2018年06月28日

2018年7月号  グローバリゼーションの行方 - 林川眞善 

目  次

はじめに `Post Trump’ に備える     

1. トランプ米国 対 中堅国家   

(1)Middle powers of the world must unite  
(2)日欧関係の進化が意味する事
              
2.世界経済は新たなグローバル化に向かう ・・P.7

(1) グローバリゼーションは新時代
(2) Digitalization と地勢環境
(3) 新時代のグローバル化とその課題

おわりに グローバリゼーション、民主主義、国家主権
                                
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

はじめに ‘Post Trump’ に備える

・壊し屋トランプ
6月11日付、夕刊各紙に掲載されたメルケル独首相がトランプ米大統領を説きふせんと迫る状況写真は、カナダで行われたG7サミット会議(6月8・9日)での場面写真ですが(実際は9日午前にドイツ政府が提供し、APが流したものの由)、まさに映画の一コマを思わせんばかりとするものでしたが、これが何よりも自由貿易の危機を映す姿と、世界を駆け巡ったとされるものでした。そして、その直後、議長国カナダのトルドー首相が取り纏めて発表したサミットの共同声明について、トランプ氏は「保護主義と戦い続ける」との文言が盛り込まれているとして、当該声明を拒否するとツイッターに書き込んだという由ですが、全会一致でない首脳宣言は初めてというものでした。
1975年11月、’73年のオイルショックによる混乱の収拾、それに続く世界的不況への対策等について話し合うため、自由主義陣営の主要先進国による初のサミット会議が仏ランブイエで行われていますが、それから40余年、それがトランプ米大統領によって混沌の淵につき落とされた、まさにそんな様相を映す処です。

米国がEU諸国や日本、カナダなどと維持してきた同盟関係は、世界の安定に欠かせない「国際公共財」と云うものですし、もとよりそれは米国の国益の支えでもある筈です。が、残念ながらトランプ氏にはそういった発想はうかがえません。
つまり,トランプ政権が進める保護主義貿易政策は、結局は同盟国に対してまでも貿易インバランス解消の為として高関税の実施を始めるなどで、先進国仲間に深い亀裂を齎し、今やG7もG6プラス1と言われるほどに「西側同盟の終焉」かと思わせるような状況を露わとしてきています。これまで戦後世界は大国米国が主導する自由主義貿易を枠組みとして成長発展してきたものですが、その米国が180度異にした、後ろ向きの保護主義的行動に転じたため、グローバル経済の枠組みが変調をきたし、自由貿易の基本的枠組みと云うべきWTO体制をも揺るがすほどになってきたと云うものです。 序でながら、そうした事態は、廻りまわって中国の覇権主義に力を貸す処です。

先の‘パリ協定からの離脱’、‘イラン核合意’からの離脱‘、‘TPPからの離脱’、‘NAFTA協定の改正’、更には国連人権委員会からの離脱、等々トランプ氏はアメリカ・フアーストをもって国際的連携体制を忌避し、それでなお「尊敬されるアメリカの再生を目指す」と豪語?していますが、エコノミスト誌(6月9日)は、そうした彼を`Demolition man’(壊しや)と称し、彼の行為は取り壊し作業で使う鉄球を同盟国にぶち当てる様だが、コスト・ベネフィットから見て米国や世界にとって極めて不合理かつ危険なことと、訴えていたのです。(注)

   (注)・・・ From a man who exults in breaking foreign -policy taboos, they would be
truly remarkable. But are they likely? And when Mr. Trump seeks to bring them
about with a wrecking ball aimed at allies and global institutions, what is the balance
of costs and benefits to America and the world?

こうした中、6月14日IMFが公表した対米審査概要では、米国の中期経済見通しについて大型減税と歳出拡大で2018年、2019年ではトランプ政権が目指す3% 近い成長を予想するも2020年以降、実質成長率が大きく減速するとの予想を示しています。(2018:2.9% 2019:2.7%, 2020:1.9%,2021:1.7%, 2022: 1.5%,2023: 1.4%)そしてトランプ政権が仕掛ける「貿易戦争」も米経済のリスク要因と強調していたのです。勿論、米財務省はこれに反論するところです。

同様に世銀も世界経済の来年以降の減速を予想していますが、さて、いまリーマン危機時、世界は団結して、政策協調や反保護主義を打ち上げ、危機脱出を図ってきましたが、トランプ氏にかき回される環境にあって、世界が不況に陥った時、世界は一つになれるかと不安の大きくよぎる処です。トランプ旋風でかき回される世界経済を如何にmanageすべきか、まさにAmerica first への対抗に世界はいま苦悶する処です。

・ポスト・トランプに備える
そうした環境ながら、もはや考えておかねばならないのがポスト・トランプ、トランプ後の米国経済であり世界経済の在り姿です。

つまり、世界経済の公共財とも言える自由主義貿易を基軸としたグローバル・システムがトランプ大統領の出現で否定され、彼が仕掛けた関税引き上げは貿易戦争の様相を呈し始めるなど、世界経済はいまstand-stillの様相にありますが、ではトランプ後、つまり最長2期、6年として、彼が去る2023年後には、元のグローバル経済に戻ることになるのかと言うと、そうは考えにくいのではと思料するのです。というのも世界経済はトランプ登場前からDigitalizationの急速な進行で構造変化が進むなか、新経済大国の中国が世界経済にフルに参加してきたことで更なる変化の中にある処ですが、従って今起きているトランプ現象も、そうした構造変化の流れの上での表出と思料されるからです。

もう一つは、東アジアを巡る国際政治環境の構造的変化が進みだした事です。先の米朝首脳会談の結果(弊論考特別号、6月13日付)、米朝の対立関係の解消が進み、米朝首脳のダイレクト対話が可能になってきた事で、これまでの様に、北朝鮮対応について中国に気遣いする必要がなくなった環境が生まれた一方、中国習主席が米朝会談を通じて北朝鮮金委員長の後見人役を果たしたことで中朝関係の急速な改善が進んできた事で、東アジアを巡っての新たな覇権構図が生まれてきたことです。つまり米中共に、自在の戦略を以って行動ができるようになってきたと云うもので、かつての「米ソ対立」に代わる「米中対立」の構図が指摘されるようになってきたと云うものです。因みに、目下世界的な貿易戦争に広がるのではと懸念されている米中貿易摩擦の実相とは、そうした環境変化で対中関税を控える理由がなくなった事で、トランプ政権が仕掛けた結果と云うものです。

こうした環境変化を踏まえるとき、トランプ後の世界経済がこれまでのように経験してきたグローバル経済に戻る事は考えにくいと思料するのです。とすれば、トランプ対抗戦略もさることながら、ポスト・トランプへの対応戦略が同時に求められる処と思料するのです。もとより、米中のはざまにあってこれから日本はどういった形を以って明日を切り開いていくか、大きな問題であること、予て筆者の問う処です。

さて、6月11日付Financial Times はその社説`President Trump goes rogue at the G7’で、G7で見せたトランプ大統領の‘狼藉’な振舞いについて、事態は想像していた以上に最悪だと評した上で ‘Other democracies must band together to resist global trade war’と、民主主義の先進諸国に向けて、グローバル貿易戦争に対抗して団結すべきと檄を飛ばしていたのです。 それに先立つ5月29日、偶々手にしたFinancial Timesが伝えるコラム` Middle powers of the world must unite ‘(中堅国家は団結を)は、そうした檄に応えうる一つと映る処、世界経済の構造変化への対応と云う視点を踏まえながら、America firstへの対抗軸としてG7の再生を視野に入れた、自由陣営の連携強化への道を提唱するものでした。

更に‘Globalization’、いまや忘れられかけた感のある言葉ですが、その‘Globalization’の行方を示唆する論考にも対面したのです。Foreign Affairs(May/Jun2018)に掲載あった元米クリントン政権で経済諮問員会議長のLaura Tyson 氏とMcKinsey のパートナーであるSusan Lunda氏の両者による‘Globalization is not in retreat’(グローバリゼーションはなお前進する)と題する論稿でした。それは現下のトランプ米国が指向する内向き姿勢を批判しつつ、急速に進むDigitalizationによりグローバル化の流れは止まる事はなく、同時にそれへの対応準備をと、提言するものでした。要は ‘トランプ後の世界に向けた準備を’ と云うものです。

そこでこの際は、現実の動向に触れながら、この二つの文献をレビューすることとし、今後の変化を見通す上でのlogicに寄与していきたいと思料するのです。


1. トランプ米国 対 中堅国家

・いま世界は関税報復合戦で貿易戦争の様相
3月8日、米政府がEU、日本を含む貿易相手国に対し貿易インバラランス解消のためと、鉄鋼とアルミ製品への輸入に高関税を適用、輸入制限措置を取っていますが、その狙いは中国にあったとされるものでした。果せるかな、前述、米中関係の環境の変化もあり、6月15日には中国の知財権侵害への制裁措置だとして500億ドル分の中国製品に25%の追加関税の7月からの実施を決定したのです。その際、トランプ氏は中国が巨額補助金を拠出してハイテク産業を育成する「中国2025」を名指しで批判し、「中国は不公正な手法で米国の知財や技術を得ており、もはや耐えられな」(日経6月16日)との声明を出しています。これに対して中国政府は翌6月16日、農産品などに同規模で高関税をかける報復措置を発表。EUも22日には先の鉄鋼・アルミ輸入制限への対抗措置として、28億ユーロ(約3600億円)規模の米国からの輸入品に対して報復関税を発動しましたが、ロシアも対米関税の発動が伝えられる処です。かくして、米中のみならず米欧間の貿易を巡る対立、貿易摩擦が一段と先鋭化してきてきたというものです。勿論、関税の引き上げは安価な輸入品を減らし、物価高の要因となる処ですし、供給網が集中するアジアに飛び火することで、世界経済は深刻なリスクに晒される処となってきています。今世界は、まさに貿易戦争の様相です。

(1) Middle power of the world must unite

さて英紙Financial Times, May 29に投稿された同紙コラムニスト,Gideon Rachman氏の
‘ Middle power of the world must unite ’は、上述事情を踏まえ大国の暴走を止めるためには新たな非公式な同盟・団結をと、提唱するものでした。以下はその概要を紹介するものです。
 
・・・・・・・・米国と中国は国際合意の制約から抜け出し、力を振るって自らの目標を一方的に成就させたいという野望を強めている。ロシアも超大国と呼べるほどの経済力こそないが、核兵器を保有しており、領土拡張を進めている。そして、世界が少しずつ無法地帯化していく状況に大きく加担しているとした上で、こうした状況に対抗していく為には、以下、6か国による非公式な同盟関係をと、提唱するのです。中堅諸国よ立て!と云う処です

これまでの数十年間、先進自由諸国は、二つの柱に沿って国際社会での立場を固めてきた。その一つは、米国との強固な同盟関係であり、もう一つはEU、APEC,そしてNAFTAといった強力な地域集合体への加盟だったと云うのです。然し、トランプ氏が米国大統領に就いたことで世界はこうした前提がひっくり返る事態を迎え、欧州諸国とオーストラリア、日本、カナダは公にどんな声明を出したとしても、本音では米国が目指す方向に動揺している。
トランプ政権が推進する保護主義は、これらの国にとって経済的な利益を損なう脅威だ。何をしでかすかわからない上に孤立主義を取り始めた米国が、同盟国に対して十分な安全保障政策を実行できるのか、という疑問も生じてきているとし、そこで、利害を共通する国として6か国を挙げ、非公式な同盟関係を築くべきと提唱するのです。

つまり、こうした現状はドイツ、フランス、日本、英国等「中堅国家」にとってはジレンマで、彼らには超大国のように力で他国を威嚇することが出来ない。だが世界経済と安全保障に利害関係を持つ国際的ナプレーヤーの一員であり、ルールに基づく世界を必要とする。そして、中堅国家がこうした共通の課題を抱えている事実は、一つのチャンスであり、ルールを基本とする世界秩序を支えたいと考えるこれらの国々は、今こそ非公式な同盟を組むべきと云うのです。WTOの存続や、国際的な人権法及びグローバルな環境基準の持続といった課題に対し、一国で対応する事は不可能だが、集団でかかれば国力や軍事力ではなく、ルールと権利を軸とする世界を守ることが出来るかもしれない、と云うものです。。

中堅国家は自らの立場の調整と、貿易や気候変動、中東やアジアにおける平和実現への努力等、グローバルな問題に関する働きかけを強化すべきと云うのです。ただ、調整内容は「米国が平常に戻るまでの間、既存の国際秩序を維持する」ことになるかもしれず、また状況が芳しくなければ「自由主義的価値を守る為、代わりの仕組み作りに着手する」ことになるかもしれないとは云うのですが。

・グループ構成については、日本、ドイツ、英国、フランス、カナダ、オーストラリア(人口の多い順)の6か国をベースに対抗勢力を築くべきと云うのです。いずれも裕福な民主主義国家である事から、利害と価値観も似通っているだろう。また、主要な貿易国である事と、実質的な軍事力を持ち、自国軍を海外に派遣する意欲がある(日本は除く)ことも共通している。貿易や投資の範囲を超え、国際的な人権基準の保護をも含む国際規定の順守に関心を持つ点でも共通するものがあると云うのです。尚、中堅国同盟のメンバー候補は他にもある。韓国、南ア、イタリア、ブラジル等。然し、南アとブラジルは既にBRICSの一員である事、イタリアはトランプ流の愛国主義と保護主義に傾く可能性があること。韓国は足元で抱えている問題のせいで余裕がないとするのですが。

・中堅国家の纏め役は? 欧州とアジアには中堅国の利益を守るため、中国とロシアの支援を取り付けたいと考える向きもあるが、これは有望な手段にはならない。つまりプーチン大統領は武力を以って国際秩序の転覆をいとわない仁であり、信頼できるパートナーとは云えない。一方習近平主席の中国は、気候変動、貿易問題に対しては中堅国家に近い立場を取るが、中国は一党独裁国家で、自らの権威主義的価値観を国外で推し進めるようになってきた点で問題含みと。
従って、中堅国家を纏める上で、EUの役割は潜在的に重要だと云うのですが、ただし不確かなものでもあると云うのです。独・仏は、EUが一つの「超大国」として今後、中国や米国と肩を並べることも可能だろうとはしながらも、EU圏内には独裁色を帯びた政権やポピュリスト政権が出現してきている転移照らし、政治的な問題に関し、EUが共通の立場をとることはこれからどんどん難しくなるだろうとも云うのです。だが、殊、貿易となるとEUは一つの単位として機能している。つまり、トランプ政権が進める保護主義への強力な対抗勢力となり得ると云うものです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、「世界の中堅国家による同盟」等は実に奇妙なものであり、それを構築するのも難しいが、新しい時代には斬新な発想が求められている」・・・・と云うのです。さて、この発想に照らす時、彼の提唱は大いに考えられてしかるべきではと思う処です。

(2)日欧関係の進化が意味する事

さて、日本は7月 11日、ベルギー・ブラッセルで日本とEUの経済連携協定(EPA)に署名の見通しにあります。日欧EPAは2017年12月に妥結したものでこれには日本とEUで兄29か国が参加することになっています。これが実現されれば、人口で約6億人、世界GDPの約3割を占める自由貿易圏の誕生となるのです。日欧EPAの署名を急ぐのは、保護主義的な動きを強める米国の存在が大きく作用していると云うものです。この日欧EPA署名の実績と例のTPP11と合わせ、米国に対抗して自由貿易を推進していく姿勢を示していかんとするもので、上述、ラックマン氏提唱のcontextと同じくする処です。

既に先の特別号論考(6/13)では、EU外交安保上級代表のメゲリーニ氏から7月の日・EUのEPA調印を控え、経済協力・提携強化を通じて安保体制の強化を訴えてきたことを紹介しましたが、加えて驚くべきニューズが届いたのです。それは6月6日のドイツの連邦議会(下院)でのメルケル首相の発言で、耳を疑うほどに刺激的なものでした。(日経、2018/6/21)

その発言とは「ロシアを挟んで西にドイツ、東に日本。距離は離れているが日本とドイツは親密なパ-トナー」と、‘米ロより日本を重視する’ 考えを発信したことでした。当該記事によると、これはキリスト教民主同盟(CDU)のキーゼウエッタ議員の質問「傍若無人な米国と、中国の脅威と云う難局に直面するのは欧州も日本も同じ。ならば連携してはどうかか」へのリアクションだった由ですが、メルケル首相は単にリップサービスではなく本当に関係を深めたいと考えているとCDU筋は証言している由でした。さて、2012年、第2次安倍内閣が発足してからの彼女の対日観は極めて厳しいものがあった事は周知の処でした。

筆者は、こうした経済の提携強化こそが日本の実状に即した安全保障対応だと提唱してきましたが、今その思考様式が充填されてきたと認識する処です。太平洋を跨ぐ経済連携、TPPはまさにその象徴的存在と思料する処です。


2.世界経済は新たなグローバル化に向かう

クリントン政権で経済諮問委員会議長を務め現在、米UC Berkeley 大学院特別教授のLaura Tyson氏は、McKinsey & CompanyのPartner, Susan Lund 氏との論考‘Globalization is not in retreat’で、デイジタル技術の進歩とそれが齎す貿易の新たな姿を「新時代を迎えたグローバリゼーション」として展望し、グローバル化の後退はなく更に深化し、従ってそれへの備えに挑戦すべきと檄を飛ばすのです。まさにPost Trumpの在り姿を示唆する処です。
そこで、以下では当該論考をレビューすると共に、新しく現出が想定される事態に如何に備えていくか考察することとしたいと思います。

(1)グローバリゼーションは新時代

The New Era :米国は内向きになる一方EUと英国は離反する等、いま世界経済のリーダーシップが聊かの変調をきたしているが、これが即、グローバリゼーションが非グローバル化に向かっている事を意味するものではなく、変化の背景には急速に進むdigitalizationがあり、それが世界経済を新たな局面に向かわせている、つまり新時代に入ってきたと云うのです。そこでは、イノベーションや生産性の向上が進み、各種情報へのアクセスを高め、それが消費者と生産者の距離を縮める等、経済社会は大きく進化することになるが、一部には消えて行く産業、喪失するジョッブ等、崩壊現象は起り得べく、その点では企業も政府もそれへの対応準備が欠かせなくなっていくと云うのです。

因みに、1980年代から始まった輸送・通信のコストの急激な低減は、多角的自由貿易協定とも合わさって世界の貿易は急速に拡大、1986年~2008年ではモノ・サービスの貿易額は全世界のGDPの2倍もの速さで拡大してきました。が、以降の5年間は当時の不況を映す結果、その伸びは世界のGDPを凌ぐことはなく推移してきています。つまりGlobal value chainは部品製品の貿易取引に貢献してきましたが、当該効率化が成熟の域に達した事で、その効果は吸収されてしまったためだと云うのです。生産拠点は今後も労働賃金や生産要素価格の相対的に低い処を狙って移動していく事だろうがそれは単に貿易のパターンを変えるだけで、貿易全体の拡大にはつながっていないと云うのです。

然し、digital flowsの拡大、つまりe-mail やvideo streaming 、IoTが進む事でグローバル経済での結ばれ方が従来とは異にする構造的変化をきたし、しかもこのdigital flowはもっぱら先進国での動きだったのが新興国に蔓延しつつあることで今や、世界貿易の半分がdigital technology に依存する形となっていると云うのです。企業では商品の動きを追跡する情報機能を導入することで30%までも輸送時のロスをなくし得たと云い、世界の消費者は態々小売店に出向くことなく必要品を手にでき、2020年までにはe-commerce利用者は10数億人、年商は年1兆ドルに達すると見込まれているというのです。

処で、これまでグローバル化と云えば、大国が誘導するものとされてきたが、例えばEstoniaという僅か130万人の小国でもdigital化のお陰で、大国と伍していける状況が生まれてきており、いま注目されているのがe-government の成功であり、その枠組みの下でSkyepeの開発国としてEUの中の急成長国と位置付けられていると云うのです。勿論、こうしたDigital flows は世界企業の位置づけも反転させる処、巨大グローバル企業は長年経済の分野で支配的に動いていたが、digital platforms は小規模企業にも出番を与えるようになってきた事で、つまりはmicro -multinationalsが生まれてきたことでon-line market の拡大が予想されていると云うのです。

(2) Digitalizationと地勢環境

グローバリゼーションがdigital化に即した形で進む結果、そのcenter of gravityがシフトしてきたと云うのです。つまり2000年のFortune Global 500にリストされた企業の内、新興国にheadquarterを置いていた企業は僅か5%だったが、2025年までにはMcKinsey調べでは、それが45%に達する事、しかも中国は欧米企業を上回る、年商10億ドル超の企業をいくつも抱えることが予想されていると云うのです。つまり,世界で消費されるdigital contentの多くは米国が作り続けるとして、アマゾン、フェースブックやグーグルと言った米企業のライバルである中国のインターネット企業、アリババ、やテンセント等に取って代わられると云うのです。

現在、global e-commerce transaction に占める中国のシェアーは42%との由ですが、グローバリゼーションの地勢は新興国レベルでも変化していると云うのです。つまり次の10年、世界のGDPの半分が新興国経済に負う事になると予想される処、これらは地図では見出しにくい440ほどの都市に負う事が予想されているのです。因みに今や南・南貿易が2000年ではglobal total の7%に過ぎなかったものが、2016では18%にまで拡大していると云うのです。世界経済も既にこうしたnew reality,新事態に適応始めていると云うのです。

ワシントンがglobal trade agreements に背を向けるとしても、例えば米国以外の自由諸国ではTPP11の前進があり、更にはASEAN諸国と日中豪印NZ韓国を含めたRCEP(Regional
Comprehensive Economic Partnership)が進められるとなると、これで世界貿易の40%をカバーでき、人口では世界人口の半分を占める経済圏が誕生することになる処、中でも注目すべきはワシントンベースの世銀等、各種経済機関に対抗するが如くに、中国が進めるNew Development BankやChina-Africa Investment Forum, 更には「一帯一路」構想等は全アジア的な経済成長を促す処、いわゆるグローバル化に後れを取った国々との結び付きが新たに進む事で、新たな発展が期待できると云うのです。

(3)新時代のグローバル化とその課題

Digitalization を映して進むグローバリゼーションは新時代を演出する処、同時に色々な弊害も避けられず、これにどう向き合っていくかが重要な問題となってきている事、周知の処です。

まず、開放政策が対峙する最大の問題は移入労働者問題です。具体的にはJobを巡りwinner とloserの対立構図がうまれ、つまりはグローバル化が当該国の社会や労働環境を痛める結果、それがpopulismやprotectionismを誘引する事情は周知の処です。勿論、人種差別問題等々質的ともいうべき大きな問題が潜在する事、云うまでもありません。そこに見る基本問題は競争構造の変化、つまり、低コストの新興国の市場参入で先進国型企業の競争力が傷つき、雇用の削減も余儀なくされると云った問題です。が、それこそはdigital flowsの強化を通じて知識集約型分野での競争関係の改善が期待でき、intellectual property(知的資産)の重要性を高め、特許を巡る新たな競争関係の構築も可能となると云うものです。 尚、Digital technologies は更に企業の工場の新設地の決定に大きな影響を与える処、、労働市場環境、エネルギー・輸送コスト、更には消費者との距離も含めて言える事は、新たな生産体制は多くの場合、新興市場から再び先進国市場に回帰していくのではと云うのです。

かくしてNew eraにあってはdigital capabilities, デイジタル力が経済のロケット発進の燃料の役割を果たす処、企業トップの使命は「high-speed broadband networks」の構築に求められ、政府にあっても企業がnew digital technologiesと、それに必要とされる人材への投資等、worker-training も含め、必要とされる項目の整備と、それへの具体的準備が求められるというものです。 そして、‘Rather than relitigating old debates, it is time to accept the reality of the new era of globalization and work to maximize its benefits, minimize its costs, and distribute the gains inclusively. Only then can its true promise be realized‘ と。つまり、過去をグタグタ云う事ではなく、グローバリゼーションが齎す新時代の現実を受け入れ、ベネフィットの最大化、コストの最小化に努め、広く収穫が行き渡るようにすること、これこそが本当の公約実現となる、と締めるのです・・・・。

さて、トランプ大統領は秋の中間選挙目当ての政治行動に明け暮れているようですが、その結果は自由諸国を混乱の淵に追い込む一方で、日本の安倍首相も‘明日の日本’を語る事もなく、秋の自民党総裁選に照準を合わせたかの政治行動と、似たもの同志の日米関係に聊かの危機感を覚える処です。
序でながら、米朝首脳会談の結果について筆者は、6月13日付で友人ら関係者に当該所感論考を送りましたが、それに対するリアクションは総じて日本を案じ、安倍首相のトランプ氏に盲目的な追従型の姿勢に本当に大丈夫かと、思いを暗くしたと、するものでした。


おわりに グローバリゼーション、民主主義、国家主権

本論考を書き終え、ふと思い起こすのが、ハーバード大のDani Rodrik教授の‘The Globalization Paradox’(2011)で示されていた仮設です。それは「グローバリゼーション」を促進することは経済的な国境である関税や自由な資本移動の規制をなくすことで、従って「グローバリゼーション」と「民主主義」、或いは「国家主権」との組み合わせはあっても、三要素が同時に成り立たつことはないないと云うもので、要はグローバリゼーションを進めるには民主主義か、国家主義のどちらかを犠牲にする必要があるとする仮説ですが、近時digitalizationの進化が三要素の関係が不鮮明となってきた点で、依然仮説に留まる処です。

さて、近時、目の当たりとするトランプ氏の政治行動は、いわゆるリベラルな良識派からは許し難い行動と映る処です。その彼の行動の背景にあるのが、いわゆるグローバル化がもたらした負の効果としての労働者の格差問題と理解されています。そこで、彼は、自国の利害を担保していく為として、その流れを断ち切り、これまで米国が中心となって進めてきた国際秩序、リベラルな自由主義をまさに否定するAmerica firstを行動規範としてきています。然し、各国の産業は相互に依存しあう、その深度を深める形で成長し、世界は発展してきたことは厳然たる事実です。そして今、危険なのは資本主義が強くなりすぎてバランスが崩れることと思料される処です。従って、基本的な政策対応は、これまでの負の効果を如何に軽減、改善し、これまでのグローバル化の論理を如何に堅持していくか、にあるべきと思料するのです。

我々は既にグローバル化された世界に住んでいます。従ってグローバル化の道を閉ざしては、言うなれば大きな経済危機の起こることも予想される処です。勿論民主主義も必要です。政治に対して意見が言える事が必要です。それには健全なメデイアの強化も必要です。トランプ氏は自分にとって面白くない事につぃては、全てフェーク情報だと斥けていますが、言うなればそれは独裁者の姿勢そのものと云うほかありません。勿論、国家も必要ですし、その枠組みを超える試みもあります。要は、ロドリックの仮説はともかく、グローバリゼーション、国、そして民主主義の三つを今よりずっとうまく調和させる方法はまだまだある筈と思いますし、このような解決策を探るべきではと思うばかりです。 資本主義だけではシステムは機能しません。民主主義だけでもシステムはきのうしません。二つが両立するシステムを築くことが必要です。民主主義が資本主義を制御するツールとしての役割を果たすようなシステムです。繰り返しますが、グローバリゼーションを放棄するのではなくその影響を緩和することを考えていく事と思料するのです。

序で乍ら、過般手にしたイアン・ブレマーの最近刊「対立の世紀―グローバリズムの破綻」(US VS、THEM-われわれ対彼ら;The Failure of Globalism)は興味深いものでした。その副題にある、「われわれ」とはポピュリズムの原動力となっている様々の力を指し、一方「彼ら」とはそうした動きを軽視する政府のエリートたちであり、「大企業」、金融エリートを指す処ですが、要は自分の属するグループとそれ以外を峻別し、対立構造を作り上げることを含意とするものです。その上で南ア、中国等、新興国12か国を取り挙げ、彼らが抱える構造的問題を解析した上で、世界人口の半分を優に超える人口、若手人口となると更に高い比率となる事情に照らし、21世紀の世界経済の運命は、彼らが握っていると云うのでしたが・・・。   
 
以上 ( 20018/6/27記)
posted by 林川眞善 at 10:09| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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