2017年08月27日

2017年9月号  混迷する世界に克つGlobal企業の論理と、混迷を助長するTrump's America リスク - 林川眞善

はじめに:いま混迷する世界にあって

(1) Anti-globalization に克つ経営

周知の通り、多くの企業は戦後システムの下、グローバル化を通じて成長してきました。だが、そのシステムは、米国第一主義、反グローバル主義を掲げるトランプ氏の登場で、大きく転換を余儀なくされ、今、まさに混迷の様相にある処です。かかる中、ゴーイング・コンサーンたる企業には、如何に持続的可能性を図っていくか、つまり、この変化を、どのように理解し、それにどう対応していく事がしかるべきか、が問われていく処ですが、それは言い換えれば、‘反グローバル化に克つ’ 経営の如何が問われると云うものです。 

その点、Harvard Business Review, July-August 2017、掲載のNew York大学、Stern School of Business 教授、Pankaj Ghemawat 氏の論考「Globalization in the age of Trump」は極めてpracticalな行動原理を示唆するものでした。つまり、ゲマワット氏は、トランプ政権の登場で、米国企業が目指すグローバル化政策は新たな挑戦を受けているが、それでもグローバリゼーションから後退すると云う事が、この不確実な時代環境にあって正しいアプローチなのかと、企業のグローバル化対応について問うものです。そして、グローバル戦略を擁することで、新たな価値創造の機会が生まれ、それが将来への一層の可能性を担保していくことになるとした上で、今、おかれている混沌の状況とは、多国籍企業にとって、その戦略の見直しと、組織構造の再検討、そして社会とのかかわり方について再考を促すもので、とりわけ企業環境としての政府対応、マクロ政策への取り組み等、いわゆる‘対境’への取り組みを確実なものとし、新たなglobalizationの推進を期待するというものです。

その際、筆者の関心を呼んだのは、イメルトGEの経営をモデルとしてリフアーしていた事でした。実は、トランプ大統領就任直後に出た、1月28日付The Economistの特集記事、「The Retreat of the Global Company」(グローバル化の旗を降ろす企業)でリフアーされていたのもイメルトGEでした。そこでは、「過去30年来の大企業が目指してきた規模の優位さ、等の企業活動の基本は深刻化を極める処となっていること」、そして「規模の優位とか、裁定取引など、もはや意味を持たなくなってしまった」と強調すると共に、保護主義者のトランプ大統領の登場以前から、つまり2016年のポピュリストの台頭以前から、既に多国籍企業はコスト削減や税制等の視点に照らし、現地競合企業との在り方を考えるようになり、トランプ政権が主導する反グローバル化政策には関わらず、本国への回帰は始まっていたと指摘するのでした。つまり、あくまで経済の合理性に照らした動きを映すものと云うのです。そして、そこでは、GEのイメルトCEO(当時)が、グローバル化から現地化(from globalization to localization)へと、これまでの経営の基本軸、`bold pivot’を シフトさせようとしているのも、そうした経営行動の一環と、リフアーするのでした。

序でながらGEイメルト氏について、もう一つ興味深い記事が手元にあります。6月26日付、Financial Times(デイジタル版)が掲載する同紙columnist、Rana Foroohar氏の記事「Jeffrey Immelt--Why US big business listens to Barnie Sanders ―GE’s chief agrees with leftwing populist’s approach to connect with workers 」(J. Immelt ー 大企業経営者がバニー・サンダースの言葉に聞き入る理由)です。このサンダース氏とは、米大統領選の民主党候補としてヒラリー・クリントン氏と争った、自ら民主社会主義者を任じる政治家です。

ですが、共和党員であるGE、イメルト氏は多国籍企業のトップらしからぬ、サンダース氏のスピーチに熱狂する若者と同じように、同氏の主張に一部ながらも賛同すると語ったと云うものでした。周知の通り、サンダース氏は米国の極端な所得格差を糾弾する立場から、「ごく少数の人間があまりに多くのものを手に入れる状況に正義はない。あまりに多くの人間が、ごくわずかのものしか手に入れられない状況に正義はない。」と主張するのですが、こうした考え方に理解を示すイメルト氏が打ち出す経営戦略には、それなりにサンダース色が映るとも評される処、要は、グローバル企業の経営者としての環境変化への認識とそれに応える発想があり、それは同時に企業の対外オペレーションに係るアドバイスともなると指摘するものでした。尚、そうした事情を踏まえ、イメルトGEが進める経営戦略はポピュリスト台頭後のグローバル企業にとって手本ともなるとして、Financial Times紙上では当該記事のタイトルは‘A post-populist playbook for capitalists’ に変更されています。

という次第で、改めて上記ゲマワット論考他をベースにglobal business、つまりグローバル企業の行動の論理を手短に整理、考察することとし、併せて上記文献で共通して引用されていたイメルトGEの経営の実際を、彼がこの2月、株主に送った手紙をベースに検証することとしたいと思います。(→ 第1章)
尚、彼はこの7月31日付で16年間のGE、CEOを引き、8月1日付でジョン・フラナリー氏(M&Aの巧者だそうです)が後任CEOに就いています。その背景にはGEの低迷する株価問題へのアクテイビストの批判があったとされていますが、詳しくは本論に委ねる事としたいと思います。

(2)混迷の元凶なすトランプ大統領

さて、前述の通りトランプ大統領を元凶として進む世界の混迷は更に深まる様相にあります。
要は、8月12日、バージーニイア州、シャーロットで起きた白人至上主義者と反対派の対立抗
争を巡ってのトランプ大統領の人種差別を容認するかの発言が米国社会の基本的生業を否定す
る、言うなれば一線を越えた発言として、反トランプデモが各地で起こりだしている事です。そ
して近時、厳しさを増す、北朝鮮やアフガニスタンへの軍事行動威嚇をにおわせるなどで、国内
の分断化が云々されだすなど、時にトランプ米国はDangerous nation かと、指摘される状況に
ある処です。まさにアメリカ・リスクの顕在化です。今後の動きは正直読めませんが、諸般の
事情からは、トランプ政権の不確実さは深まる方向にあるものと思料される処です。そこで、上
記、グローバル企業論と併せ企業の戦略環境として、その実状を分析しておきたいと思います。
(→ 第2章)
尚、日本の政治も国民の批判を映した安倍改造内閣が発足しましたが、この先行きも不透明な
ままにあります。この際は、これら事情も併せ、以下目次に即し、論じてみたいと思います。(2017/8/26)

             
目  次

第1章 混迷する世界の中、問われるGlobal企業の行動の論理 --- P.4

1. ゲマワット教授の示唆するGlobal Business の行動原理
―Globalization in the age of Trump        
2. 実証:イメルトGEが映す‘反グローバル化に克つ’ 経営
(1) ジェフ・イメルト氏のGE経営の実相
(2)A post-populist playbook for capitalists
[資料] Letter to shareowners ‘Leading a digital industrial era’
from Jeffrey R. Immelt , Feb.. 24, 2017 -- P.8


第2章 トランプ米国は地政学リスク            - - P.10

1.‘危険な国’になってきたトランプ米国
2.トランプ通商政策が齎す地政学リスクの高まり

おわりに:第3次安倍改造内閣 
―日本経済と「人づくり革命」 --- P.12
     
(1)「経済最優先」の‘仕事人内閣’に望むこと
(2)看板政策「人づくり革命」に思うこと

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第1章 混迷する世界の中、問われるグローバル企業の行動の論理

1.ゲマワット教授の示唆するGlobal 企業の行動原理
― Globalization in the age of Trump

グローバリゼーションから身をひく戦略は、正しい対応なのか?トランプ政権の登場で高まる反グローバル化の中、Pankaj Ghemawat 氏は論考「globalization in the age of Trump」を以って、グローバル企業の行動の如何を問うのです。

その趣旨は、いま保護主義の圧力を感じ、即グローバリゼーションからの回帰行動を起こすことなどは過剰反応であること、又、過剰なローカリゼーションへのこだわりも同様で、いずれも結果として企業が持つ価値創造の機能を阻害するものと指摘する一方、有効なグローバル戦略を擁することで、新たな価値創造が可能となり、将来への一層の可能性を担保することになる、と云うのです。そして、いわゆるトランプノミクスが齎している今日の混乱は、多国籍企業に、その戦略の見直し、組織構造の再検討、そして社会とのかかわり方の再考、を促すものであり、従って、これら課題への対応プロセスについて以下アドバイスするのです。要は、グローバリゼーションは終焉を迎えたと論じることは早計だ、と云うものです。

具体的には、①今日に及ぶglobalizationの変遷、trajectory of globalizationの現実をレビューした上で、グローバル対応を図るにあたっては、その‘深度と広がり’、つまり経済活動の国内と外国とのバランス、depth of globalization について、当該政府の政策も含め、明示的にしていく事、併せて、経済活動の広がり、breadth of globalization についても、地理的距離問題も含め対応指針を整備していく事とし、そこで二つの法則(注)を提示するのです。

(注)globalizationの‘depth & breadth’に係る法則:
 ・The law of semi-globalization: International business activity, while significant, is much
less intense than domestic activity. (半グローバル化の法則:国際事業活動は、その重要性はともかく、国内のそれ以上には重きを置かない)
 ・The law of distance: International interactions are dampened by distance along cultural,
administrative, geographic, and often, economic dimensions. (距離の法則:国際間の相互作用は、距離と文化、行政と地理的事情、更にしばしば経済関係に負う)

その上で、②企業がどこで、如何に競争をしていくべきか、where to compete and how to compete、まさにGE、イメルト氏の戦略(後出)にも照らし、現下の新たな環境での経営戦略の規範を提示するのですが、とりわけ、企業家にとってより大切な事として、③今日的な事情からは企業を巡る環境への対応の強化、engaging with society、が重要とするものです。
つまり、上記①,②をマトリックスとして当該ビジネスのポジションを捉え直し、今日の企業にとっては企業間の競争力問題以上に政府との関係や、マクロ経済政策に強く影響されることが大きくなってきているという点に照らし、当該企業を巡る政治、経済、社会環境への問題、例えば、規制問題、競争規制問題、更には環境問題等々に積極的に関わっていくべきで、それこそはbusiness leadersに求められるagendaとも云うのです。嘗て我々身辺においても喧伝されていた「対境政策」の強化かと理解される処です。

ただ、現下の米国の状況は後述(第2章)する通り、白人至上主義を巡って展開されるトランプ政権下での対立構図は、いまや‘国の分断’すら感じさせる状況にある処、先進国としては初めて、アメリカが地政学リスクと見なされるほどの環境変化にあり、それは企業レベルにあっても先進国では経験することのなかった人種差別リスクが経営リスクに加わってきた事を意味する処です。そこで、これら米国内で起こっている事象への対応としての新たなグローバル化戦略の準備が急がれる処でしょうが、それはengaging with societyとして、新たな次元へのシフトを示唆する処です。

2.実証:イメルトGEが映す‘反グローバル化に克つ‘ 経営
      
前述、GE Jeffrey Immelt氏はこの7月31日付で CEOを離れていますが、今年2月、CEOとして株主に送った最後の手紙、Letter to shareowners ,`Leading a digital industrial era’ February 24,2017(後出P8、資料)は、GE経営について、急速な変化を辿る経営環境の中、digital化とinnovationを基本軸とする戦略対応を以って、持続的可能性の確保を図っていく、その枠組みを語るものでした。ただそこで注目されるのが新たな産業構造に組する上でのイメルト氏のperception というものです。それは、金融危機とその危機に因る経済的打撃が続く中、政治的ポピュリズムの台頭で、グローバルなビジネスの基本的考え方は根本的に変わってきた事への明確な自覚でした。彼は、近時の変化に照らし、欧米先進国経済を成長させる上では「消費を伸ばそうと考えているだけではだめだ」と発言するのですが、それは彼の経済の生業、構造変化への認識を映すもので、その自覚こそが前述、バーニー氏と、一部思考を共有する処ともなっているというものです。こうしたイメルト氏の感性は金融危機後のGE経営で培われたものとされるのですが、そこで彼のGE経営の姿をいま少しレビューしておきたいと思います。

(1)ジェフ・イメルト氏のGE経営の実相

2001年9月、「20世紀最高のCEO」と云われたウエルチ氏の後継者としてCEOに就任したイメルト氏の経営者としての人生は、前任ウエルチ氏との比較において厳しいものでした。

まず、そのウエルチGEは、「脱・製造業」戦略を推進し、金融事業、放送事業を推進・拡大を果たし、在任期間の20年間で売り上げは約5倍、株式時価総額で40倍にも拡大しています。
これに対してイメルトGEの16年間は、売り上げ高は増えず、株式時価総額は3分の1にまで減少しています。ウエルチ氏の業績と比較すると、どうしても霞んで見えると云うものです。
それでもイメルト氏はGEに大きな財産を残したと言われています。それはウエルチ氏が諦めた製造業ビジネスを復活させた事でした。イメルト氏が就任する前年の2000年のGEの売り上げは1299億ドル、うち製造業売上は約570億ドル、一方、2016年の売り上げは、1237億ドルで製造業のそれは1132億ドルで、2000年と2016年比では前者の売り上げは減ってはいますが、製造業部門のそれは約2倍となっているのです。営業利益についても00年の61億ドルに対して16年には174億ドルと3倍増となっています。この間、2011年にはあらゆるモノがネットに繋がる「Industrial Internet」を実現させ、製造業のdigital化に成功しています。そして2015年にはソフト開発部門を事業部として独立させ、「GEDigital」は現在2万8千人の従業員を抱えるまでになり、20年までに売上を現在の36億ドルから150億ドルに伸ばし、ソフト会社として世界トップ10入りを目指すとしていたのですが・・・。

こうしたイメルト氏でしたが、やはり彼にとっての課題は常に株価にあった由です。リーマンショック後の2009年から回復基調にあった株価も、2016年末を境に失速、彼にとって最後の決算となった最後の四半期決算(2017年4~6月期)では純利益は前年同期比で57%の減少、決算発表のあった7月21日のGE株価は15年10月以来の水準に下落しています。(7月22日、日経、夕刊)これを受けてアクテイビストなどは圧力を強める様相にあったと云うもので、因みに米著名投資家ウオーレン・バフエット氏は、GE保有株約1060万株、金額では約3億1544万ドル(約345億円)を6月末までに全て売却した(日経8月15日、夕)との由です。業績悪化が止まらないGEに見切りをつけたと云う処でしょうか。
それでもGEの株式時価総額は6月19日の時点では2506億ドル(約28兆円)、三菱電機の3兆5000億円や日立製作所の3兆3000億円を大きく上回る処です。

ただ、彼が推進、実現してきたGE改革は、例えば日本では今、「society 5.0 の実現に向けた未
来投資戦略」としてAIや、あらゆるモノがネットに繋がる「IoT」、ロボットなど新技術の活用
が標榜されていますが、そうした事情にも照らすとき、むしろこれからこそが、参考となる処と
云え、それは云うまでもなく反グローバル化に克つ経営に繋がる処とも言え、それだけに彼の経
営思想、経営行動は斯界の評価を集める処なのです。

(2)A post-populist playbook for capitalists ( P.2 参照)

過去40年、米国の経済モデルは、米国内で賃金水準にはお構いなく、生産を含め海外に出せる
ものは外国に移すというグローバル化を基本としてきたと云うのです。と云うのも、グローバル
化が進む結果、米国内での物価が下がれば、失業しても、低賃金のままでもでも、その影響は相
殺できるとされてきたというものですが、しかし米国のGDPの70%が消費で占められるよう
になった状況にあって労働者の賃金が上がらないとなれば、その理屈はもはや成り立たなくな
ってきたと云うものです。となると、これまでのように海外に外注するだけして、米国の賃
金水準は低いままでいいなどという、そうした形でのグローバル化の考え方は通じなくな
ってきたという事です。そして、前述「消費を伸ばそうと考えているだけではだめだ」とす
る彼の認識と併せみるとき、経済のグローバル化対応の形がより具体的にイメージできる
処です。

つまり、本稿冒頭で記したように、今、GEは高まる保護主義をかわす「地産地消」の経営を打ち上げていますが、輸出に頼るのではなく、顧客の近くでモノを作る戦略に転じようとしており、これこそはGEの経営基本軸のシフト、グローバル化から現地化(from globalization to localization)ということですが、かくして反グローバル化に克つ経営を目指す処ですが、それは又、前述ゲマワット論理に適う処と思料するのです。

更に、彼は続けます。グローバル化の中身や一般の人々への影響を十分に考えずにグローバル化は競争力強化のためには絶対必要な投資と理解し、海外への外注を進めることは優れたビジネス手法として、労働者の事よりも企業にとって有利との理由から様々な貿易協定を支持し、社会への大きな経済的影響には目をつむってきたと批判し、自分たちが実際に生活する人々の目にどう映っているかをまるで理解しない経営者が多すぎると、警鐘を鳴らすのです。イメルト氏自身の身上として、社会的な共感を呼ばない経営は、短期的な株主を喜ばせても長続きするとは思えないとも云うのですが、殊、グローバル競争に「勝つ」ことの意味は、外国に嫌われない経営を図ることと云うのです。併せて、企業の事業は何の支えもない自由放任主義の環境下では成功するものではないと主張するのですが、なにかサンダース氏との距離感を感じさせる処です。こうした彼の発想と、戦略姿勢こそが、「ポピュリズム台頭後の今の世界で、グローバル・ビジネスを展開する際の指針」になると見る所以と、思料するのです。


[ 資料 ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Letter to shareowners , ‘Leading a digital industrial era’ , Feb.. 24, 2017
from Jeffrey R. Immelt, Chairman of the Board and CEO, GE

―イメルト氏が株主に送ったGE経営に係る手紙は、Executing a pivot, Winning in the environment, A simple more power portfolio, Leading the digital industrial future, A resilient culture の5つの文節から成るが、この際は、経営戦略の基本を語る第2項、Winning in the environment(環境変化に克つ)に絞り、当該骨子を紹介する。(原文はインターネット「GEドットコム」で入手可能)

[環境変化に克つ経営]

(二つの変化)いかなる組織も今、2つの変化の中にあり,それからいかなる企業も逃げられない。一つはグローバリゼーションに対する考え方の変化。二つは産業界に於けるdigital化の役割の変化だ。

(グローバル企業GE)GEは今日も、そして将来に亘り、グローバル企業であり続ける。決して「国
籍のない多国籍企業」とは思うものではなく、世界で成功を収めるアメリカ企業であることに誇り
を持つ。 2000年当時、GEの収益の約70%はアメリカ国内にあったが、今日では受注の60%
以上が世界市場にある。この間、GEのグローバルな成長は年間平均5~10%を記録。例えば、
航空機エンジンやガスタービンはその85%が海外で販売されている。そして、グローバル市場で
成功を納めることで、GEは米国内で何千もの雇用を生み出している。ただ、グローバリゼーショ
ンに係る見方が変化しつつあり、GEも又機敏に対応していく事が重要と考える。

(米国の競争政策)米国は中国やドイツと同じ前提の下で、グローバル競争をしているわけではない。
米国の関税政策は、輸出でなく輸入促進に置かれてきたし、インフラ整備は今では基準以下の状態
にあり、関連法規は既にズタズタな状況にある。競争相手は変化を受け入れているのに対して、米
国はもはや世界で稀有の存在となり、大半の政策は時代遅れにある。一方、他国は「政府対政府」で
売り込みをかけ、競争優位を更に図るべく貿易協定を締結して成長を図り静止することはない。G
Eは、新政権がアメリカ企業にとってlevel the playing field for US companies, つまり競争基盤の地
ならしをしてくれる事を期]待する。

(Outsourcing & Globalization )Outsourcing と云う考え方はもう過去のもの。80年代、90年代
のそれは、安価な労働力を求めて途上国に進出してきた。その結果、仕事を失ったものも事実。 然
し、今日のGlobalizationとは、急速な成長を遂げる世界市場へアクセスするとの考え方だ。GEは
事業を行う世界中の国々で投資を行い、事業運営を進め、関係を築けば成長のチャンスは確実にある
と考えている。GEは独創的な金融ソリューションの提供、ジョイント・ベンチャーの展開を通じ、
成長機会の大きい市場で、決定的な優位を享受していく。グローバルである事、又ローカルである事
は、GEが事業を行う世界180か国の国々で成功を納めるための能力。様々な市場で、実際にGE
が成功を納めるという事は、同時にアメリカにとっても利益をもたらすことになる。

こうした国々には、中国が含まれる。どの企業も、この世界第2の経済大国とビジネスを進める事を
望んでいるが、GEも相応の戦略、Localizing capability , building partnership, and creating a
productive digital framework for the local market、を備え中国経済の成長に貢献していく。因みに、
複数の中国建設会社と提携し、アフリカとアジア市場で成功を納める為、彼らの資金調達も後押しす
る。GEの投資は中国とアメリカで雇用を生み、更に自社の競争力も高めている。

(イノベーション)GEのイノベーションは、また世界で最も難しい課題の解決を齎している。例え
ば。クリーン・エネルギー開発の先駆的存在であり、医療用技術の提供も進めている。またGEの
機関車はいまや南ア、ブラジル、インドネシアで目にすることが出来るし、イラク、アルゼンチン、
ナイジエリアでは電気を普及させ、軍用機で搭載されるGEのジェットエンジンは世界の平和を守
っている。ローカルの課題対応は地元に根付いたものでなくてはできないという事だ。GEは世界
中のどの企業よりも価値ある実績を残している、と自信をもって言える。そして、GEはこれまで
以上に重要となるleadershipを発揮し、将来ある人々を新たに惹きつけていくこととし、単一の企
業として、差別をせず、未来を恐れず、成果主義の集団として活動をする。イノベーションは仕事
や作業者を一層スマートにしてくれる.

低賃金を求めるだけのアウトソーシングは安易に過ぎる。近時目にする大規模企業統合も、イノベーションを絶やし、競争力ある人材への投資を減らし、その結果は米国の競争力向上にはつながっていない。GEは産業界のdigital化への投資が生産性という課題解決への手段と考えている。生産性向上に寄与すると見込む2つの技術がIndustrial Internetと積層造形(3Dプリンテイング)だ。要はdigital化とグローバリゼーションが交わることで、GEはよりスキルが高く、給与水準にも見合った人材を惹きつけ、より競争力の高い企業となる。

(グローバリゼーションはチャンス)我々は今、グローバリゼーションの終焉に立ち合っているの
か? 私はそうは思わない。金融センターから、或いはウエッブサイトからしか世界を見ていない
「グローバル・エリート」が終わるだけだ。そして、いまほとんどのグローバル機関は70年も経
ったままにあり、現代のグローバル・チャレンジに向き合うには近代化が必須となっている。グロ
ーバリゼーションを諦める企業を多く見るが、それはGEにとってチャンスを意味する。
― Globalization is fresh- it changes every day.


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第2章 トランプ米国は地政学リスク 

1.‘危険な国’になってきたトランプ米国

処で、トランプ氏が北朝鮮との間で脅威と挑発の応酬を繰り返し、南米ベネズエラには軍事介入の可能性を示唆さするなど、無責任な言動で煽っている国際危機が、いまやトランプ政権を悩ます国内問題と益々不可分な状況となってきていますが、とりわけ国内で拡大しつある白人至上主義を巡る対立は、国家の分断を助長する様相にあり極めて気がかりと云うものです。

8月12日、バージニア州シャーロットビルで起きた白人至上主義者と反対派との衝突を巡りトランプ大統領が人種差別に寛容な発言を繰り返したことから、トランプ米国は危険な国との様相を呈する処となってきています。そうした発言を繰り返すトランプ氏に、まず経済界は一斉に抗議、批判の声を上げ、同時にトランプ政権への助言機関とされていた戦略・政策評議会と製造業評議会の大手企業経営者メンバーが辞任を表明。つまり多民族で構成する米社会では人種差別は最大のタブーです。米大手企業にはさまざまの人種・国籍の従業員を抱え、顧客も多様です。つまり、その抗議は、米国の強さの源泉は多様性にあることを強烈に訴える処ですし、米産業界の健全性を感じさせる処です。トランプ発言に抗議の声を挙げねば、社内外から人種差別を黙認する企業だと受け止められかねないという事もあるのでしょうが、トランプ発言は一線を越えたという事で、経済界は公然と異を唱え出したと云うものです。
トランプ氏は、こうした経済人の批判に対抗する如くに、二つの諮問委員会を解散してしまいましたが、この瞬間、産業界とトランプ政権との蜜月に幕が降りた(注)とされる処です。

    (注)`Executive exodus ‘ -Encouraged by Donald Trump’s pro-business agenda, corporate America took a pragmatic view of working with the administration. But it has shunned the president after his comments on white nationalists. (Financial Times, Aug. 19/20, 2017)

勿論、経済界のみならず、与党・共和党指導部、更には陸海空と海兵隊の4軍トップまでもが、トランプ氏の人種差別主義者に組する発言に批判の声を上げています。とりわけ軍トップが大統領にグギを刺すが如き発言をするのは異常な事態と云わざるを得ません。これでGEなど自由貿易を指向する企業の経営者がトランプ氏の周囲から居なくなれば更に内向き志向が強まる可能性が痛感され、まさに国民生活はリスクに晒されて行くことになると云うものです。

・バノン首席戦略官解任
こうしたさ中、トランプ氏は最側近とされたステイーブ・バノン首席戦略官を解任したのです。周知の通り、彼はトランプ候補の選挙対策本部長を務めた仁です。そして白人至上主義に傾倒した思想の持ち主で、移民排斥や保護貿易など、トランプ氏当選の原動力になった「米国第一主義」を推進してきた陰の大統領と言われた仁で、これまでのトランプ氏の右翼的言動は全てバノン氏に負うものとされていました。その彼を解任した理由は、上記事件を含め、これまでのトランプ政権に対する批判をかわすためとメデイアは報じていますが、実際は彼を巡る政権内での対立解消の為と云われていますが、とにかく、一連のトランプ発言の後の解任では遅きに失したというものです。ただ、政権内の不協和音、議会との対立は、依然解消見えぬままにあり、もはやトランプ政権の政策実行能力に疑問符が打たれる状況にある処です。因みに、バノン氏はホワイトハウスを去るにあたって「トランプ政権の終わりの始まりだ」(日経8月20日)と、捨て台詞まがいでしたが、問題なのは更迭よりも、その後の政権の方向性が見えないことです。そこでバノン氏去ったあとのトランプ氏の言動に関心の集まる処ですが、結論的には彼はバノン氏が主導してきた政策を、これからは自身の言葉を以って、それこそは彼の本音となるのでしょうが、更に強調していく事になろうかと思料するのです。ではその読みは、です。

トランプ氏のスローガン「偉大なアメリカ」については、時にレーガン大統領のスローガン「アメリカの復権」に擬せて語られることがあります。が、レーガンの場合ベトナム戦争後に蔓延した退却主義を跳ね返し、強靭なアメリカの再生を目指す、その為には、強靭かつ逞しい国際主義(robust and muscular internationalism) が不可欠とする、まさに明確な問題意識があったとされていますが、トランプ氏にはこのような外に向かうベクトルはありません。つまり、レーガンのそれとは対極にあると云うものです。
この点、慶大、中山敏弘教授は近著(「現代の地政学」、2017・8)の中で、「現在のアメリカは、異物を過剰に体内に取り込んでしまいおかしなことになっている。健康をとり戻すためにはアメリカの体内に蝕む‘世界’を吐き出さねばならない。そうすることでアメリカは偉大さを回復する事ができる」とするのがトランプ思考様式と解析していますが、とすれば、これが外の世界を遮断しようとする動機づけとなって行動していくわけでしょうから、バノン氏のいない分、トランプ氏の言動は益々内向きとなり、分断化を刺激していく事になる、と見る所以です。

トランプ氏が政治するそうした米国はいま危険な国になってきた、とはFinancial Times ,chief
commentater, G. Rachman氏(注)の言ですが、それこそは前述した通り先進国では経験することのなかった米国が地政学リスクになってきたと云う事であり、その点では、今後の推移如何でしょうが、緊張感を持った日米関係の見直しが迫られる処です。
   
(注)‘Under Donald Trump, America looks like a dangerous nation.’
by Gideon Rachman , Financial Times, Aug.15, 2017

2.トランプ通商政策が齎す地政学リスクの高まり

8月14日、トランプ氏は中国による米企業の知的財産権の侵害が深刻だとして、米通商代表部(USTR)に対して、制裁措置を含む通商法301条の適用を視野に調査開始を指示したと報じられています。(日経8月15日、夕) その目的は、米企業が中国進出時に技術移転などを求められる事例を調べ、中国の貿易制度が正当かどうか判断するものとされています。トランプ氏は、外国による知財の侵害は、年間で数百万人の雇用喪失と数十億ドルの損失を齎している、としていますが、問題は仮に高関税などの制裁を脅しに使って中国に迫っても効果が期待できないことです。実際に一方的な制裁に踏み切れば、WTOルールに抵触するのは明白で、中国はWTO提訴や報復で応じるでしょうし、何よりも時間のかかる話です。

さて、トランプ政権は具体的に動き出せるのか?メデイアは、ミサイル発射など挑発行動を繰り返す北朝鮮にいら立ちを強めるトランプ政権としては、同国に影響力を持つ中国に、通商面から圧力をかける狙いは明らかとしていますが、7月実施を検討してきた中国鉄鋼輸入制限の発動は見合わせており、今回も発動の可能性はいずれも見通しにくい様相にある処です。ただトランプ政権が通貨を含め通商を材料に北朝鮮問題を解決しようとすれば、貿易や為替など民間経済への地政学リスクは更に重くなることにもなる処です。
その点、トランプ通商政策は、保護主義にとどまらないリスクを孕むことになる処とも云え、その点では、推移を注視していくほかない処で、責めてゲマワット論理、depth & breadthに照らした対応の整備が求められると云う処でしょうか。


おわりに:第3次安倍改造内閣 ― 日本経済と「人づくり革命」

8月3日、第3次安倍改造内閣が発足しました。この内閣改造は周知の通り、前期国会終盤に見せつけられた安倍首相自身をも含む国会内外での自民党議員の無責任な一連の言動に、国民の不満、不信が一挙に噴出、政権支持率は危機水準まで降下、その極みは7月の東京都議選での自民党の歴史的惨敗でしたが、かくして求心力の低下に晒された安倍首相はその支持率回復、政権基盤の立て直しを図らんとするものでした。

直前の7月29日付、The Economistは,安倍首相は、いまdogfightの様相と、今回の内閣改造で、瞬時息を吹き返すことになるだろうが、これで現在のdifficulties が解消するものではない、極めてvulnerable になっている、と評していたのですが、さて・・・。
批判の的にあった安倍晋三氏の「お友達」閣僚は一掃、替えて安倍氏と距離を置いていた議員の入閣を図るなどで、支持率は下げ止まったものの、安倍不支持率が支持率を上回る状況には変わりなく、もはや「安倍一強」の基盤は崩れたというものです。

元々、内閣不信の原因は奈辺にあったか? 国民の多くは一連の問題の根本に、4年半を超えた長期政権の奢りや緩みがあったと感じており、個別の政策への賛否ではなく、政権そのものへの不信感の高まりと云う点で、状況はより深刻だと云うものです。因みに、8月15日付Financial Times 社説でも、次のように指摘しており、内外が見る目は同じと云うものです。
― Mr. Abe’s popularity has dropped sharply this year. To be fair, this mainly reflects his inept handling of a corruption scandal rather than resentment against his economic policies.

要は、事の元凶は安倍晋三氏自身に帰する処、従ってその責任の取り方は、頭をさげ謝罪すれば済むと云ったことではなく、彼自身が身を引くことしかなかったはずです。が、ただただ自身の総理ポスト堅持のための改造であったという点で、国民からの信頼ない内閣の下、日本の政治は暫し進むという不幸を、承知せざるを得ないと云うものです。

(1)経済最優先」の仕事人内閣に望むこと

その彼は、今回の改造内閣を仕事人内閣と云うのですが、ではこれまでの閣僚は仕事をしなかったのか、と云いたくもなる処です。ではその目指す仕事とは何か? 安倍首相は記者会見で 「この改造を機に、経済再生を最優先に、アベノミクスを更に加速させる」と強調しています。安倍政権が発足して4年8か月、経済政策「アベノミクス」を擁して、雇用や企業業績はそれなりの改善を示してきており、8月14日、政府が公表したGDPの四半期ベース成長(速報値)は、11年ぶり6期連増のプラスとなっています。然し、途中、国民の多くが望むことのない方向に政治資源が向けられていった結果、成長力の底上げ、財政健全化への取り組み、は置き去りのままにあり、中長期の持続的な経済成長に繋がる改革、構造改革は道半ばにあるのです。

その点では、初心に返り「経済最優先」でと云っても、それは単にアベノミクスの残り部分のフォロ-と云ったことではない筈です。ましてや支持率低迷に悩む安倍政権が目先の人気回復を狙ってバラマキ政策に向かう事のない事、まず肝に銘ずべきでしょう。そしてこの際は、政策の基本軸を変えるべきと思料するのです。つまり日本経済は2020年のオリンピックまでは財政出動と金融緩和でそれなりの状況は続くとみられますが、問題はオリンピック後の経済です。そこで、日本経済の持続可能性をキーワードとして、10年スパンでの大きな構想と、それに沿った政策作りを目指すべきと思料するのですが、既にこれが現実的な問題となって迫ってきて
いる処です。つまり、Post-Olympic日本経済新開発と銘打って、早急Action Planの議論を始めるべきで、これこそは経済最優先が意味する処と思料するのです。

(2)看板政策「人づくり革命」で思うこと

さて、安倍政権は今回も看板政策を打ち出し、担当大臣を配しています。「人づくり革命」だそうです。そもそも「革命」とは支配者と被支配が逆転すること(政治学者、日大岩井教授)で、いわば、茶ぶ台返しですが、なぜ革命?と違和感を禁じえない処です。が、人的投資を核とした生産性向上、社会人のリカレント教育等々、要は、人材の力を底上げし、以って潜在成長力の引き上げを図る、まさに成長戦略と云う由ですが、これが財政と絡むだけに、これまでの看板政策同様、お題目に終わることにならないか危惧される処です。

処で、人材教育と云えば昨今、世界に通用するグローバル人材の育成が喧伝されています。そこで「人づくり革命」からは多少離れるかもしれませんが、以前、目にしたFinancial Times(2017/3/17)に掲載のエッセイ‘Why I left my liberal London tribe’ (by David Goodhart) と、それによせた英オックスフォード大教授の刈谷剛彦氏のエッセイ(東洋経済、2017/4/15)を交え、筆者の感ずる所を記し、締めとしたいと思います。

Goodhart 氏のエッセイ「リベラルのロンドン部族を離れた理由」はエリートとしてリベラルな思想の下に育った自分の生い立ち、そして左派的価値観を共有してきた仲間(ロンドン部族と云う)からなぜ離別したのかと、BREXITを機会として、話題とする話です。彼は、名門私学イートン校を卒業した後、ヨーク大学で学んだ仁です。そして自分を含め英国で大学教育を終えた人達を「どこでも行ける者たち(Anywhere)」と呼び、大学教育を受ける機会のなかった人達を「どこかに留まる者たち(Somewhere)」と区別するのです。そして、生きる場所の選択肢と重なる学歴の違いが、EU離脱を巡る反対派と賛成派の分断となって表れたというのです。
この議論で興味深いのは、英語で高等教育を終えた人々にとって有利な職業を獲得できるチャンスや国境を越えた移動の範囲が、我々日本人が想像する以上に大きい事だ、と刈谷氏は云うのです。筆者もその大きさは、頷ける処です。そして更に彼は続けるのです。

つまり「分断か統合か。英米でそれが深刻となるのは、国外脱出が可能な、個人の利益を優先できるグローバル人材と、とどまる者との対立が隠れているからだ。日本で推進されるグローバル人材教育にそのような視点はない。皮肉なことに、人材のグローバル化がこうした脱出や社会の分断と結びつくほどには成功していないお陰かもしれない」と刈谷氏は云うのです。極めて皮肉ながら示唆的とも云うべく、改めて、グローバル人材の育成とは?と再考の要、痛感する処です。                                  
以 上
posted by 林川眞善 at 10:16| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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