指摘されだしている医療保険問題の二点に絞り考察します。

・無保険者救済:米国では全国民を対象とした公的保険制度はありません。雇用先の企業が提供する民間医療保険への加入が一般的で、今次の危機で不振に陥って企業が解雇するとなると、保険費用は自己負担となり、無保険者に転落する事ともなるのです。今次の危機で問題が露わとなったのが無保険者問題で、現在無保険者は約 2900万人と報じられています。その点で、11月の大統領戦ではオバマケアの扱いが焦点となると見られる処です。

その点、バイデン氏はオバマ政権で、同政権が推進した医療保険制度(オバマケア)に関わってきたこともあり、その拡充を公約する処、その目玉は不法移民を含むすべての米国民に開かれた公的保険制度の創設を狙う処です。この問題では国民皆保険をと、大胆な改革を掲げる民主党急進左派のサンダース氏の存在感は大きく、バイデン氏はサンダース氏と政策調整を図るとしており、その行方は極めて注目される処です。 尚、トランプ氏はオバマケア撤廃を主張し、疾病対策センター(CDC)の予算を削減してきており、不利な風の吹く処です。 ただ、トランプ政権は無保険者でも治療を原則無料で受けられる制度作りを進めていますが、これは特例措置としており、医療保険への公的関与を縮小するトランプ氏の考えは変わらずと、見られています。

・「消えた雇用」の回復:今次のコロナ危機で、消えた雇用の回復が大きなテーマとなっています。既にみたように、米経済の6月期、GDPは40%の減少、失業率が20%に達するとされる中、バイデン氏はこれまでトランプ大統領に対し、格差問題をぶっつけ「恩恵が中間層に行き渡っていない」と迫ってきました。然し、好調な経済環境の下では盛り上がる事もなく推移してきましたが、今次のコロナ危機で消えた雇用の回復が大きなテーマとなって来たのです。 

バイデン氏は、そこで朝鮮戦争下で成立した国防生産法をよみがえらせる構想を打ち出す処です。これは困窮する中小企業への融資を政府が金融機関に命ずると云うものです。そして、これは民間活動に介入したくない、として医療品調達で国防生産法を適用するのに否定的だったトランプ氏との差別化を狙いとするものでした。処が、トランプ氏はGMに人口呼吸器の増産を命じてからは、ためらいなく国防生産法を使い、企業に指示を出すようになっています。それはバイデン氏の独自色を見えにくくする処、それこそはトランプ氏が現職の強みを生かしコロナ対策を選挙の看板とする処です。

いずれにせよ、金融危機時の最悪期(2009年10月には10%)を超える激しい雇用環境の中で、選挙戦は展開される事になるだけに、経済再建が最大の争点となる処、両者の評価は、今後の税制、投資と通商も絡めた政策の再構築の行方如何とみられる処です。

(2)問われる民主党政策の独自色
処で、コロナ危機対策としてトランプ政権が打ち出す支援策の多くは、先に触れたように、トランプ政治の左傾化を示唆する処です。3月上旬には考えられなかった事でしたが、トランプ氏は低所得層への支援、医療保険等、社会保障面に多くを配慮するものとしてきており、彼自身、忌み嫌う社会民主主義に近い政策を次々に打ち出してきています。以ってトランプ政治の左傾化、とされる処です。もとより彼への支持票集めの作業と映る処ですが、まさにコロナ危機によって米国は、民主党、とりわけサンダース上院議員らリベラル派が考える世界のあるべき姿へと変貌する様相にあるとも言え、危機が齎した与党共和党のリベラル化とされる処です。さて、この点、民主党として共和党との差別化を如何に明示していけるか、上述 国防生産法の対応も含め、基本問題と映る処です。

序で乍ら、トランプ氏が全米に対して国家非常事態を宣言した3月13日以降、選挙活動がデジタル空間に移っています。つまりコロナ対策として、選挙のためのイベントも個別訪問もできず、オンラインイベントとか、スマホ重視とか、要は、選挙のデジタル化で、SNSではトランプ氏の発信力が絶大ともされている事、周知の処です。勿論、今後の「デジタル選挙」でどう集票に結び付くかは未知数ですが、当該選挙の在り方が変わっていくことは間違いなく、つまりデジタル選挙に備えた選挙戦の再考が、求められる処です。

2.メデイアに映るバイデン氏の可能性

さてメデイアが映すバイデン評ですが、その一つ、Financial Timesのcommentator, Gideon Rachman 氏は3月10付同紙で、バイデン氏が仮に大統領になっても、それは新型コロナに負うもので、共和党員はその勝利は正統な選挙の結果ではないとして一蹴するか、陰で米国を操っているデイーブステートによる陰謀の産物だとさえ云う可能性がある、と云うのです。Biden cannot turn back the clock、つまりバイデン氏が大統領に就いたとして、トランプ氏が4年間で変えてしまった米国、そして米国と世界各国との関係は、変わることはないと指摘するのです。バイデン政治の可能性を質す処、 その内容をフォローします。

まず米中関係です。今、米中関係は世界秩序の中心だが、トランプ政権はその関係を大きく変えてしまったが、バイデン氏が大統領になったとしても、その米中関係が根本的に修復される事はないと断じるのです。トランプ前の米国で保護主義を主張するのは民主党でした。が今では民主党も共和党も保護主義に傾いていて、中国を単に経済的 ライバルであるだけではなく、テクノロジーと地政学の側面から世界の覇権国としての米国の地位を脅かす存在と、ますます認識しつつあると云うのです。従ってトランプ前のようなグローバル化の流れは大統領が変わっても復活することはないと見るのです。 そしてバイデン氏が大統領に就いた場合、民主党政権として人権問題と南シナ海を巡る領有権問題もクローズアップされてくると見込むと、両国の緊張は一層高まるとみられるというのです。

もう一つは中東への関与の可能性です。中東や欧州では、米国が中東での指導力を発揮することが期待されているが、バイデンが大統領に就いたとして、これに応えることはないだろうと云うのです。と云うのも米国の中東におけるプレゼンスの低下は、オバマ政権がイラクからの米軍撤退を決め、シリア内戦には介入しないとの方針を決めた時から始まっていたことで、バイデン氏は中東にもっと慎重で、アフガニスタンへの増派にも反対していた経緯があり、又トランプ政権が離脱を決めた、2015年に成立したイラン核合意への復活も、イラン政府の対米警戒感の強さからは難しいというのです。と云う事でバイデン氏が大統領に就いたとしてもトランプ時代の課題、弊害は続く、と見るのです。

バイデン氏が大統領になれば、人権と民主主義の重要性を改めて強調する事で、米国は再びリーダーシップを発揮していこうとするだろうが、世界で人権を主張しようとも、すぐに信念よりも利害重視の現実的な政治とぶつかり、妥協を余儀なくされるだろうと、云うのです。

世界的にナショナリズムと反自由主義の勢いが増す処、ナショナリズムはトランプ政権誕生前からはじまっていたもので、トランプが退任したとしてもそのトレンドは続くだろうとした上で、中国、ロシア、ブラジル、インド、トルコ、サウジでは依然として反自由主義的国家主義の指導者による国の支配が続き、米国の相対的支配力の低下も続くと指摘するのです。そしてバイデン氏が大統領執務室に座った時、そこから見える世界が、オバマ氏が去った時から大きく変わったことを実感するだろう、と云うのです。

さて彼はテーマ通り、バイデン氏でも時計の針を戻すことはできない(Biden cannot turn back the clock)と云うのですが、コロナ禍後の世界経済の姿を思う時、バイデン氏の基本軸はより戦略性を担っていく事になるのではと思料するのです。


おわりに 緊急事態宣言延長で思うこと

・緊急事態宣言:5月4日、安倍首相は4月7日の緊急事態宣言を5月31日まで延長する旨を決定、併せて、感染拡大予防のためにはヒトとヒトの接触を回避する事必定と、5月中のstay homeを国民に要請しました。勿論筆者もstay homeを続ける処です。が、思うに、これまでは国内感染を抑制し、医療現場の逼迫を招かないための方策を最優先してきましたが、今後は感染を抑え込みつつ、企業の事業継続や就学、文化活動などとの両立を探る段階に入っていくはずです。つまりは出口戦略ですが、安倍首相のコメントでは何ら触れられることのなかった、その姿勢に極めて違和感を覚えるのでした。
 
この点、当日の諮問委員会が終わっての記者会見で記者に問われた尾身会長は、‘自分たちはあくまで医療の立場で提言するもので、経済や社会学の専門家らを加えて幅広い知見を活かす体制とすべきとは云ってきた’ ・・・と、云うだけで、要は、stay homeの提言を安倍首相が決定したもので、その結果、企業のこと等、我々には関係ない事と云わんばかりと映るのでした。筆者の友人読者からも、もはや首相のピンチ・ヒッター、諮問員会メンバーの入れ替えが必要ではと、声の届く処です。

序で乍ら、同「諮問員会」メンバーは16名、そのうち14名が男性医療専門家、残る2人は女性で弁護士です。この数字も問題です。因みに、5月3日の日経が伝える国連事務総長、グテレス氏の「コロナ危機:私の提言」は、今の諮問委員会の姿を批判するが如きでした。
つまり「・・新型コロナ・パンデミックは男女間の不平等など、あらゆる種類の不公平を明らかにし、助長している」と。そして、「パンデミックが引き起こす深刻な経済の苦境の最も明確な被害者は女性だろう。働く女性に対する不公正で不平等な処遇は、私が政治の世界に身を投じた理由の一つだ」と云い、「感染の第2波や深刻な人手不足、社会不安など最悪の状況を防ぐための政策決定が行われる場に、女性がいるべき」とも訴えるのでした。

・政策のトリアージ:その前日の5月3日、憲法記念日には、安倍首相は例年の通り、憲法改正を進める民間団体に向け、改憲への挑戦は必ずややり遂げるとメッセージを送り、その際、緊急事態の国家や国民の役割を憲法にどのように位置づけるかは極めて重要で大切な課題と、緊急事態条項に言及するのでしたが、その心は2018年自民党改憲案に盛り込まれた「緊急事態条項の創設」です。つまり、今次のコロナ対応で関連法案の審議が進まず、そこでこの際は、コロナ対応として出された緊急事態宣言を、改憲論議を進めるきっかけとならないかと、探る動きを映すものとされるのですが、コロナが問う改憲と、云った‘様’です。
憲法を時代に即したものとしていく為の議論は良としても、スケジュールありきで、国民が納得しうる十分な議論も示されないまま、take chanceで動こうとする姑息な姿は、今次国会審議見送りとなった「検察庁法案」をも含め、‘私’のための政治行動のほかなく、安倍首相への不信、安倍政治の危険さを痛感させられる処です。今、日本には何が必要か。決して改憲にかまけていられる時機ではない筈です。 

そこで、ある意味、動きの止まった 今、有事とされる今次の危機にも照らし、政策のトリアージ、つまり政策の優先順位を見直し、国家百年の計を打ち出し、国民を勇気づけるべき時ではと、痛く思う処です。(2020/5/23 記)






[ 付属資料 ]   抄訳 バイデン外交政策 -「アメリカを取り戻す」

                   出典:Why America Must Lead Again
                    By Joseph R. Biden, Jr. 
[Foreign Affairs, March /April,2020 (P.64 ~76)]
                   
0.はじめに 

2017年1月20日以降、米国はあらゆる側面でその権威を失ってしまった。トランプ大統領はけなす事(belittle)しかせず、安全保障面では当該専門家、外交団等々を追い払い、時には同盟国をも忌避し、北朝鮮からイラン、シリア、更にはアフガン、ベネズエラ と対峙していくとは言え、徒に時間を浪費する様にある。

トランプは米国の友好国に対して貿易戦争を仕掛け、結局は米国国民、とりわけ中間層を傷つける一方で、民主主義が持つ価値、それは国家に力を与え、国民の一体化をもたらすものだが、それを大きく毀損させてしまった。気候温暖化問題、移民受け入れ問題、世界に拡散する伝染病問題等々、米国が直面するグローバルな問題を軽視し、米国が貢献してきた国際的民主主義システムを崩壊させてきた。そのため後継大統領は、そうした問題を取り上げていかなければならない。それは、まさにサルベーションとも云うほかなく、もはや時間は待っていない。 
民主主義、自由主義こそが、フアシズムや独裁政治を乗り超え、自由に満ちた世界を創造した。まさに民主主義の勝利であり、この民主主義こそが、我々の将来を規定していく。


1.民主主義の再生 ― Renewing democracy at home

・最初に手掛けること:  まず、しなければならないことは、民主主義の修復とその活性化(repair and reinvigorate our own democracy)であり、我々と共にある民主国家との同盟関係の強化だ。米国の力は世界の進歩を勇気づけ、国内にあっては労働者の社会参画の強化を図る処にある。そのためには必要な制度の強化を進め、例えば、教育制度の強化を通じて人材の育成を図り、法治国家として人権の確保、Voting Right Act(投票権法, 1965;公民権法の一つ)の見直しを通じて国民の知る権利を担保していく。

勿論、民主主義こそが米国社会の土台であるばかりか、我々の力の源泉となるものだ。国家として、米国は再び指導的役割を果たす十分な用意がある。その点、大統領として、その目的のために、これまで我々が堅持してきた民主主義が持つ価値の再生を目指し、前進を図る。そのためにも、トランプが進めてきたナンセンスな行為、例えば国境で家族を離反させるような容赦ない非情な政策を廃止し、有害な収容政策や、移動の禁止を取り消し、併せて、Temporary Protected Status制度( 2014年、不法移民に対する一時的滞在許可、トランプはこれを停止している)や、弱者擁護政策の見直しをも進める。つまり、年間難民の受け入れを12万5000人とし、滞在期間延長の引上げについても、我々の責任と価値観に照らし見直す。軍事行動についても、拷問の禁止、行動の透明性を守り、オバマ・バイデン政権で取り上げてきた一般市民の犠牲をなくす一方、全政府レベルで世界の女性や少女の人権保護を図る。

これらのアジェンダを確実にするため、ホワイトハウが再び偉大な擁護者となって、民主主義の価値を維持し、報道の自由、参政権の確保、遵法精神を敬い、法的独立を高めていく。 こうした取り組みは、今始まったばかりだ。時間はかかるが、民主主義の価値向上、生活の向上を目指し、まず足元の国内から始めていく。

トランプのような特定社会のための政治ではなく、法律の強化と、国境の安全を図り、移民の人たちの尊厳に敬意を払い、彼らが求める権利保障等を確実とする。副大統領だった当時、エルサルバドール、グアテマラ等、中米各国の政府のリーダーの支持を得ながら7億5千万ドル規模の基金を以って、社会の荒廃、貧困への支援を果たしてきた。これからは大統領としての4年間、自ら先頭に立ち、40億ドルをもって、地域戦略の展開を図っていく。
更には、個人的利害にそった取引、ダーク・マネー、闇資金と云われるカネの流れ等、民主主義を蹂躙するような行為に果敢に対峙していく。また、米国の選挙における、不条理な資金の介入はもとより、外国からの資金が導入されていく事を、連邦倫理委員会を通じてチェックし、排除していく。要は選挙活動において不合理な資金の流れをふさいでいく。

・民主主義は世界のアジェンダ :米国の民主主義の基盤を強化するため、民主主義を世界のアジェンダとしていく。民主主義は1930年代以来今日まで、極めて厳しい状況に置かれている。米シンクタンクのFreedom House の調査では、1985年から2005年にかけて一貫して民主主義を堅持している国は僅か41か国、過去5年で自由主義を放棄した国は22か国だ。狡猾な政治の広がり(Insidious pandemic)は火に油を注ぐ様で、強権的為政者は分断を図り、人間の尊厳、民主主義を破壊する。近代米国史を見ていくとき、トランプこそは各地にクレプトクラート(Kleptocrat:泥棒政治家)のライセンスを振りまいてきた。
そこで、自分がホワイトハウス入りした最初の1年目には、米国がホストとなって「Global Summit for Democracy」を主催し、自由世界の諸国と共に民主主義の精神を確認しつつ、国家目標を相互に確認し、共に世界の民主主義と、世界の民主主義組織の強化を図っていく。

オバマ・バイデン政権が進めたNuclear Security Summitの経験に照らし、秩序崩壊への対抗、強権政治への対抗、人権尊重の堅持(Fighting corruption, Defending against authoritarianism, Advancing human rights)の三点についての取り組みを最優先する。この米国のサミット公約は、大統領令を以って担保し、国家安全保障と民主主義の責任の中核に置くこととし、国際金融システムの透明化を進め、国際的連携の下、不法なタックスヘブンを追求し、隠匿された資産を捕獲し、同時に国家リーダーの不法行為を追求することとする。
 
民主主義のためのサミット会議(The Summit for Democracy)には、世界中から市民社会の協議組織をも呼び込み、民主主義を防衛する事とする。当該メンバーには技術系企業、有力なメデイアにも声を懸け、責任ある組織を組成し、民主主義社会が備える利点を押さえ、言論の自由を確保する事とし、企業もメデイアにもそれぞれ持てる機能の有効な取り組みを図る事とする。 もとより、関係企業の行動が、結果として、中国のような監視国家を生むことになってはならい。


2. 中間層に添った外交政策 ― A foreign policy for the middle class

二つ目は、バイデン政権の使命として、米国がグローバル経済の中で成功を果たしていけるようにしていく事にある。そのためには中間層の利害に添う外交政策が必要だ。とりわけ、将来共、中国等に競争力と云った点で勝利していくためには、イノベーションを高め、競争力を高めていく事が欠かせない。その点では、世界の民主諸国と力を合わせ、無謀な経済行動を抑え、不公正な状況を制御していく。

経済の安全確保とは国家安全保障に繋がる。米国の通商政策は国内に根差すものとなる処で、それは国内にある膨大な資産とも云える中間層の強化を意味する。そして国家の成功の果実を平等に分かち合え、人種、性別、居住地、宗教、身体条件、等々に関係なく享受できる事を意味する。そのためには、膨大なインフラ、道路、エネルギー供給システム、更には教育への投資が必要だが、そのためには、現在の学生に21世紀の仕事に必要とされる技術取得の機会を提供する。それは独身米国人が質の高い健康保険に加入する事を可能にし、最低賃金の引き上げであり、具体的には時給15ドルの引き上げだが、新たに1千万の雇用創出につながる。それは環境対応を含めた、米国経済のまさにclean economy revolution、を促すこととなる。

それは大統領を目指すにあたって基礎(cornerstone)となる処、調査・開発に向けた投資の推進、つまりはイノベーションに注力していく事で、中国の後塵を拝するような懸念を消し、クリーン・エネルギー、コンピューテイング、AI、更には5G通信、ガン克服競争にも一歩先んじる処となる。そして中間層に添った米外交政策とは国際経済のルールを確かなものとしていく事で、米国ビジネスの成長に寄与する処となる。

世界人口の95%超の人々が国境を越え、生活している状況を鑑みるとき、これに蓋をすることではなく、米国内で最高の状況で製品を作り、最高の条件で世界に供給していく事が求められる。つまり、米国製品を毀損するような貿易障壁を引きさげ、保護主義に向かうような事態を食い止める事だ。それこそは、第一次世界大戦後の不況が、第2次世界大戦に繋がっていったことを想起しなければならない。
問題は、誰が世界貿易を規定するルールを作り、誰が労働者の権利を守り、環境や透明性を担保し、中間層の賃金を確保していく事だが、勿論、これを主導できるのは中国ではなく米国だ。大統領として、米国民への投資を進めていく。そしてグローバル経済維持のため、然るべきシステムを確保するまでは、新たな通商協定の必要はなく、労働者や環境団体の協力なくして交渉などする用意もない。

・中国対応: 今、中国は新たな挑戦を仕掛けてきている。中国はglobal reachを更に伸ばし、中国化を進めんとしている。トランプは国家安全保障の視点から、米国の友好国たるカナダやEUまでも、無責任な輸入関税をかけ、まさに米国経済自身に脅威を与えている。勿論、こうした厳しい環境には、きちんと向き合っていく必要がある。

中国は、勝手に米国や米国企業の技術を奪っていく一方で、自らの国営企業への補助金を進めるが、もとより不公正な取り組みだ。こうした挑戦に対峙するためにも、米国は友好国との連携を高め、中国のこうした行為に対峙せんとする仲間とも連携し、人権擁護の視点をも含め、気候温暖化問題、核拡散防止等に向け、民主主義国家の矜持として、共に我々の持てる力を拡充していく。中国はグローバル経済を無視することはできない。我々は労働、貿易、技術、そしてそれらについての透明性ある規則を作っていく。それこそは民主主義の利害と価値を反映していく事になる。


3.国際協議の場に復帰して ― Back at the head of the table

バイデン外交政策のアジェンダは、米国が主導するテーブルに同盟国、友好国が一堂に会し、世界の脅威と映る事態への対応を考え、その行動に向けてのシステムを作る事にある。過去70年間、米国は、民主党、共和党の大統領の下、各種規則を整備し、協定を図り、今日迄、各国間の関係を律する集団安全保障や、繁栄維持のために国際機関を支持してきた。それもトランプまではだ。

仮に、トランプのような責任放棄の状況が続く事となれば、いずれか二つの事態を生ずることになる。 一つは、どこかの国が米国にとって代わるか、或いは、誰もそんなことに関与することなく、従って危機的状況の続くままに置かれていく事だ。いずれの場合も米国にとって好ましいことではない。勿論、米国のリーダッシップが絶対確実なものでもなく、間違いも犯してきた。米国の軍事力に依存してきこともあったし、間違った軍事力の行使もあった。ただトランプの外交政策は破滅的で、全くバランスに欠けた矛盾だらけの展開にあり、それは外交の役割を侮蔑する他ないものだ。

自分の使命は、米国民を保護し、必要とあれば軍の力も利用することもあろう。これこそは米国大統領の使命であり、誰しもこの国家最高軍司令官の機能を超えられるものではない。米国は世界で最強の軍隊を持ち、米国大統領として、その地位を確保するため必要あれば米軍援用の用意はある。その拡充のためにも投資を図り、今世紀に迫る挑戦に対応していく。勿論、軍隊の動員は最後の手段とするべきものでも、又最初の手段でもない。要は、米国にとって決定的な状況になり、力が必要となった場合は、その目的を明確にし、国民が納得する説明を果たしていく。

・外交こそ米国パワーの源泉 : これまで戦争を終わらせるため、我々は語られることもない血を流し、私財をも傾け、長い議論を重ねながら、アフガン戦争、中東戦争から米軍の引き揚げを進めてきた。勿論アルカイダも,そしてイエメンでのサウジが主導した戦争をも停止させてきた。

世界で、国内で、反テロリズムを貫かねばならない。然し、勝利なき戦いのために、米軍を徒に駐留させ続けることは、米軍の強化、再構築にとって障害となる事から、今後は有力なスマート体制を構築することとする。 規模的には、米軍の戦闘部隊1000人を10倍にし、その力を活用する一方で、地域共通の敵には地域部隊と情報技術を駆使、対峙していく事とし、少なからず軍の経済的、政治的維持を図りながら、国家利益のための進歩を図る事を考えていく。

以上はオバマ・バイデン政権の外交姿勢を映すものであり、その成功に誇りを持つ処、パリ協定、西アフリカのエボラ危機の抑制、イランとの核拡散禁止条例はまさに象徴的成果だ。外交とは単に握手をするだけではない。要は、地域を特定しながら関係を深め協働し、一貫した政策の下で進める、こうした考え方を原則として、米国外交の更なる向上に努めていく。

・NATO : 外交には信頼が求められる。トランプはその点では我々の信頼を裏切ってきた。外交政策の実行に当たっては、とりわけ危機の中では、‘国家(nation)‘の生業が極めて重要となる。トランプのように条約を次々と放り出し、政策を次々と裏切る行為は、世界における米国の名を傷つけた。

同時に彼は民主主義同盟国から米国を離反させてしまった。NATO同盟国に対して、ボールを打ちこんでいるのはその証左だ。 NATOは米国の安全保障にとって,その中核に位置付けられるもの。まさに自由民主主義の防波堤(bulwark)であり、強権、或いは経済的利害による連帯ではなく、忍耐、信頼、力、を与えるものだ。 大統領としては、我々の歴史的パートナーシップを再生させ、それを世界に根ざさせていく。

外交こそは、米国パワーの強化に欠かすことのできない第一の手段だ。クレムリンは強いNATOを世界の脅威と感じ、歴史上最強の政治的軍事連携とみている。 そうしたロシアの侵攻を阻むためにはこの軍事同盟を堅持せねばならないし、また、ロシアに対して国際協定を無視するような行動に対して示しを付けていく必要がある。プーチン大統領の泥棒政治(Kleptocracy)とも云える専制政治にも対抗していく。

要は、我々の価値や目標をシェアーできる国々、つまり北米、欧州の民主主義諸国、更に豪州、日本、韓国、更にはインド、インドネシアと関係を深め、米国の成功やパワー、グローバルな責任をもシェアーしていく。それは米国の将来をも決めていく事にもなる。勿論イスラエルとの関係も大切にする。南米諸国、アフリカ等、広く民主主義の輪を広め、それぞれの地域で相互協力も進めていく。

・米国の世界との約束 :再び世界の信頼を確実にするためには、米国がこれまで主張してきたことの実行がカギだ。具体的には2050年までに排気ガスゼロを目指すこと、つまりクリーン・エネルギー経済の達成だ。そのためには膨大な投資資金が必要だが、色々の手立てを擁してその目標に向かう。重要なことは,米国の排気ガスが世界の15%を占めており、この引き下げの公約を実施する事で、あらゆる手立てを通じて目標に向かう。併せてパリ協定に戻る事だ。そして世界の排気ガス規制のためのサミット会議を主催し、その目標達成のため強力な取り決めを進める。同時に、世界最大の温暖化ガス排出国、中国は、この化石燃料に補助金を出しており、この行動を規制していく事が不可欠だ。

一方、非核拡散、核安全保障については、今、米国は、その廃棄について交渉中で、声を上げるわけにはいかない。しかし、イランから北朝鮮、ロシア、更にはサウジアラビアに至る広がりにおいて、トランプは核拡散を広げてきた。新核兵器競争、核兵器使用については、大統領に就いたら、新時代にふさわしい武器規制協定の更新を進める。オバマ・バイデン政権はイランの核兵器入手を規制すべく非核拡散協定を以って臨んできた。しかし、トランプは軽率にもイランが核開発に向かう方向に誘導してしまっている。

トランプは、近時、イランのソレイマニ将軍を暗殺し、それで危険人物を排除したとしている。そして当該地域での暴動も止まると云う。だが今、テヘランには核の廃棄基準を廃止する動きがある。北朝鮮については、同盟国や他関係国とも連携し、交渉に当たっては権限を与え、ジャンプスタートを目指す。テーマは非核化であり、New START条約の延長問題だが、米ロ間の戦略的安定の礎石となる新兵器の制限に通じるもので、更に核兵器削減に向け、北朝鮮と交渉を進めていく。

今後の技術開発について、5GやAIは、各国それぞれの事情に応じて開発、活用しているが、 米国は、これら技術が将来的に民主主義と世界の繁栄に貢献するよう目指していく。新技術は我々の経済・社会の再設計を促す処で、法律やより高い倫理観をも持って進められるべきで、デジタル規則が中国やロシアによって書き換えられることは絶対に阻止すべきと考える。そして、米国は責任を持って、それら技術が将来的に民主主義社会をより豊かなものとしていく事を目指す。まさに野心的な目標と云え、如何なる国も米国なしでは達成できない。
 

4.世界の前線に立って ― Prepared to lead 

プーチンはliberal ideaなど、もはや陳腐なものと云う。それが持つ力に彼が脅威を感じている事の証左だ。  
今、自由世界が直面しているあらゆる挑戦に対峙していくため、国力を高め、その結束を図ることが求められる処、それこそは米国に課された使命であり、米国を置いて、如何なる国も担えるものではない。米国こそは自由と民主主義のチャンピオンで居続けねばならない。 国家の信頼を高め、将来に向け希望を絶やすことなく、強い決意を持って前進していく。
以上
posted by 林川眞善 at 15:22| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください